宮尾篤NHKインターナショナル総括
選挙報道における公平性は、各候補者を極力平等に扱うということ。報道の時間の問題
01.07.2019 09:08

2017年、日本によるウクライナの公共放送発展を目的とする支援が開始された。以降、「NHKインターナショナル」の専門家グループがウクライナを訪れたり、ウクライナ公共テレビ・ラジオ放送局の職員を日本に招待したりして、プロジェクトの実現を行なっている。具体的にはどのような支援なのか。選挙期間における公共放送の役割とは何なのか。ウクルインフォルムは、NHKインターナショナルから支援実施のためにキーウ(キエフ)を訪れている宮尾篤総括に話を伺った。


公共放送にとって、緊急報道は選挙報道と並ぶ「車の両輪」

NHKのウクライナの公共放送に対する支援の目的と内容は何でしょうか。

ウクライナでは、2013年から14年にかけてのいわゆるマイダン革命と、それに続くロシアのクリミア併合、東部の緊張という新たな状況を受けて、国内の民主化をどう進めるかが大きな課題となっています。民主化は、ウクライナの将来あり得るEU加盟の政治的条件の一つとなるもので、NHKとその関連組織、つまりNHKグループが、ウクライナの国営放送の公共放送への転換を支援するのも民主化支援の一環と位置付けられています。

今回の「PBC公共放送化プロジェクト」は、JICAからの委託を受けて、NHK関連団体のNHKインターナショナルが実施しています。

私たちの支援は、主に次の3つです。(1)放送に関連した機材が供与されることも踏まえ、機材を維持、管理する能力を高めること、(2)公共放送の主要な使命の一つである災害時などの緊急報道を着実に実施出来る体制を作ること、(3)公共放送に相応しい教育番組を制作する能力を強化すること。

私たちの支援プロジェクトは、2017年に始まり、今年3年次に入りました。本来は今年の夏で終わる予定だったんですけども、機材の調達がちょっと遅れているということもあり、1年延長して、来年の夏まで今のこのプロジェクトは続きます。

 PBCには、日本の他にEUも支援をしていますが、EUの支援と日本の支援の違いは何でしょうか。

一つの考え方としては、僕らから見るとウクライナはヨーロッパの国だということです。さらに、以前はロシアとの関係が強かったですが、現在はEUとの関係を深めています。そういう流れの中で、ウクライナは、EUとの間、例えば、イギリスのBBCやドイツのDW、デンマークや色々な国々との関係が深いので、ヨーロッパのいろいろな情報や考え方、つまり、ジャーナリズムの基本的な考え方は、すでにBBCやDWなどを通じて、交換できているだろうと思っています。そこに、日本が乗り出して行って、アフリカの国々の放送局に対して行っているような、基礎的なことからわれわれがお手伝いとするという必要はもうないんじゃないかと考えています(編集注:NHKインターナショナルは、ウクライナの他、南スーダン、バングラデシュ、コソボの放送局を支援している)。

ですから、日本ができることとして、日本らしく、さらに、日本の公共放送の特色を生かしたもの、総花的なものではなく、非常にスペシフィックで限定的な、「NHKらしい支援」を考えたわけです。(欧州の支援とは)差別化をしていこうと。同じことをやってもPBC側も疲れて、混乱するでしょうから。そこで、日本らしさを考えた時に、教育番組、災害を中心とする緊急報道を、放送のノウハウや知見をお伝えすることで、力をつけてもらいたいなという発想になりました。

 緊急報道は、何故重要なのでしょうか。

緊急報道の対象となる様々な災害は、国民の生命と財産に直接影響を及ぼすものです。このためNHKでは、緊急報道は、民主主義を支える選挙報道と共に、公共放送にとって欠かせない「車の両輪」として最も重視しています。公共放送への転換を進めているPBC(ウクライナ公共テレビ・ラジオ放送局)にとっても同様で、NHKグループによる支援の中心テーマとなっています。

 緊急報道の支援は、どのような内容ですか。

一つは、組織作りを支援しています。緊急報道を行うためには、組織的な裏付けが必要で、地方と中央の全国ネットワークを構築していなければ、結局緊急報道や災害報道をやろうとしても、絵に描いた餅になってしまう。そこで、我々は、PBCに、ヘッドクウォーター、キーウ(キエフ)と地方20いくつの地方支局との連携・関係をしっかりと作ることを話しました。

