今年6月にグダンスクで開催される国際ウクライナ復興会議に向けた準備のために、ポーランドのジェシュフで安全保障フォーラムが開催された。ジェシュフではウクライナと西側諸国の協力における安全保障・防衛の側面が議論された。米国からは、カート・ヴォルカー元米国ウクライナ担当特別代表(2017〜2019年)がフォーラムに参加した。
米国の元外交官であるヴォルカー氏は、ウクルインフォルムとのやりとりの中で、ウクライナに関する現在の米国政権の行動、和平交渉の展望、戦況、ロシアのプーチン体制崩壊の可能性について話した。
聞き手:ユーリー・バナヘヴィチ(ジェシュフ〜ワルシャワ)
写真:ニーナ・リャショノク、ウクルインフォルム
米国の対露制裁緩和の決定は誤り
ヴォルカーさん、トランプ政権はロシアに対する石油制裁の緩和を延長しました。一方で欧州連合(EU)は第20次対露制裁を承認しました。ホワイトハウスのこの決定をどう評価しますか? また、これは権威主義諸国との間のグローバルなゲームにおいて西側を弱体化させることにはならないでしょうか?
何よりもまず、あの決定は誤りだと私は考えています。あれが世界の石油価格にほとんど影響を与えないか、あるいは全く影響を与えないからです。あれはむしろプーチン氏により多くのリソースを与え、彼にウクライナに対する戦争を長引かせることを促します。そのため、あれは間違いだと私は考えています。長期的には大きな意味を持ちませんが、短期的には影響が生じます。長期的には石油価格が再び下落し、それがプーチン氏により大きな影響を与えるだろうと考えています。
私の考えでは、ロシア深部の輸出ターミナルに対するウクライナの攻撃は、ロシアの石油輸出能力を破壊することを目的としており、石油価格の下落や出荷量の減少と相まって、米国の決定の影響を事実上相殺するでしょう。
現在のワシントンの決定は、すでに海上にあるロシア産原油の販売を許可するだけで、全体的な輸出を認めるものではありません。ですから、この決定がこの枠組みに限定され、短期間で終わることを期待しています。

ウクライナは引き続き、欧州の資金で米国から購入している、防空システム「パトリオット」用ミサイルを含む米国製武器の供給を必要としています。これらの供給が今後も信頼性が高く安定したものになると期待できますか?
良いニュースは、ウクライナが数年前よりも米国製の兵器や弾薬への依存度を低くしていることです。ウクライナの防衛ニーズの約60〜70%は自国生産で賄われており、欧州がかつて米国が供給していたものの大半を補っています。パトリオット・システムのミサイルに関しては、完全な代替品がないため、ウクライナにとって確かに問題となっている分野です。
現在、米国は中東に展開する自軍やペルシャ湾岸諸国、イスラエルの防衛を優先しています。そのため、ウクライナは必要な量のパトリオット用ミサイルを受け取っていません。これは問題です。なぜなら、それが弾道ミサイルに対して本当に有効な唯一のシステムだからです。それ以外の点では、ウクライナは自力及び欧州の支援で十分にやっていけますが、パトリオット用ミサイルだけは極めて重要です。
ロシアは現在、戦争を終わらせることに真剣ではない
トランプ米大統領は、ウクライナのゼレンシキー大統領やクレムリンのトップであるプーチン氏と「良いやりとり」をしたと述べ、自身の政権がロシア・ウクライナ戦争の解決に取り組んでいると語りました。これらの交渉をどう評価しますか? また、米国が交渉から離脱する懸念はありませんか?
現時点までの和平交渉は、実際にはむしろ虚構であったと言えます。ロシアは戦争を終わらせることに真剣ではありませんでした。ロシアは交渉を注意をそらすための道具として使い、トランプ政権にビジネス取引のアイデアを投げかける一方で、戦争を継続してきました。それはロシアによる「見せ物」なのです。
ウクライナ側はそれをよく理解していますが、平和を望まない側かのように見られるわけにはいきません。そのためウクライナもプロセスに参加し、不向きな提案でも、それを受け取った上で、それをより理知的なものへと変え、全ての会合に出席して、常に交渉への準備があることを示しています。それは、交渉決裂で、ウクライナが非難されないようにするためです。
しかし、交渉が実際に結果を出すという展望を私は目にしていません。変化が起きるのは、プーチン氏が自らの資金と軍事能力が枯渇し、戦争を継続できないと感じた時だけでしょう。その時なら、何かが変わるかもしれません。しかし、それは決して現在の交渉の結果としてではないでしょう。
もしかしたら、完全な和平合意はそもそも成立しないかもしれません。むしろ、実質的な停戦や戦闘の漸次的な収束を目にすることになるでしょう。そしてそれは、外部の仲介なしに、ロシア人とウクライナ人の間で直接的に進むことになるでしょう。
ウクライナは中東諸国に対し、イランの「シャヘド」への対抗を支援しています。ウクライナの知見は米国も関心を抱いています。現在、世界はこの分野でどの程度ウクライナの経験を必要としていますか?
