米光雅宣OSCEウクライナ特別監視団(SMM)報告官
SMMしか監視できない情報が、ウクライナ全土にたくさんある。SMMがいなければその事実は、埋もれてしまうかもしれない
29.03.2019 13:44

欧州安全保障協力機構(OSCE)は、日本ではあまりなじみのない機関かもしれない。しかし、2014年のロシアによる対ウクライナ占領・侵略開始以降、OSCEがウクライナに派遣した「ウクライナ特別監視団/Special Monitoring Mission to Ukraine(SMM)」は、情勢の第三者による中立的な監視と報告を行うという、大きな役割を担っている。1000人を越えるSMM要員が、ウクライナ東部の紛争地域を中心に、停戦違反や重火器撤収違反、ウクライナ・ロシア間の国境の様子などを監視しており、ほぼ毎日報告書が発表されている。この報告は、ジャーナリストや、各加盟国、国連などに共有され、しばしばプロパガンダや偽情報により不透明になりがちな戦闘地域の様子に客観性をもたらすことになっている。

SMMの報告書には、民間人の死傷者、数年間止むことのない停戦違反、深夜にロシアが未舗装道路を使ってウクライナ領に車列を侵入させる様子、ウクライナ軍が一度も所有したことのないロシア製の最新の兵器の存在、ウクライナ領で任務を遂行していたと述べるロシア軍人など、重要な出来事が報告されている。SMMが日々報告する確立された事実があるからこそ、国際社会は、実際に起きていることへの客観的な評価を下すことができている。

米光さんは、このSMMで日々の報告書の作成する報告官のポストを務める日本外務省の職員である。外務省に入る前にも、OSCE職員としてボスニアで勤務していたことがあり、いわば「紛争の専門家」と言える人物である。彼は、ウクライナ全土から集まる莫大な情報を処理し、複雑なウクライナ情勢に客観的な光を当て、世界の人々・国々に確立した事実を伝えている。この重大な仕事を実は日本人が行っていることは、あまり知られていない。

米光さんは今回、なぜ日本人が欧州の機関であるOSCE・SMMで仕事をしているのか、SMMの報告書はどう読むといいのか、SMMはなぜクリミアやアゾフ海の監視ができないのかについて、ウクルインフォルムに話してくれた。


OSCEウクライナ特別監視団の日本人報告官

米光さんは、外務省に入る以前から紛争問題に関心があると聞いています。最初に、紛争に関心を持ったきっかけは何でしょうか。

紛争など国際問題には、高校時代から興味があったんですが、特に2001年の夏に大学2年生の時に、クロアチアの難民キャンプ(ヴァラジュディン)にボランティアに行ったのが大きなきっかけとなりました。もともと難民支援に関心があって行ったんですけれども、ちょうどその時はマケドニア紛争が起こっていた時期で、マケドニアから難民が流れてきていたんですね。難民の支援を行っている間に、どうしてこういう紛争が起こるのかとか、紛争解決、元を断つという、根底の問題にアプローチするにはどうしたらいいのか、と考えました。そして、色々探して、紛争を専門に扱うアメリカの大学院で勉強したのがはじまりです。その後のキャリアは、ボスニアの日本大使館で専門調査員をしたりとか、OSCEミッションで働いたりしました。その流れで、紛争に関心があって、紛争が発生している国やポスト・コンフリクト(紛争後)の国で働いてみたい気持ちがあって、ウクライナで活動するSMMでの仕事を希望しました。

日本の人は、SMMがどのようなミッションで、何をしているか知らないと思います。SMMの目的と活動、米光さんのポストについて教えてください。

OSCEウクライナ特別監視ミッション(注:OSCE Special Monitoring Mission in Ukraine。以下、SMM)は、OSCEの常設理事会の決定により、2014年3月に設立されました。設立の背景には、その当時のウクライナの混乱を受けて、ウクライナ政府がOSCEミッションの派遣を要請したことがあります。SMMの目的は、ウクライナ全土において緊張緩和し、平和と安定を促進することです。主な活動は、日々のパトロール等によるウクライナの治安情勢の監視・情報収集とその報告を行うことです。