二つ目は、どういう風に現場の人たちが緊急事態、災害が起きた時に対応していくのかという、行動のパターンを示したハンドブックのようななものを作りました。何かが起きた時に、どういう風に動いて、誰に連絡して、どういう確認をして、それを放送につなげていくのかという、プロセスを示したもので、それを関係者に配布して、実際に日頃のニュース報道に役立ててもらおうと思っています。

あと一つは、災害・緊急報道では、情報がなければ放送できないわけで、その情報はどこにあるかというと、国家非常事態庁とか警察とか消防、地方の市役所などの公的な機関です。そういうところの担当者との間で、日頃から良い関係を作り、情報を入手しやすい情報ネットワークを構築しなければなりません。そういう、いろいろなお話をしています。

 NHKが災害支援を行うのは、日本が自然災害の多い国だからですか。

そうですね。NHKもきちんとリアルタイムで入ってくるシステム、人間関係づくりを長年やってきたので、PBCもそういうことが是非必要だと考えています。待っているだけでは国民に必要な、知らせるべき情報は入ってこない。攻めていかなければいけないと、何度も伝えています。

 日本での災害・緊急報道というと、地震や津波などが想定されると思いますが、ウクライナの支援では、どのような緊急放送ケースが想定されているのでしょうか。

ウクライナでは、災害的なものは大きなものはあまり想定できないですが、大きな化学系工場も多いので、そういう場所での爆発、その他、飛行機や空港がありますから、飛行機墜落などの事故が想定されています。他には、洪水などが西部では多いと聞いています。そういう災害も想定される例かなと思っています。

 教育番組の目的の一つは、「社会の連帯」

 教育番組の制作支援は、具体的に、どのような形で支援が行われているのでしょうか。

教育番組はその対象や性格上、比較的地味なものが多いため、民放では余り取り上げられず、基本的に視聴率にとらわれない公共放送ならではのコンテンツと言えます。NHKには教育番組制作の長い歴史と試行錯誤があり、新番組や独自の演出手法を開発、蓄積してきました。PBCはNHKの様々な教育番組を視聴、NHKのOB専門家との意見交換を通じて新番組の開発に積極的に取り組み、これまでに「Dodolyki(ドドリキ)」というタイトルの人形劇や障害者福祉番組「RAZOM(ラーゾム)」を制作、放送しました。

 ウクライナの視聴者が、それらの番組を「NHKが協力して作ったもの」という視点で見る場合、何に注目すると良いでしょうか。日本の教育番組らしさ、特徴とは何でしょうか。

NHKの教育番組というのは視聴率を狙った番組作りではなく、むしろ小さなお子さん、ハンディキャップを背負った方々といった、社会的な弱者の方々の抱える様々な問題や、そういう方々がこれから社会を生きていくためにプラスになるような内容の番組を作っています。そのため、内容的には地味で、華々しいものにはなりにくいのですが、そういう人たちも一緒に一つの国を作っていこう、社会と接していこう、そういう人たちにも光を当て、声をすくい上げようという考え方、番組づくりが、NHKの教育番組にはあります。広いカテゴリーでいえば、社会福祉とか障害者参画といった、子供に教えるというレベルよりもう少し広い内容だと思います。

社会の連帯が背景にあるのですね。

そうですね。

それは、例えば、ウクライナの持つ多様な地方差や民族の違いも念頭にあるのでしょうか。

そういうことにもつながっていくと思います。日本の場合は、それほど多民族国家とはなかなかいいにくいですが、ウクライナの場合は様々な方がいらっしゃるし、ロシアとの関係をどうするか、西側のヨーロッパとの関係をどうするかということも大切です。そのため、人々が、歴史・文化・言語の違いを乗り越えて、どうやって共同参画をして一つの国や社会を作っていくか、という発想が、教育番組の原点にあるべきじゃないかと思います。そうすると、番組の内容はどうしても地味で硬いものにならざるを得ない。多くの視聴率を取れる保証もないので、なかなか民間やコマーシャルベースでは対応しにくくなります。まさにそういう番組を放送するのが、公共放送だというのが、NHKの歴史的な考え方ですね。

