過去数日間、世界の政治コミュニティ、マスメディア、専門家の注目はハーグに集まっていた。NATOの定例首脳会議が終了したのだ。この首脳会議については、始まる前から多くのことが語られていたが、終了したところで、今後おそらくさらに多くのことが語られていくだろう。様々な期待が見られた中、いくつかの要素に注目が集まった。第一に、ここ数十年で最も短いプログラムが発表されたこと。第二に、最も短い結論文書が採択されたこと。第三に、北大西洋条約第5条に関する立場が公式に確認されたことだ。そしてさらに、もしかしたら何よりも重要だったかもしれないのが、この首脳会議がドナルド・トランプ氏の2期目の米国大統領就任後初の首脳会議であり、その意味の下で行われたものだったという点だ。
米国は今後も欧州大西洋安全保障空間の、NATOのリーダーとしての役割を維持していくのだろうか? トランプ氏は「支払わない者は守らない」と示唆したが、その言葉には何らかの根拠があるのかだろうか? このように、多くの重要な議題があった。
首脳会議は終了した。そして、それら問題のいくつかには回答が得られた。しかし、それら回答は熟考、解釈が必要であり、それらの決定とその条件下で、今後はどのように取り組んでいくべきかについての理解も必要だ。それは、組織としてのNATOにとってだけでなく、NATOの特別なパートナーであるウクライナにとってもである。
今回、私たちは、ウクライナにおける国際政治、米国政治、NATO問題の権威ある専門家として知られるアリョーナ・ヘトマンチューク氏とこれについて議論する。なお、今日、私は、別の役職の彼女と話す機会がある。というのも、ヘトマンチューク氏がウクライナのNATO常任代表に任命されたからだ。
聞き手:イーホル・ドルホウ
写真:ウクルインフォルム
聞き手:こんにちは! 首脳会議についてのあなたの第一印象はいかがですか?
ヘトマンチューク:ご招待ありがとうございます、大使。特に、ウクライナの欧州大西洋統合にとって非常に困難な時期に駐NATOウクライナ常駐代表としての大使のご経験を持つ大使とこの対話ができることを大変嬉しく思います(編集注:聞き手を務めるウクルインフォルムのイーホル・ドルホウ氏は、元駐NATOウクライナ常駐代表(大使)を務めていた人物(2010〜2015))。ブリュッセルでの職務に向けた準備期間に、私に助言を下っていることについても感謝しています。助言は的確で役に立っています。なぜなら、私たちのNATOとの連携は、今も引き続き非常に複雑な文脈の中で生じているからです。
確かに、ウクライナや他のいくつかの加盟国が首脳会議に関して抱いていた期待は、控えめすぎるものでした。首脳会議の準備期間の最初の数週間、あるいはもしかしたら数か月の間、ウクライナが首脳会議に全くプレゼンスを持たないのではないかという懸念すらありました。つまり、パートナー国抜きで、同盟国のためだけの首脳会議になるのではないかという懸念があったのです。結局ウクライナ大統領が招待されることになってからも、結論文書のコミュニケで私たち(ウクライナ)のことが全く言及されないのではないかという話が多かったです。その結論文書がかつてないほど短くなることが理解されていたためです。しかし、NATO内の私たちの最も近しいパートナー国と私たちの外交チームは、ウクライナに関する表現がその文書に反映されるよう、さらには私たちにとってそれが有利な内容となるように全力を尽くしていました。
首脳会議の肯定的な結果が突然、あるいは、偶然に現れたという印象を誰かが抱いているとすれば、それは全く違います。私たちが何も期待していなかったのに、突然コミュニケで言及され、ウクライナ大統領の参加する多くのフォーマットが突然出現し、外相級でのウクライナ・NATO理事会が突然開催された、というわけではありません。
実際には、裏では非常に静かに、しかし大変骨の折れる作業が行われていました。私たちは静かに外交活動を行い、その文言に取り組んでいました。準備の舞台裏を少し明かすなら、個人的には、コミュニケ(案)の見直し過程で私たちの文言がどこかで抜け落ちたり、私たちにとって不利な変更がなされたりするのではないかと非常に心配した瞬間が何度かあったことは告白せざるを得ません。その文言は、スペインが異議を唱え、数回「沈黙の手続き(Silence procedure)」を破り、同盟国を何度も立ち戻らせた「5%項目」に組み込まれていたからです。