それは非常に重要です。米国や米国の産業界、そして西側諸国の多くは、ウクライナが行っていることが私たちにとって死活的に重要であるかを完全には認識していないと思っています。戦場の性質は変化し、3年前に重要だったハイマース、アタクムス、榴弾砲は、今日では以前ほどの意味を持たなくなっています。
代わりにウクライナは、無人航空機やその対抗手段のような、安価でありながら非常に効果的なシステムを作る方法を見出しました。それが重要です。なぜなら、米国のシステムは世界最高かもしれませんが、極めて高価であるからです。それはつまり、私たちはそれらを安価な、しかし効果的な脅威に対しては、使い続けることができないということです。
例えば、先日のイランによるイスラエル攻撃では、1弾数百万ドルするパトリオット・ミサイルが1000発以上使用されました。これは長期的には持続可能な解決策ではありません。3万ドルの無人機に対して100万ドルのミサイルを使うという状況は、継続不可能です。
ウクライナが行ったこと、安価な対無人機技術と低コストの無人機を作ったことは、事実上、戦争の遂行の原則に革命を起こしました。私たちはこれを学び、そのような解決策を取り入れていかなければなりません。これはパトリオットや他の高価なシステムを完全に放棄すべきだという意味ではありません。それらは依然として必要ですが、しかし、ウクライナが行っていることによって補完しなければ、現在の防衛モデルを維持することはできないでしょう。

ロシアは戦場で前進する能力がない
ウクライナの前線の状況をどう評価していますか? 今後数ヶ月で何が期待できますか?
ロシアは春夏の攻勢の真っ只中にあるとされていますが、戦場で前進する能力がないことが見て取れます。さらには、制圧するのとほぼ同じように領土を失っています。よって、ロシアにとってその攻勢は機能していません。
ロシアは、数百の無人機とミサイルを組み合わせた大規模な夜間航空攻撃を行う能力はあります。彼らは、ウクライナの民間インフラを容易に攻撃し、残念ながら民間人を殺害することはできます。しかし、それも戦略的な結果はもたらしていません。
昨冬を見れば、あの冬は戦争期間中で最も厳しい冬でした。気候条件だけでなく、ウクライナのエネルギー・システムが非常に中央集権的だったことも理由です。ロシアはそのシステムの大部分を破壊しました。しかし現在、復興の過程で、システムはより分散化され、攻撃への耐性が高い形で構築されています。ですから、次の冬の状況は恐らく今年よりも良くなるでしょう。
ですから、ロシアが何かしらの成功を収めているとは私は思っていません。代わりに同国は膨大な資金、多くの兵員、多くの機材を失っています。問題は、彼らが自らのリソースを焼き尽くしていることを認識するまでに、あとどれだけの間それを続けるかという点にのみあります。
だからウクライナにはパトリオット・ミサイルが必要なのですね…。
そうです。もしウクライナにパトリオット用のミサイルがなければ、ロシアのミサイルが防空システムを突き抜けてウクライナの都市に着弾してしまいます。しかし、たとえそうなったとしても、それは戦略的な転換を生み出さないし、その点にこそロシアにとっての問題があるのです。
ウクライナの4年間にわたる対露戦争の経験は、西側諸国、特に東欧諸国がロシアの侵略行為に対抗する上でどのように役立ちますか?
ウクライナは、ロシアによる全面的な国家破滅努力の対象となった唯一の国です。もちろん、私たちは通常、前線や夜間のミサイル攻撃について考えます。しかしながら、サイバー攻撃、電子戦、破壊工作、そして偽情報による社会の弱体化の試みも常に行われています。
ウクライナはこれら全てに毎日直面しており、そのため、こうした脅威への対抗において最新の経験と知見を持っています。ロシアは実は今のところ、NATO諸国に対してこれを全面的に行おうとしたことはありませんが、それを試みる可能性は十分にあります。もしそうなれば、ウクライナの経験は極めて重要になるでしょう。なぜなら、ウクライナ人はそれへの対処方法をすでに学ばざるを得なかったのですから。
そのようなNATO諸国に対する攻撃的行為を、ロシアは近い将来に行う可能性があるでしょうか?
プーチン氏が対ウクライナ戦争にいまだ手一杯である間は、私は、彼がそのようなことをしたいと思うとは思っていません。
プーチン氏を変えられるのはシステム内部の人間だけ
ロシアの最近の世論調査では、プーチン氏への支持がある程度低下していることが示されています。ロシア内部に深刻な影響を及ぼし、クレムリンの対ウクライナ戦争に関する決定に影響を与えるような長期的な危機について、私たちはもう語ることはできるでしょうか?
残念ながら、プーチン氏は非常に強力な権威主義的体制を構築することに成功しています。そのため、たとえロシア国内に不満があったとしても、それが何らかの変化につながるということには、私は確信がありません。彼は単にナラティブを変え続け、人々への抑圧を継続し、メディアをコントロールし続けるでしょう。彼に実際に影響を与えられるのは、ロシアのエリート、軍・治安機関、特殊機関、あるいは国営企業が彼に対して行動を起こし始めた場合です。しかし、そのシナリオが起こりやすいものだとは私は思いません。
数年後はどうでしょうか?
数年後には、その期間に何が起こるかによっては、あるかもしれません。プーチン氏の行動が財政、軍事、政治の各面でロシアを弱体化させているのは明らかです。しかし、今のところロシア内部の人々がこれに対抗できるメカニズムは全く存在しません。将来的に何かが現れるかどうかを見ていく必要があります。