私は、ドドリキを見た時、そのような印象を受けたんですが、ラーゾムにもそのような考えがあるんですか。

まさにそうです。ラーゾムの場合は、最近のウクライナ社会、国際社会の動きも反映しています。ウクライナ東部では、事実上戦闘状態が生まれていて、そこで亡くなる方も負傷者も多く出ていて、非常に大きな後遺症のある方が多く出ています。そういう方々を念頭に置きながら、障害がある方々がどういう風に今を見つめ、どういう風に将来を生きていこうかという考えに注目しています。そういう視点は、今の時代であるから、なおさら重要性があるのではないか。そういう問題意識もあります。

東部の戦闘から帰ってきた人たちを社会にどうやって受け入れていくのか。NHKのOBの専門家は、そういう視点を含めながら、制作に向けたディスカッションをしました。

これまでに二つ教育番組が作られていますが、これからも教育番組が作られるんですか。

色々チャレンジしようと思っています。こういった障害者、子供というテーマの他、スポーツや遊び、国それぞれが持つ歴史的に引き継がれてきたいろいろな遊びを番組化して、例えばそこに子供たちが参加するような、新しい切り口での公共放送らしい教育番組を一つでも多く開発できれば良いと考えています。

PBCへは、どのような機材が供与されるのですか。

供与されるのは、スタジオの副調整室(副調)に関連したカメラ、音声、スイッチャーなどの機材です。副調とは、スタジオで収録される映像や音声を切り替えたり調整したりするところです。PBCにはいくつかのスタジオがありますが、そこで使う副調機材が不十分なため、使えるスタジオが限られています。今回整備する副調機材は1式ですが、各スタジオとの光回線を繋ぎ変えるだけで、そのスタジオの副調機材として活用可能になります。これに伴って番組がHD(ハイビジョン)化し、「放送画質の大幅な改善」に繋がります。また、複数のスタジオの有効活用によって番組の演出効果も数段アップし、これまで以上に「高品質な番組の放送」が期待出来ます。なお、この放送機材の供与は、日本政府の無償供与として実現されるものです。

公共放送トップの解任問題について何かコメントはありますか。

アラサニア総裁はこれまで2回日本を訪問、NHKの本部や地方局を訪ねて会長や職員らと懇談し、NHKの歴史と現状、直面する課題に詳しいです。そして国営放送と公共放送の違いを深く理解し、公共放送は公権力から一定の距離を置きながら、国民目線で報道に当たるべきだという立場を堅持しています。彼は、公共放送への転換プロセスの中で、思い切った組織改編や意識改革を断行したと思っています。彼の解任については今、ウクライナの司法の手に委ねられているのでコメントは避けますが、これまで一緒に仕事を続けてきた我々としては、公共放送のトップとしての手腕に大いに期待していただけに大変残念です。

選挙報道を行う際に重要なのは、候補者・政党の支持率ではなく、公平な全体像

ウクライナの選挙は、日本でも関心をもって報じられていましたか。

日本では、NHKも民放も、ウクライナは大統領選挙を通じてどこに向かうのか、具体的には、これまでのようにヨーロッパを志向するのか、緊張関係にあるロシアとどう向き合うのか、といった点を中心に報道していました。特に新大統領が政治家や官僚出身者ではなく、コメディアン出身という点も関心を集めましたが、政治家としての信念や政策が余り明確でなく、国の舵取りをする政治手腕は不透明という指摘や解説が目立ちました。

 日本では選挙関連の出来事はどのように報じられていますか。

放送や新聞での選挙報道について国民の関心は高く、誤報や偏った報道には常に厳しい視線が向けられています。NHKの選挙報道は、言論報道機関の立場から「正確な取材と公正な判断」によって「自主的」に行うことが原則です。具体的に言えば、選挙関連のニュースや番組の原稿・音声・映像については、各候補者と各政党を極力公平に扱うことを基本精神にしています。

 先ほど、公共放送にとって災害報道と選挙報道は「車の両輪」とおっしゃいましたね。NHKは、選挙報道も非常に重視しており、NHKインターナショナルの方々は、ウクライナの公共放送の選挙報道のサポートもしていると聞きました。そして、ウクライナでは、近く最高会議選挙の投票が予定されており、ちょうど選挙報道も注目されているところです。公共放送の選挙報道とはどうあるべきなのでしょうか。民放とはどういう点で異なるのでしょうか。