だから、私はこの首脳会議を「静かな外交の成功」だと呼びたいです。同時に、今回の首脳会議はまた、ウクライナ自身、ウクライナ社会における、重要な国際行事に関する将来の結果に対しての、期待の良質な管理がどれほど重要かを示したとも、私は見ています。
聞き手:首脳会議の舞台裏について少しお話いただきありがとうございます。それは常に夢中にさせ、かつ非常に複雑で神経を使うプロセスですね。確かに、全体を見れば、ウクライナにとってその結果は肯定的なもの、または肯定的以上のものでしょう。もしトランプ大統領の、とりわけ経済的な考え方で捉えるなら、(編集注:結論文書において)ウクライナのことが正に資金に関する部分で登場することは、トランプ氏にとって、橋やトンネルよりも、ウクライナをNATOに近づける他の手段よりも重要だと言えるでしょう。事実上、私たちは今や、財政的条件の観点では、とにかくNATO加盟国の防衛費の対象となっているわけです。それが様々な観点から非常に重要です。
今日、欧州理事会が開催されており、そこでもウクライナの防衛産業、防衛、そしてウクライナ支援について話し合われるでしょう。
NATOと欧州連合(EU)間の役割分担についてあなたの見解を聞いてみたいです。トランプ大統領が前回の任期から追求してきたこと、すなわち欧州防衛の財政面の自立についての議論が実現しつつあります。そして、その背景では、EUではすでに関連プロセスが動き出しています。そのため、調整と機能の分担が必要となります。ヘトマンチュークさんはその点につき、今後の展望をどのように見ていますか?
NATOは新たな現実への適応が必要な段階にある
ヘトマンチューク:その点では、NATO首脳会議の結果に関する私の懸念をいくつかお話します。肯定的なニュースは、確かに、米国が最終宣言と総括コミュニケの両方において、北大西洋条約第5条に従った義務へのコミットメントを改めて確認したことです。同時に、そのようなコミットメントや、トランプ氏の首脳会議の際の概ね肯定的なトーンによって、私たちの欧州のパートナーが再びいくらか「安堵」してしまうのではないかと、私は懸念しています。
いくつかの欧州のNATO加盟国はこう言うかもしれません。「ほら見ろ、私たちは警告しただろう。あれは大きな誤解だった、大西洋間の恐ろしい夢だったのだと」と。今では、あたかも全てがあるべき姿に戻ったかのようになっています。すなわち、米国は引き続きNATOに積極的に関与し、今後も私たちの安全保障に配慮し、全てが再び素晴らしい状態にある、かのように。しかしながら、実際は、NATOは大西洋間の新しい現実に適応しなければならない段階に入っています。
その点で、ハーグ首脳会議の真に肯定的なニュースがあるとするならば、それは変化、適応が、EU諸国の首都で恐れられていたほどに迅速には起こらないということです。彼らが恐れていたのは、欧州諸国には安全保障の移行期間が必要であることがわかっていたからです。
したがって、私は、その点に肯定的な点があるとは思っていますが、しかし、それが私たちの欧州のパートナーたちを安堵させるべきでもありません。ワシントンからのシグナルがそれを裏付けています。例えば、米国防総省は海外における米軍駐留の見直しを続けています。暫定評価では、欧州から8万4千人の米軍が撤退する、あるいは再配置される可能性があります。さらに、米国では、NATOが実質的に第一に欧州の安全保障を支えるするための「欧州の防衛同盟」に変わるべきだという、いわゆる「休眠状態のNATO」(dormant NATO)という考えが依然として人気があります。もちろん、カナダも存在しますし、大西洋間の繋がりは依然として残っているのですが、それでも何よりも、欧州の安全保障のための欧州同盟という話になっているのです。

ヘトマンチューク:このビジョンは消えていません。ハーグ首脳会議はそれを変えておらず、そのままです。いずれにせよ、欧州諸国は、米国抜きで、あるいは米国の限定的な関与のもとで、自分たちの安全保障にもっと配慮していく準備を整える必要があります。
私がこのことを話す時、何らかの新しい欧州機構の設立を意味しているわけではありません。全てのアイデアは検討され、真剣に議論されるべきですが、とはいえ、何よりも私の念頭にあるのは、NATOにおける「欧州要素の強化」です。その際、私たちは、EUとNATO間のより活発な相互作用に関して宣言する局面から、「EU・NATO・ウクライナ」三角関係における非常に具体的な実現の局面へと、間違いなく移行すべきです。
