アレクサンダー・フーグOSCE特別監視団(SMM)第一副団長
OSCE特別監視団は、暴力の停止のために活動しているが、戦車を撤収することは我々の課題ではない
10.09.2018 11:35 221

経験豊富な外交官であり、平和維持ミッションへの参加経験もあるアレクサンダー・フーグ氏は、おそらく、すでにウクライナの歴史に刻まれた人物であろう。少なくとも、2014年以降のロシアによる侵略が続く期間については、そう言えるだろう。

SMMの活動については、SMM要員が極端に慎重で、気楽な仕事をしているのではないか、激しい対立、戦闘行為に介入しないようにしているのではないかとの批判があるが、スイスの元軍人であるフーグOSCE特別監視団(SMM)第一副団長はそれを否定する。

SMMの本当のマンデートに関する様々な誤解、意図的な誤情報、「監視」と「管理」の違い、これらについて、ウクライナで活動するSMMの第一副団長であるフーグ氏が、ブリュッセルにてウクルインフォルムの記者へのインタビューに答えてくれた。

「SMMにロシア人が非常に多いというのは、誇張」

フーグ副団長、SMMは、自らのマンデートで定められた課題を遂行するのに十分な能力がありますか。

SMMは、2014年にウクライナ政府の招待を受け、OSCE常設理事会の満場一致の決定(編集注:2014年3月21日の決定)にもとづいて、展開されました。これは、武力衝突が激しくなる前のことです。私たちは、ウクライナの全地域で活動していますが、しかし、言うまでもなく、主要な注意はウクライナ東部に集中しています。キーウ(キエフ)、ヘルソン、オデーサ、ハルキウ、イヴァノ=フランキウシク、リヴィウ、チェルニウツィーに監視ベースが置いてありますが、しかし、私たちの主要な人員・資金はドネツィク州とルハンシク州に集中しており、衝突ラインの両側に計15の常駐監視ベースが設置されています。

これらのチームは、監視とパトロールを日中に行い、夜間は15の監視ベースからの観測を行なっています。私たちは、衝突ラインの両側に、24時間稼働する計13の監視カメラを設置しています。

機器で得られたデータを含め、これらの全ての情報はキーウの本部へと送られます。

現在、SMMには、ウクライナ全土で700名以上の監視要員が勤務しています。これに加えて、400名近いウクライナ国民の職員がいます。現時点で、SMM要員数は、合計1214名です。

また、SMM要員の出身国に関して聞かれるいくつかの正しくない情報にコメントしたいと思います。以前、SMM要員の多くがロシア出身者だとの客観的でない情報が広まりました。現時点で、SMM要員のロシア出身者は37名です。しかし、国別で最大要員数はアメリカ出身者で、60名です。全体では、SMM要員の50%は、欧州連合(EU)加盟国出身者です。これらのデータは全て、私たちのウェブサイトでアクセスできる情報です。

「ドンバスの治安情勢:東部前線に変化はない」

ウクライナ東部の治安情勢について、どのように評価していますか。

過去数年と比べると、SMMが活動する空間では、今年治安情勢に大きな変化はありません。停戦合意が維持された新年とクリスマスの時期は、若干平穏でした。3月は、停戦違反の頻度が上がりました。その後、イースターの時期にはまた、停戦合意が発効し、停戦違反はあったものの、その件数は少なかったです。4月の終わりと5月の中旬には、私たちは、今年に入ってから最大数の停戦違反件数を記録しました。特に、5月16日は、少なくとも2380回の停戦違反が記録されるという最も困難な日でした。

現在(編集中:このインタビューの初掲載は7月2日)、私たちは、発表されたいわゆる「パン収穫」停戦を歓迎しています。これは、衝突ラインの両側近辺に暮らし、停戦違反に最も苦しんでいるウクライナ国民にとって特に大切なことです。

しかし、この停戦も一時的で、制限されたものとなるでしょう。なぜなら、これら停戦は、軍事・技術的面に横たわる暴力発生の最大の原因を解決しないからです。その原因とは、展開されている(双方の)軍の部隊と、戦車、迫撃砲、榴弾砲といった重火器の距離が近いことです。これらの理由がミンスク諸合意の規定どおりに除かれないかぎり、暴力は続き、状況は今後も予想不可能で不安定なままであり続けるでしょう(編集注:8月末から、学業年度開始にともない、停戦への再コミットメントが発効した。その後、以前同様、停戦違反数は減少しているが、完全な停戦は実現していない)。