実は、今回のNHKの支援プロジェクトに、選挙報道支援は当初入っていませんでした。でも、公共放送にとって緊急報道と選挙報道はどちらも大切です。特にウクライナの政治状況を見ると、大統領選挙に続いて、議会選挙も行われるというスケジュールが決まっており、その中で、NHKのPBC支援プロジェクトが行われる。そこで、私は、緊急報道支援だけして、選挙報道にわれわれがノータッチで良いのだろうか、という問題提起をしました。それを受けて、選挙報道支援もやりましょうということになったんです。

基本的には、公共放送であろうと民放であろうと、選挙報道に関する考え方というのは、変わらないと思います。民放であろうと、ある局がA候補だけを推して、他の候補を無視するということはできません。その点で、選挙における報道の「正確さ」、「迅速性」、「公正性」という3つは、民放であろうと公共放送であろうと常に気を使って報道するものだと思います。

しかし、公共放送であるということはですね、その3つのうちの特に「公平性」、政治的なバランス、偏らないということについて、民放以上にそのことにこだわる、より一層配慮する点が、他と異なるのではないかなと思っています。その点を、見ている方々から、政治的バランスを変えているんじゃないか、偏っているんじゃないかと言われた瞬間に、公共放送の持つ輝きは失われていき、信頼性が低下していくのだと思います。「公平性」こそが、NHKが長い間ずっとこだわってきた、公共放送の非常に重要な核心部分だと思います。

具体的に、「選挙報道における公平性」はどのように確保されるのでしょうか。

考え方としては非常にシンプルで、選挙のことで言えば、各候補者を極力平等に扱うということです。ある選挙区を取り上げた時、候補者が5人いたとしたら、5人をきっちり取り上げる。ある候補者だけインタビューを10分やって、ある候補者を1分しかやらない、というような、アンバランスな取り上げ方はしない。インタビューの長さも大体同じに揃える。出てくる映像のタイミング、長さもそんなに変わらないように揃える。そういう配慮です。各候補の映る映像、コメント、音声、インタビューの長さを極力同じぐらい長さにします。時間の問題です。そこに気を使うというやり方をNHKはしています。

ウクライナで言いますと。主要政党の他にも多くの政党があります。それらを全て平等に扱うのでしょうか。

その「泡沫」政党を「泡沫」と言えるかどうかの判断が難しいんですね。NHKも、泡沫政党の存在は認識していて、その定義もNHK内部ではきっちりしています。泡沫候補については、扱い方は必ずしも平等でなくてもよろしい。それは現場の責任者の判断に任せる、そういう柔軟な運用もしています。だから、必ず全部全ての候補を平等に扱えということではない。だけれど、その「泡沫」の判断は、非常に慎重にあつかわなければいけない。恣意的な運用は厳禁だと。そういう考え方です。

例えば、世論調査で上から何番までは平等に放送する、ということですか。

そういうやり方はNHKはしません。世論調査自体が本当に信用できるかどうかという問題がありますし、世論調査で選別するというやり方はとっていません。その泡沫かどうかの判断は、現場の取材とか、様々な情報を総合した上で、本気で選挙を戦おうとしている人物ではない、売名行為であるとか、そういう非常に限られた条件が満たされた場合にのみ、泡沫候補として、放送の扱い方を平等から若干外していくという手段をとります。

すると、かたや世論調査での支持が40%あって、かたや1%未満であっても、担当の方が後者を泡沫候補ではないとみなし、公平に扱うこともありうると。

ありえます。例えば、日本共産党という政党があって、これはちゃんとした政党で、国会議席を持っている。その共産党が全く知られていない人物をすごい地方の一選挙区で立候補させたとします。これは勝つ見込みはないと皆がわかっている。だけども、それは共産党の全国の中で共産党の知名度を上げていくという共産党の戦略で、党の考え方の一環として行なっている行為でありますから、それを泡沫とは扱えないというのが、東京の判断となります。例えばです。そういうことで、1%があるかないか、ということが泡沫の判断ではない。全体状況を見なければいけない。

すると、最高会議選挙において、ウクライナのPBCが公平な選挙ができるかどうかが重要ですね。NHKインターナショナルの宮尾さんたちは、PBCに対して、どのような形で選挙報道における公平性確保の支援をされるんでしょうか。