なお、私はその方向を自身の優先課題の1つと見ており、これに取り組んでいきます。私は、私たちがEUの加盟候補国となった今、EUはウクライナの安全保障に対して、倫理的だけでなく、政治的な共同責任を負っていると思っています。そして、ここで私は、ウクライナ抜きに、私たちの貢献抜きに、実際の戦闘で鍛えられた戦闘能力のある私たちの軍隊抜きに、私たちの防衛技術抜きに、私たちの防衛産業が品質を損なうことなく活動するその速度なしに、欧州側のNATOは決して完全なものにはならないし、真に成功し、真に効果的になることもないと、心から確信しています。そのため、実際、今はとても重要な段階で、同時に、強調しますが、NATOだけでなく、欧州の安全保障における非常に多くのプロセスが全体として徐々に再構築される可能性のある、刺激的な段階なのです。そして、ウクライナが、宣言的なだけではなく、現実的な安全保障の提供者として、しかもNATOの加盟国ではないにもかかわらず、欧州大西洋の安全保障にこれほどまでに重要な貢献をしている国として、この段階に到達したことを非常に嬉しく思っています。
そしてそのことが複数の首都で認識され始めているのです。その宣言に、ウクライナの安全保障が欧州大西洋の安全保障への貢献だ、という非常に興味深い項目があるのは偶然ではありません。つまり、事実上、ウクライナと欧州大西洋という2つの安全保障の不可分性が確認されたのです。これは、今日、NATO加盟国とEUで形成され始めている新しい安全保障認識です。
聞き手:私は、欧州ではそのことが理解されていると思っています。あなたは、カナダについて言及しましたが、カナダ自身そのことを理解し、欧州への歩みを進めています。つい先日、EUはカナダとの間で新たな文書に署名しましたが、そこには安全保障と防衛産業について言及されています。つまり、カナダはウクライナと共に欧州の軍事産業複合体の一部になりつつあるわけです。この段階でのウクライナの役割は、NATOの特別なパートナーというだけのものよりはるかに大きいと思います。ヘトマンチュークさんは、ウクライナが長い間、安全保障の消費者ではなかったと述べました。実際、2014年、クリミアと私たちの東部の州の一部が占領されて以来、ウクライナはNATOの教義的機能、すなわち広大な境界線上でロシアを抑止するという機能を履行し始めました。現在、戦線は千キロメートル以上に及んでいます。今、ウクライナはロシアを抑止するだけでなく、侵略国の軍事力を日々破壊しています。
欧州諸国が気を抜いてしまう危険があることは同意します。トランプ大統領がやってきて、第5条が不可侵であることを確認しました。全部大丈夫だと。しかし同時に、私たちの今の課題は、「有志連合」を熱心に刺激し続けることです。「有志連合」は、思うに、その欧州の安全保障の原型となるべきです。今、私たちは、この「連合」を非常に短期の展望で得なければなりません。喫緊の課題は侵略者を止めることです。そしてその後には、未来をどう築くか、欧州の安全保障をどう創造するかを考えることです。そして、その安全保障のところで、強力な軍隊を持つ強力なウクライナが重要となります。私は、そのことが重要だと思います。
そして、欧州の再軍備計画や欧州防衛産業の再装備計画だけでなく、ウクライナとの具体的な行動の進展が見られます。デンマークはここウクライナで、ウクライナのための発注を行いました。オランダは共同生産、英国も共同生産です。公の場で語られている具体的な進展がありますし、それらは全くもって正当であり、ゼレンシキー大統領はそれについて誇らしげに語っています。そしておそらく、公になっていない事例はもっとたくさんあるでしょうし、それはとても良いことです。
今から話す話題は、今のところ人気のある話題ではないですが、ヘトマンチュークさんと議論したいです。すなわち、今、新たな軍拡競争が始まっており、新たな安全保障状況が形成されつつあります。新たな「冷戦」が始まっているわけです。これには、産業を発展させるだけでなく、他の手段でも備えなければなりません。なぜなら、今回の冷戦は、第二次世界大戦後の「通常冷戦」とは異なり、「ハイブリッド冷戦」だからです。ヘトマンチュークさんはこれをどう考えていますか?