私は、現在SMMで報告官として勤務していて、現場の監視員がパトロールなどを通じて集めた情報を精査・分析して、それを報告書にまとめるという業務を行っています。報告書には、一般向けにオンライン上で公開される日報や臨時報告書(スポット・レポート)、テーマ別報告書(セマティック・レポート)に加え、OSCE加盟国等に提出されるものがあります。

日報の内容は、どのようなものですか。

SMMの日報というのは、24時間、週末だと48時間というタイムフレームの中でモニタリング(監視)されたものをを報告書としてまとめたものです。日報の主な目的の1つは、「事実を立証すること」です。一方、同じく一般向け報告書であるテーマ別報告書(セマティック・レポート)は、日報よりも長い期間の傾向を追ったものであり、こちらには分析等がより多く含まれています。

SMMは、OSCEのミッションですが、OSCEは欧州の機関ですよね。でも、米光さんは、日本政府が派遣しています。どうしてOSCE・SMMに日本が人員を派遣しているのでしょうか。米光さんの所属は日本外務省ですが、日本が送る意義は何なのでしょうか。

日本はOSCEの参加国ではないんですが、11か国あるパートナー国の一国として、OSCEの活動を支援しています。それからOSCEの原則、コミットメント、またOSCEが信頼醸成措置を通じた安全保証環境の整備に非常に貢献してきたということを念頭におきつつ、今回のウクライナの事態を受けて、ウクライナの情勢安定化と平和に貢献しているSMMに人材を派遣する、そういう決定が2015年8月になされました。

日本外務省が人員を送ることに、日本としてどういうメリットがあるんですか。

日本は、OSCEにウクライナの平和と安定を希望しているということで、OSCEの取り組みを通じて、これに貢献していくということを考えています。

11か国のパートナー国の中で、日本と同じようにSMMに人を送っている国はありますか。

私の知る限り、日本だけです。

…そうすると、米光さんの存在は、珍しがられませんか。

はい、非常に。非常に珍しがられます。

この仕事の前は何をしていたんですか。

この仕事の前は、外務省の職員として在東ティモール日本大使館で経済協力を担当していました。

SMMに人員派遣というのは、米光さんが希望されて決まったんですか。

外務省職員としてSMMに派遣される機会があると聞き、即座に希望しました。また、今回の派遣前にも(外務省入省前に)、2014年の3月から4月にかけて、日本の支援で実施されたOSCEの「ウクライナにおける政治対話ミッション」プロジェクトの一員としてウクライナ東部で勤務したことがあります。その当時私は、外務省員ではなく、OSCE職員としてボスニアに勤務していたですけれど、OSCEがプロジェクトを立ち上げるということで、ウクライナに臨時派遣されたんです。それ以来ウクライナに関心があって、いつか機会があればまた来てみたいと思っていいました。そうした中で、今回の派遣の話があり、ウクライナに戻ってくることができました。

米光さんは日本政府からの初めてのSMMの要員なんですか。

いえ、2015年8月に外務省から派遣された前任がおり、私で2例目になります。

米光さんはいつからSMMで働いているんですか。

2017年4月からです。

SMMの報告から何を知ることができるのか

SMMの「毎日の報告」っていうのは、おそらく多くの人が読んだことないと思います。具体的に何が書かれているんでしょうか。

SMMの日報は、24時間という報告期間の中でSMMが監視したものが書かれています。基本的には、治安情勢を報告しており、日報の本文は停戦合意違反、特にその回数が多かった地域の報告から始まります。また、一般市民に対して被害が起こった時は、被害者やその家族、医療従事者にインタビューしたり、実際に銃撃・砲撃が行われた場所に行って、現場検証し、いかなる状況下で犠牲者が出たのかを詳細に伝えます。さらに、ミンスク諸合意違反として、重火器引き離しラインの中に兵器があった場合、それを違反として報告します。それから、SMMは東部だけではなくて、ウクライナ全土を監視していますので、全土の治安情勢、人権やその他の問題に関して、特段重要な事態が起きた場合は、日報で報告します。