今回の選挙は、PBCにとって勝負どころだと思います。今度、PBCの本部と全国の支局から技術担当を集めてワークショップをします。私がNHKの選挙報道というものについてブリーフィング、プレゼンテーションをします。その時に、NHKについてどういうようなニュースをどういう考え方で出すのか、というのを具体例を含めて説明しようかなと思っています。そのまま、導入しろとは言いませんけど、公共放送としての選挙報道というものの基本を、NHKはこう考えているという、ことをお伝えしたいなと思っています。

日本で議会選挙の場合、選挙討論番組は盛んにされているんでしょうか。

各小選挙区で討論番組、というのはなかなか仕掛けないと思います。これはすごく難しいので。ある候補だけが目立つと、結局、NHKがその候補を支援した感じになるので、非常にリスクが高いんです。

その代わり、衆議院選挙の場合、比例代表があり、政党の争いですから、各政党の政策担当者、幹事長であっても党首であってもいいですが、各党代表者を一堂に集めて、選挙全般について議論をするという討論会はやります。ただそれも、政党によっては、自民党とか、野党第一党だけが喋る時間が多くて、我々は話す時間があまりなかったというクレームが必ずつきますから、司会者がそこは非常にうまくコントロールして、ちゃんと公平にどの政党、出演した政党がちゃんと話ができるように、コントロールする。そういうところは、非常に気を使いますね。

公平な司会者が必要ですね。

なかなか難しいんです。ある時には、与党の人の話を止めてですね、遮って、他のところに振らなければいけない。そのようなことは、相当全体の流れを見つつ、かつ、公平性に配慮しながら、きっちりとその場を仕切れなければならない。そういうものは、かなりの経験と判断力、それから自信が必要なので、誰でもできるわけではないです。そういう場面では、NHKもかなりの政治のベテランを出します。

ウクライナ大統領選挙前のPBCでの討論会を見ていましたが、招待されても出演しない候補が多く、視聴者が見たかった討論が実現しなかったことがたくさんありました。NHKの討論会では、候補者の出席は義務で必ず候補者が出演することになっているんですか。

いえ、候補者の自由ですよ。

日本の選挙討論番組で、候補者が来ないということはありますか。

来ないということはまず考えられないですね。むしろ、そのような機会があれば積極的に出たがるというのが一般的です。今回のウクライナの場合は、色々あったんでしょう。出た方が不利だとか、イメージが壊れるとか、討論に持ち込まれたら自分の方が見劣りするとか、いろいろな判断があったんだと思います。それは、僕は残念でしたね。公共放送として、そういう場を提供して、きっちり時間をとって、ゴールデンタイムに国民が一番知りたい組み合わせで話をしてもらうというのが、公共放送の大きな役割の一つなので。今回できればいいなと思っていたんですが、できなかったのは非常に残念でした。

7月の議会選挙に向けて、各党の代表の討論会というものもNHKインターナショナルがサポートされるのでしょうか。PBCには、何を期待しますか。

今回、僕は、「討論会をやるのは非常にいいことだけれど、覚悟がいるよ。ちゃんと司会者が平等にそれぞれの政党を扱えるかどうか、逆に問われる。公共放送として、それは覚悟しなければいけない。それは公共放送のチャンスでもある」と言おうと思っています。

選挙でPBCに期待することですが、最高会議は憲法上、首相や閣僚の任命権など大きな権限が与えられているので、新大統領の下で最高会議がどのような政党や議員によって構成されるか、ウクライナ政治の方向を見極める上で大いに注目されます。そのため公共放送には、その選挙報道が有権者投票の判断材料になり、その声が出来るだけ議会の議席に反映されるよう、政治的な中立性に配慮し、各政党や各候補者を極力公平に扱う報道をすることに期待したいです。 

PBCの将来には、何を期待しますか。

NHKは公共放送として70年の歴史がありますが、国民は今でも、災害や選挙の時はまずNHKにチャンネルに合わせると言われています。年間収入の実に97%が視聴者からの受信料で賄われていることを見ても、国民の高い信頼を維持し続けていると言えます。NHKの受信料制度をそのままウクライナに導入することは難しいですが、国民の目線で、公共放送が目指すべき「正確・公正・迅速」な報道を日々続けることで、国民の信頼を取り戻し、社会に無くてはならない「情報インフラ」として定着していって欲しいですね。

平野高志(写真含む)、キーウ 

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