「2017年は、40万以上の停戦違反が確認された」

ウクライナ社会では、ウクライナの軍人、政治家、専門家、記者の間で、SMMに対し、ひんぱんに不満が聞かれます。さらには、SMMの効果と活動は十分ではないと非難する者もいます。

ええ、それについては私たちも知っています。なぜこのような批判がされるのかは、とりわけ、SMMの活動に関する誤解と関係しています。SMMは、監視を行い、監視したことを報告することが指示されています。他には、人道面での重要な懸念を抑えることを目的に、現場での全ての関係者の対話をうながすことも指示されています。最大の活動内容は、停戦維持、兵器の撤収、地雷撤去の監視と報告です。私たちの役割はこれらにあります。

しかし、戦闘行為が継続する状況は、私たちの活動とは関係がありません。なぜなら、戦闘が継続するのは、関係者がミンスク諸合意を履行しないことが理由だからです。私たちは、自分たちの仕事を行なっており、その内容は私たちが毎日ウクライナ語、英語、ロシア語で発表している日々の報告書で読むことができます。しかし、例えば、ドネツィク市やアウジーウカ市といった、あってはならない場所から戦車を撤収させることは、私たちの課題ではなく、当事者の責任なのです。

昨年(2017年)、私たちは、衝突ラインの両側の重火器が本来撤収されていなければいけない場所で、4000以上のそれら重火器を確認しました。また、2017年、40万1000回以上の停戦違反を確認しました。つまり、1日1000回以上停戦違反が確認されたことになります。私たちが詳細な報告をしているのとは無関係に、当事者は、SMMが確認した暴力について、ほぼ何の対策をとっていないのです。

私たちの効果のレベルを評価するのは困難です。なぜなら、それは紛争が止む状況を「測定する」ことになるからです。SMMは、安定と平和を確立することを促進します。しかし、それを評価するためには、暴力のレベル・暴力の不在を指摘しなければなりません。それを「測定する」ことが困難なことには同意してもらえるでしょう。

私たちは、客観的で確認済みの情報を提供することで、紛争の解決のための努力をしています。この情報は、責任ある人々が決定を下すことを助けますし、政権を持つ人、実質的なコントロールを持つ人達にとっては、合意違反者に責任を取らせることを可能とします。確かに、私たちは、全てを見ることはできません。しかし、私たちの報告には、適切に確認された事実が掲載されています。この情報は、また、私たちが活動する地域の人道状況を改善するのにも役立っています。特に、私たちは、支援を必要とする人、例えば、家の修理、水道管や電話回線の修復を必要とする人たちを見定めます。私たち自身が修理するのではないですし、私たちが食料を運ぶのではないですが、私たちは、衝突ラインの両側をパトロールすることで、支援をする関係組織・機関のアクセスを保障し、必要な情報を提供しているのです。

「SMM要員は、常に非政府コントロール地域で脅しを受けている」

 SMM要員は、パトロール時や業務執行時に、脅迫を受けることや、移動の妨害を受けることはありますか。

SMM要員の移動の妨害事例を報告することは、SMMのマンデートです。私たちは、日々の報告書について、この妨害事例を報告しています。これらの移動制限の理由は様々です。消極的制限と呼べる、私たちが定期的に受ける制限は、とりわけ地雷原に関係しています。しかしながら、私たちは積極的な妨害も受けています。これら積極的な移動の妨害は、ほぼ常にウクライナ政府がコントロールできていない地域で起きています。

SMMは、ロシアがコントロールするウクライナ・ロシア間国境にもアクセスしていますか。

SMMのパトロールは、ウクライナ・ロシア間国境地点にも訪れることができますが、一定の制限があります。(ウクライナ政府の)コントロールがないロシアとの国境検問地点へ行く途中、SMM要員は、多くの検問所を通過しなければなりません。そして、国境へ到着するまでに、武装した人物には、すでにパトロールが来ることが知られてしまっています。ウクライナ政府のコントロールがないロシアとの国境検問地点の近くにSMMが恒常監視ベースを設置するために不可欠な許可を、武装集団は現在まで出していません。また、私たちは、自動車や人々の移動を観察していますが、しかし、私たちが見ているものは、非常に強力にコントロールされています。武装した人物が私たちに対して、国境検問地点から一定の距離を保つように要求している以上、これを独立した監視と呼ぶことはできません。