報告官としての仕事の困難さは何ですか。

最も困難なのは、日報の報告期間が24時間で、実際の執筆時間が限られているという点です。具体的には、夕方から夜にかけて各モニタリング・チームから監視した内容を受け取って、それをもとに毎日の報告書を短時間で書く必要があるのですが、これは非常に難しい作業です。例えば停戦違反ですとか、重火器の撤収に関するミンスク諸合意違反という一つの分野だけを扱うのでなく、全ての監視対象の事象をうまく一つの報告書にまとめます。それぞれの分野の内容を理解してきちんと報告書にまとめる作業というのは、非常に困難ですね。

どんな基準でまとめるんですか。山のようにある情報の中で、これは報告書に入れよう、これは外そうというのは、どのように決めていますか。

日報においては、報告期間内に起こった最も重要なことを盛り込みます。判断自体は、SMMのマンデートと照らし合わせながら、どういったものを報告すれば良いのかということを、毎日のようにオフィスでも議論しますし、幹部の判断を仰ぎ、報告官の間でも話しつつ、何を含むか決めています。

基準は重要性?

マンデートと照らし合わせた際の重要性と関連性です。

重要なものが山のようにある場合、より重要なものが残るんですか。

重要なものと判断されれば、基本的には全て報告しています。

では、色々なミッションからの報告の中の重要なものは全て掲載されているんですか。

はい。その日報告すべきものは全て載っています。例えば、重要なものが100個あって、ページ数が少ないから10個しか報告できないということはないです。量に制限はないので、全部書きます。なので、その日によっては、例えば、重要な事態、国境付近での車列ですとか、そういうことが起こった時は、作業時間が長くなります。

そういう時は、仕事は、何時まで書き続けるんですか。

最長(朝)4時までかかったこともあります。それこそ長い時は、12時間ぐらい書いていたことがあります。

その報告書を一般の人たちが読むわけですが、一日に多くの停戦違反があったり被害者が出たりして、その報告が毎日続くわけですよね。その中で、多くの人は、報告書をパッと開いたときに何から読んだらいいのか、何に注意を向けて読んだらいいのか、最初はわからないんじゃないかと思うんです。米光さんから読者に対し、どういうところに注意を向けて読むといいか、読んで欲しいか、一般の人がSMMの報告書に読む際のアドバイスがありますか。

まずは、日報には、一番上に要約が含まれていますので、まずは要約を読んでもらいたいです。要約には、報告期間内に起こった最も重要なことが書かれていますので、そこを読めば基本的には過去24時間でどのようなことが起こったのか、おおよそ把握できると思います。それから特段の事項に関してご関心があれば、その項目の本文を見ていただいて、詳細を読むといいです。それがまず一つのステップですね。もう一つは、日報は、週6回発行されていますので、それを継続的に読んで、どういった傾向がつかめるか、例えば停戦合意違反数の増加したり低下したりは、日報を継続的に読むことによって把握できるかと思います。

毎日読まないと傾向はわからないということですか。

そうですね。(毎日読まなければ)傾向を掴むのは難しいですね。あとは、重要な事態を見逃してしまうことはありますね。もちろん重要な事態が起きれば、SMMも臨時報告書で報告したり、マスメディアもSMMの報告を取り上げて報じますので…。

ウクルインフォルムがニュースにしたり…。

そうですね。ただ、すべてがカバーされる訳ではないので、情勢を正確に把握するためには日報を定期的に読むことが最適です。もちろん、大まかな傾向を掴むのであれば、要約だけでも毎日読めば十分かと思います。