ヘトマンチューク:私の計画は、基本的に、私たちがNATOとすでに取り組み始めたことを継続し、最大限発展させることです。今日、私たちには持続可能性と一貫性がとても必要です。NATOのレベルでできないことは、「有志連合」のレベルで試みていきます。私は、「有志連合」を、いずれは「決意連合」に変えたいと願っています。それは確かに、NATOやEUのコンセンサスのせいで制限されるのではなく、より迅速かつより大きな覚悟を持って行動するいくつかのNATO加盟国(それは主に欧州の国々ですが、いずれは米国、そして、例えば一部のインド太平洋の国も含まれる可能性のある)の集団となるでしょう。過去2週間で、ウクライナ大統領がこの国の集まりの中の、実質的に「中核」となる国と2度会談しました。カナダでのG7首脳会議と、その後のNATO首脳会議です。つまり、私たちはすでにとても集中的な対話が行われているのを見ています。もちろん、対話は具体的な結果に裏付けられねばなりません。これは、今夜と明朝(編集注:「短期的未来」の比喩)どのように自衛するか、私たちの防衛をどのように効果的に維持するかという話であり、私たちの軍隊への長期的な支援に関する話です。私は、現在、これらの議論が主に非公開で行われており、私たちのパートナー国から、大々的な発表が行われていないことに好感を抱いています。とはいえ、私たちの最優先のニーズは明確で誰もが理解できるものです。例えば、ハーグでのNATO首脳会議では、私たちに追加の防空手段を提供するという議題が何回も協議されました。それは実際、大統領またはウクライナ代表団の他のメンバーが参加した全ての会合、全ての公開および非公開イベントで防空について話されていました。
実際のところ、もしかしたら私たちウクライナ人自身も、私たちが防衛生産の文脈で自分たちが何をしているのか、何ができるのか、そして私たちがどれほど賞賛され始めているのかをまだ認識していないのかもしれません。1つだけ例を挙げましょう。最近のベルリン訪問の際に、メルツ独首相の政府の決定プロセスに何らかの形で影響を及ぼす政治家や外交官と会談したのですが、そのほぼ全ての会談で、ドイツ側の人々が「あなたたちがこれほど短期間で、前線でのニーズの40%以上をカバーできるほどの防衛生産レベルに到達したことに私たちは感銘を受けている」と言う話でやりとりが始まりました。
私たちのパートナーたちは確かにこのことに感銘を受けていますが、しかし、彼らは、自分たちが防衛生産に資金を提供することが、私たちの安全保障に投資しているというだけではないことも認識し始めています。ところで、あなたがお気づきになったように、首脳会議の宣言では、ウクライナの防衛全般だけでなく、ウクライナの防衛産業への支援についても言及があり、それは別途明記されています。彼らは、それが相互的な投資であること、そして私たちもまた欧州の安全保障に投資し始めており、自分たちの安全保障だけでなく、彼らの安全保障を強化する上でも役立てることを理解しているのです。
そう、私たちは今支援が必要です。特に無人機生産において、私たちには、能力に見合うだけの注文を行うための資金が不足しています。ウクライナ大統領はそのことを非常に明確に述べています。ところで、大統領がNATO首脳会議での最初の活動の1つが、首脳会議と並行して開催された防衛産業フォーラムでのスピーチだったことは、非常に象徴的です。このフォーラムには、NATOの全ての加盟国と一部のパートナー国の主要な防衛製品生産企業が参加していました。

聞き手:ヘトマンチュークさんは2つのことに注目されました。1つは意思決定と行動の速さです。これは欧州連合にこそ関係することですが、これら2つの機関を切り離すことは不可能です。そして2つ目は規模の理解です。なぜなら、彼らにとって3.5%や2%、あるいは5%というのは、残念ながらほとんど意味がないと私は思うからです。しかし、彼らに、NATOの最大の野望は30日間で3万人の兵力を展開することだと話す時、実際にそれはそうすべきなのですが、ただし失礼ながら、ウクライナが撃退している現代の侵略の状況にあっては、それでは何にもなりません。だからこそ、欧州に配置されている数万人の米軍は重要ですが、彼らが、「潮目を変える」わけではないことを理解せねばなりません。規模を認識しないといけないのです。
確かに、ウクライナが自力で製造できる兵器の「40%」という数字は非常に人気があります。しかし、これら全ては、最前線の塹壕にいる私たちの若者たち、私たちの軍隊のおかげでウクライナで生産できるのであって、彼らが防衛産業の稼働と欧州諸国の議論を可能にしているのです。
しかし、議論の時は過ぎ去り、「永遠の平和」への期待は実現しませんでした。「永遠の平和」は生じないでしょう。準備をしなければなりません。そして、防衛費の新たな水準についてのシグナルは、単にシグナルというだけでなく、全ての人にとっての警鐘でなければなりません。「ウクライナで何がどのように起きているか見よ、私たちが自分以外のものも守るために、どれほどの人的、物的、精神的損失を被っているのかを見よ」という警鐘です。欧州は、ようやくこれを理解しました。