もう一つ説明したいことがあります。私たちのマンデートは、国境を越えて来る輸送物を確認する権限は含みません。例えば、たとえSMM要員が国境で、閉ざされた荷台を乗せた自動車を確認したとしても、私たちには、荷台を開くための手段は何一つありません。私たちは、閉ざされた荷台を運ぶトラックを確認したと述べることができるだけです。もちろん、この車両は何でも運ぶことができますが、私たちは、何を運んでいるかは知り得ないのです。

そして、公的空間では、これらトラックが軍事品を運んでいるとの多くの発表が聞かれますし、また、どうしてSMMはそのことを報告しないのかとの質問もあります。しかし、私たちは、このような検査のマンデートを持っていないのです。また、「monitor(監視)」と「control(管理)」という用語の英語からの翻訳と、ウクライナ語・ロシア語の文脈での理解の間の問題も存在します。つまり、しばしば「監視」が「管理」の意味で訳されることがあるのです。しかし、これは、誤解を招く誤りです。

また、私たちは、うわさのレベルで得た情報は、報告書に加えません。誰かが、あたかも戦車が国境を越えるところを見たと言って、SMMに連絡します。しかし、私たちは、自分自身で確実に見て、監視することで事実を確認しなければならないのです。

「『ミンスク』を履行すれば、ドンバス地方の暴力の停止は不可逆的なものになる」

フーグ副団長は、先週の欧州議会において、ドンバス地方への平和維持ミッション展開問題の公聴会に参加しました。副団長は、平和維持活動分野で多くの経験がありますね。(ドンバスへの)平和維持ミッションへの見方、そのあるべきマンデート、展開の可能性についてどのようにお考えですか。

まず、平和維持とは何か、から述べたいと思います。平和維持とは、平和を維持するための諸方策です。そして、ウクライナ東部については、そのような諸方策はミンスク諸合意によって採択されています(編集注:ミンスク諸合意とは、2014年9月と2015年2月に、ベラルーシのミンスクにて、ウクライナ、ロシア、OSCEの三者の代表と、武装集団代表によって署名された、停戦や情勢の政治的解決手段等を定めた3つの合意文書のこと)。ミンスク諸合意は、重火器や軍の撤収、地雷撤去等を定めています。そして、関係者がこの要件を履行したら、停戦は不可逆的なものとなるのです。ですから、兵器と軍隊が撤収した時に、安定した平和維持のプロセスを確立するために、武器が前線に戻らないよう、そして、情勢が不可逆的に安定するようにするために、平和維持ミッションがとる方策が追加的手段となる可能性はあります。

平和維持ミッション展開可能性の議論は、この点で重要です。なぜなら、この議論が示すことは、情勢は現時点でまだ解決しておらず、マスメディアの報道からも消えておらず、問題が存在することが再確認されているからです。

ロシア、そして、複数のヨーロッパの政治家は、ウクライナに対して、まず、ミンスク諸合意の政治部分を履行するように要求しています。ウクライナは、一方で、優先的に履行するのは治安方策だと主張しています。

どうしてミンスク諸合意が履行されないのかについて、私は誇張したくありません。しかし、私が強調したいのは、ドンバス地方は安定した平和を必要としているということです。それが意味するところは、停戦の安定と不可逆性です。それは、基本的な軍事面での方策を履行すること、つまり、重火器の撤収、部隊や兵器の後退、地雷の撤去を履行することで実現できます。そして、そのためには、すべての当事者が、政治意志をもって、命令を出さなければなりません。

そうでなければ、人々は亡くなり続け、負傷し続け、インフラは破壊され続けることでしょう。

現状、ドンバス地方で地方選挙の実施は、OSCEの基準では可能ですか。

もちろん、OSCEは、自らの経験から、選挙実施を支援していく準備をするでしょう。しかし、いつその地方選挙か実施できるかについては、私は、誤解を招くようなことは述べたくありません。

現在、ウクライナ東部では、反テロ作戦(ATO)ではなく、統一部隊作戦が展開されています。フーグ副団長は、ウクライナによるドンバス脱占領の行動をどのように評価していますか。

私たちは、セルヒー・ナイェウ中将を含め、ウクライナ統一部隊の司令部と緊密に連絡をとっています。現時点では、その変化が現場の状況に与える影響について、客観的な評価を行うのは時期尚早です。しかし、重要なことは、統一部隊司令官であるナイェウ中将が、衝突ラインの両側の住民を保護することが優先課題であると主張していることです。SMMは、言葉が行動と一致しているか否か、報告していきます。

アンドリー・ラウレニューク、ブリュッセル

写真:ダニーラ・シャムキナ

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