もちろん毎日読めというのはわかるんですが、報告の中には、時々SMMがあえて動画を作って報告したりとか、特段ピックアップする、大きな事件もありますよね。例えば、昨年8月の車列のウクライナ領への進入の動画のような。つまり、SMMとして重要なこととして強調する出来事もあるわけですよね。それはどういう時なんですか。

SMMとして、ソーシャルメディアも使っていますので、例えばフェイスブックやツイッターをフォローしていただくと、「こういった事が起こった」と、特に大きなものとしてハイライトで掲載されることはあります。動画で公開された車列はまさにその例だと思います。

SMMの報告書は事実を伝える。判断は、読者にゆだねる

あの車列の動画は、私たち、ジャーナリストの側からすると、明らかにロシアからウクライナから車列が入ったのだと思うんですけど、SMMはそうは書いていません。それはどうしてでですか。

SMMのマンデートはウクライナ国内の監視だからです。表現としては、「車列がウクライナとロシアの国境付近で移動しているのが確認された」というようなことになります。

(編集注:2018年8月9日発表日報には「SMM長距離無人機が、深夜、国境通行設備のない未舗装道路を通じて、ウクライナ領へ/から車列が進入/退出した(SMM long-range UAV spotted convoys of trucks entering and exiting Ukraine via a dirt track where there are no border crossing facilities in the middle of the night)」と書かれている。報告書には進入元(どこから)は書かれていないが、その地点からして、ロシアからの進入以外はあり得ない。なお、SMMは、その後も複数回、同様のウクライナ・ロシア間国境未舗装道路を通じた車列のウクライナ領進入・退出を報告している。)

SMMの「報告はするけれど、判断はしない」という立場は、面白くもあり、同時に、ウクライナ社会ではしばしば批判を受けています。事実を伝えるのがマンデートであって、結論づけるのはマンデートではない、ということでしょうか。読む側からすると、特にウクライナのメディア関係者や一般の人たちは、明らかに「これはロシアがしているだろう」とわかる場面でも、SMMは明言をしません。SMMはどうしてそのような立場なのでしょうか。

「判断しない」というのは誤解で、我々が判断を下し、報告する場合はたくさんあります。例えば、停戦合意違反があって、爆発がありました。爆破音や被弾地点から武器や発射の方角を推測するとか、そういうのはSMMのアセスメントとしてきちんと報告書に書かれているので、全て判断していないという訳ではありません。事実の立証ができるかどうかはどれだけ情報が揃っているかによるかと思います。我々は事実を報告し、読者はそこから各々の結論を導き出す、という考えです。

政治的な判断は読み手側に委ねる。

そうですね。

読んだ人が、事実をもとに、判断をする、そのための材料を作っているという理解でいいですかね。

材料ではないですね。「事実を立証し、報告すること」がマンデートです。

事実を立証する、というのは英語では何て言うんですか。

establish factsです。それを行っています。その後の判断は、読者によると思います。

私たちがよく読まないといけないということですね。

ただわかりやすく事実を伝えるというのは、報告官としても個人としても全体としても、どの報告書でも心がけています。

どういう意味でわかりやすいということですか。判断しやすいということですか。

例えば、物事の表現です。被害にあった民家があったら、それがいつ頃、どうして起こったのかということを、きちんと時系列で書いて、コンパクトにまとめて、報告書に載せています。これは難しい作業ですけれど、毎回心がけています。やはり、わからないと読んでもらえないですから。それから事実を立証しても読んでもらえないと、その後のSMMの目的としている事態の沈静化のようなマンデートの遂行自体にも影響が出るので、わかりやすい報告書は非常に鍵を握ると思っています。