したがって、首脳会議や今後の計画などどんなことを語ろうとも、現在の主要な登場人物は、ウクライナの兵士であり、ウクライナ軍なのです。だから、私は、ヘトマンチュークさんの今後の活動とNATOとの協力で、軍の部隊のための訓練プログラムが拡大される機会も見出されることを願っています。NATOは訓練を実行してきましたし、私は、今後もそれが継続されることを期待しています。ポーランドに設立された新しいセンターは、まさにそのためのものです。
ヘトマンチューク:ええ、私は完全に同意します。私たちは、「今夜と明日の朝」攻撃を耐え抜き、防衛を継続するために必要なことについて話していますが、しかし同時に、私たちは、100%の停戦が生じなかった場合、少なくとも低烈度紛争の局面に完全に移行した場合に、ウクライナ軍をどのように維持するか、その全体的なデザインについても、並行して取り組まなければならないのです。私たちはこれら全てのことを、もう今から考えなければなりません。そしてもちろん、NATO加盟国と私たち国の領土両方での共同軍事演習、訓練ミッションについてもです。しかも、ウクライナ軍のためだけでなく、ウクライナ軍からの訓練に関心のあるNATO軍のための訓練ミッションもです。
割合については、1つだけ非常に重要な点についてコメントしたいです。大使も少し言及されたことです。2%や5%、あるいはどのような割合であっても、各NATO加盟国が潜在的なロシアの侵略を撃退する能力がどれほど高まっているかを示す最も正確な尺度ではないということです。重要なのは、これらの割合が具体的に何に費やされるかです。だから、新しい防衛目標が3.5%と1.5%に分けられたことに好感を持っています。3.5%は実際の防衛能力強化(軍隊、兵器)に、1.5%は防衛と安全保障に関連する支出(インフラ、サイバーセキュリティなど)に充てられます。以前私たちが観察していたのはどんなものだったでしょうか? 当時、一部の国は、実際には防衛能力を強化しないものを2%に含めていたのです。
そのため、ハーグ首脳会議は、単に割合に言及するだけでは不十分であり、それが加盟国の防衛能力の適切な尺度ではないという認識の文脈においても肯定的な結果をもたらしました。そして、3.5%と1.5%という内訳の出現は、防衛支出を5%に大幅に引き上げたという事実自体と同じぐらい重要な一歩なのです。
最後に、私はまた、ウクライナがロシアとの和平を模索するために将来の(NATOへの)加盟を断念しなければならないかもしれない、というあらゆる発言や提案がある中で、NATO加盟国の指導者たちが、ウクライナの将来の加盟に関するNATOのこれまでの立場へのコミットメントに疑問を呈するような行動を一切行わなかったことを改めて強調したいと思います。確かに、(昨年の)ワシントン首脳会議で述べられたような、ウクライナのNATOへの道は不可逆的である、という再確認は最終宣言には見られませんでしたが、しかし、後退、逆行も全く見られなかったのです。
ウクライナにとって中立は災厄
これにより、作業を継続し、強化することが可能となります。これは、間違いなく極めて重要なことです。ウクライナにとって「中立」は災厄です。そのことは非常に明確に認識する必要があります。ロシアがウクライナに対して押し付けようとしている「中立」は、単にウクライナのNATO加盟を議題から除外することではありません。それははるかに深く、広範なことであり、私たちを完全に無防備で、完全に脆弱にすることを意味するのです。効果的な数を持つ軍隊なしに、西側からの軍事援助の供給なしに、共同演習や訓練なしに、私たちの防衛産業を発展させる機会なしにする、ということです。
聞き手:最後に短い質問です。ハーグ首脳会議は誰の成功だったのでしょうか? トランプ? NATO? 欧州? あるいは安全保障そのものでしょうか? 私たちは何を得ているのでしょうか?
ヘトマンチューク:私は、成功のくくりは様々ですが、トランプ、欧州、そしてウクライナにとっての成功だと思います。もしかしたら、防衛支出を公言目標の5%までどのように増やすかがまだわからない一部の欧州諸国にとっては、この成功はそれほど可視化されておらず、どちらかといえば先送りの成功かもしれません。
私たちにとっては、この首脳会議は、NATOへの政治的な扉がまだ閉ざされているならば、財政面の扉からNATOに入り始める機会を与えてくれたものです。そして、今後も多くの扉が開かれるだろうと思います。目に見えるものも、目に見えないものもあるでしょうが、それら扉は開かれていくでしょう。私たちはそれらを活用し、その1つ1つの扉から入っていかねばなりません。