マレーシア機撃墜裁判 法廷にて事件当日の被告人の通話やりとり提示
ウクルインフォルムのハーグ特派員が伝えた。
9日の審理では、起訴されている被告人4名(イーゴリ・ギルキン(ストレルコフ)(ロシア国籍、ロシア連邦保安庁(FSB)元将校、元いわゆる「DPR国防相」)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐、いわゆる「DPR・GRU長官」)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、GRU特殊部隊中佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍、ロシア側で戦闘に参加))の事件当時の電話による通話記録の一部が提示された。
イーゴリ・ギルキン被告とミハイル・シェレメート氏(編集注:2014年時点で、クリミア・ロシア占領政権のセルゲイ・アクショーノフ首長「内閣」にて「第一副首相」を務めていた人物、現ロシア国家院議員)の通話記録も提示された。
その際、ギルキン被告は、ロシアからの「大規模な支援」を要請しており、「近々大規模な支援がなければ、粉砕される。(中略)もしロシア支援、空からの援護、少なくとも砲撃支援の問題が解決されなければ、私たちは東部を維持できない」と発言している。
同日の審理ではまた、捜査側の集めた地対空ミサイルシステム「ブーク」の輸送に関する写真、動画、移動ルートに関する詳細な証拠が提示された。
10日の審理では、セルゲイ・ドゥビンスキー被告とニックネーム「ボツマン」なる男性の2014年7月17日(MH17撃墜事件当日)17時42分の通話記録が提示された。その際、ドゥビンスキー被告は、武装集団が手に入れた「ブーク」によってウクライナ軍戦闘機を撃ち落としたと述べている。同被告は、「朝ブークMを得てから、戦闘が楽になった」と発言した。
ドゥビンスキー被告は、同日18時20分にイーゴリを名乗る別の男性との会話にて、記者たちがドネツィク市から80キロ離れた地点でボーイングが撃墜されたと報じていると述べている。ドゥビンスキー氏は最初、「自分たちの撃墜したウクライナ軍戦闘機」をボーイングだと思っているのだろうと発言。その後、撃墜されたのが旅客機であったことがわかると、武装集団戦闘員たちは、ウクライナ軍戦闘機がボーイングを撃墜したのであり、自分たちはその戦闘機を撃墜したのだなどと話し始めている。
レオニード・ハルチェンコ被告は、2014年7月17日21時32分のニックネーム「ギラゾフ」なる戦闘員との会話にて、「ブーク」を操縦していた戦闘員が行方不明になったと述べている。
またハルチェンコ被告は、同日21時40分のオレグ・プラートフ被告との通信記録でもブーク操縦士の話をしている。
さらに、撃墜事件翌日朝に行われた通話の記録では、ギルキン被告とドゥビンスキー被告が話しており、その際ドゥビンスキー氏は、ブークはすでにロシア連邦領内だとし、「車はもうずっと前にロシアに入っている」と述べている。
法廷では、動画やブーク移動経路を示す地図が詳細に提示されている。
ダグマル・コステル裁判官は、全ての証拠は捜査の結果として得られたものであるとし、裁判が自らの見解を示すのは、内容面審理が終了してからだと繰り返している。
なお、審理の様子はオンラインで公開されている。
The MH17 criminal trial continues at 10:00 a.m. CEST. Follow the proceedings via our livestream. #MH17 https://t.co/T0oXf6hYAI pic.twitter.com/VfBUhlonzC
— CourtMH17 (@CourtMH17) June 10, 2021
マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させた。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名を公表している。
MH17事件の公判は2020年3月9日にオランダにて開始しており、とりわけ2021年6月7日からは事件の内容面の審理に移っている。