SMMの抱える主要な困難:移動の自由の制限

SMMの活動をする中で、全てがマンデートにのっとって完全に活動が行えているのでしょうか。そうでなければ、どんな問題や困難がありますか。

マンデートの遂行に関しては、ウクライナ全土にアクセスがあるので、監視マンデートは(ウクライナ東部の)ドネツィク州とルハンシク州の被占領地域を含めてあるんですけれども、被占領地域ではパトロール要員が様々な困難に直面しています。例えば、チェックポイントを通過する時ですとか、(編集注:ウクライナ政府がコントロールを失っているウクライナ・ロシア間の)国境の監視、それから武器の監視ですね、そういったことを行う時に、武装勢力がアクセスを拒否しています。ウクライナ政府と武装勢力の双方が拒否する場合があるんですけども、特に被占領地域においてアクセス拒否の事態が多く発生しているので、そのマンデート遂行に支障が出ているというのが現状です。これについては、セマティックレポートが出ているので、読んでもらえたらと思います。

(出典:THEMATIC REPORT Restrictions of SMM’s freedom of movement and other impediments to fulfilment of its mandate

(編集注:非政府管理地域において、SMM移動の妨害が多く、また、戦闘の発生しない、ウクライナ・ロシア間国境付近での移動妨害も多く見られる。)

SMMの監視員が移動の制限にあったり、その他の制限があった場合、必ず日報で報告するようにしているんですけども、例えば、2018年10月にUAV(監視用無人飛行機)がウクライナ・ロシア間国境付近で撃墜された時は、きちんとそういった事態が起きたと言うことで報告をしました。そういったUAVに対する攻撃も頻発しているというのが現状で、それも障害になっています。

また、2017年4月23日、監視中に爆発で要員1名が亡くなりました。その爆発は、調査報告によれば、おそらく、most likelyで、対戦車地雷によって、爆発が発生したという結論に至っています。その事件以降、舗装されている道路、もしくは、英語だとハードサーフェスって言っているんですけども、そういった場所しか監視活動はできないということになりました。もともと舗装されていない、未舗装の道路が監視活動できていたんですが、そこの監視が原則としてできなくなったという問題があります。

監視に衛星は使えないんですか。ミンスク諸合意によれば監視に利用できますよね。

技術的な手段を使って監視をする、ということが、ミンスク諸合意の中はも盛り込まれているんですね。UAVっていうのはその一環で、その他の遠隔監視っていうのも、マンデートで定められた情報収集の手段として遂行できる状況にあります。

衛星を含め。

はい。

SMMは、OSCE加盟国にコンセンサスがないためクリミアとアゾフ海の監視ができない

SMMのマンデートがウクライナ全土にある中、監視活動ができない場所があるのは問題じゃないかと思います。また、ウクライナにとっても日本にとっても、クリミアはウクライナ領であり、そうすると、クリミアは監視対象じゃないのか、もし監視対象なら、衛星を使って監視できるんじゃないかと思います。また、現在アゾフ海の監視の話が提起されています。ロシアがいくらクリミアをロシア領だと言い張ろうと、海上には、明らかにウクライナの領海だという部分があります。例えば、少なくともまずそういう部分だけでも監視できないのでしょうか。

OSCEの57の加盟国の決定を得て設立されていますが、クリミアを監視対象に含めるかどうかは加盟国間一致がありません。従って、これまでのところ監視はできていない状況にあります。

アゾフ海の監視についても同様で、加盟国の一致があって初めて監視活動ができます。その一方で、ウクライナ国内で発生しているアゾフ海に関する事案についてはきちんとフォローしています。例えば、11月25日のケルチ海峡沖で起こった衝突事案に関しても、ウクライナで起こった事実に焦点を当てて、報告書を書いています(11月26日付「SMM monitored security situation following developments at sea near Kerch Strait」)。

SMMは、2015年7月15日に「クリミアとの行政境界線を通じた移動の自由(Freedom of movement across the administrative boundary line with Crimea)」というテーマ別報告書を出していますが、これはクリミアがSMMの監視対象であるということの証拠じゃないんですか。

ご指摘の報告書は確かにクリミアに関する報告書ですが、同地で直接監視活動を行って書かれたものではなく、政府発表や聞き取りをもとにまとめられた調査報告書です。また、SMMはマンデートの一部としてヘルソン地域で治安状況等の監視を行っています。

境界線上で?

その近くでです。

クリミアに隣接する地域、境界線ぎりぎりのところで治安状況を見ているんですか。

はい。

どの辺まで見に行くんですか。

クリミアに隣接しているヘルソン地域のチェックポイントまでです。

欧州議会と欧州評議会がそれぞれSMMにアゾフ海・ケルチ海峡の監視をさせなければいけないと主張しているんですけれども、現在の議論はどうなっているんですか。

SMMがどこを監視するかは、参加国の一致があって初めて監視活動ができるという立場です。

OSCEでロシアがオッケーを出せば、アゾフ海やケルチ海峡までSMMは行けるんですか?

それは、そういった決定が下されてから判断されます。

SMMの存在が、紛争の更なる激化を防止している

2月12日は、ミンスク両合意履行のための方策パッケージ(Package of Measures for the Implementation of the Minsk Agreements)署名から4年目なんですが、4年経過して、情勢は結局当時とどれぐらい変わったのでしょうか。2015年2月12日にウクライナとロシアがこのパッケージに署名して、それにより停戦違反が減少したのは事実だと思うんですが、それ以降は、今日まで情勢に大きな変化は、私は、ないと思っています。今後の情勢解決に向けて、SMM一員として、米光さんはどうすべきだと思いますか。どうしたら解決が近づくと思いますか。

基本的には、ミンスク諸合意の履行、停戦合意をまず行うことが紛争解決に向けての大きな一歩かなと思います。そうすることで、被害にあっている一般市民の方々が救われるので。まずは、そこが一番重要かなと思います。

事態、特に一般市民の被害が出るというのは、民家の近くにそういった塹壕が存在したり、戦闘が行われていることが一つの問題です。一般市民の民家と軍事的な施設、兵器が、物理的に引き離されていない、そういった状況が発生しています。コンタクト・ライン付近で双方戦力の位置が近づいていて、その間に民家がある、という状況は、事実として起こっているので、そうなると被害が拡大してしまいます。一番問題なのは、民家と民間の施設と軍事施設、兵器が隔離されていない、という状況が問題だと思います。

SMMの究極の目的は、ウクライナの紛争の解決だと思います。SMMの活動は、情勢の解決を近づけていると思いますか。

SMMのプレゼンスがあって、SMMが監視活動、対話促進をしていて、それが緊張の緩和と、紛争拡大の防止に貢献しているかなと思います。例えば、ミンスク・プロセスのTCG(三者コンタクト・グループ、Trilateral Contact Group)等で対話が行われて、そこで停戦合意に対する再コミットメントが合意され、それからSMMが現場で監視活動を行って、そういった再コミットメントが履行されているかどうかを監視しています。そういったプロセスの中で、停戦合意違反というのは減少する傾向にありますので、そういった部分で事態の沈静化に貢献できている、もしくは、一役を担っているかなと考えます。

米光さんにとって、SMMの一員としての仕事のやりがいは何でしょうか。

やりがいは、そのSMMのマンデートとして事実を立証して報告するという中で、報告の部分を担当できるのが1番のやりがいかなと思います。SMMしかアクセスできない場所、監視できないものや情報が、ウクライナ全土にたくさんあるので、SMMがいなかったらその事実は、埋もれてしまう可能性があるんですね。特にその中立性を考えた時に、SMMの報告ってのは、非常に貴重だと思っています。そういった事実の立証・報告に貢献できているというのは、非常にやりがいがあると思います。SMMがいなければ、事実が明るみに出ないこともあるので。

平野高志(写真含む)、キーウ

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