プーチンの「ロシア人とウクライナ人は一つの民」主張は、ロシア帝国が宇抜きでは不完全であることに由来=記憶研究所所長

プーチン露大統領が、あたかもウクライナ人とロシア人が「一つの民」であるかのように主張するのは、ウクライナという要素がなければロシア帝国が不完全となるためである。

アントン・ドロボヴィチ・ウクライナ国家記憶研究所所長がキーウ(キエフ)安全保障フォーラム「東西南北」の際に主張した。同フォーラムを主催したオープン・ウクライナ基金がウクルインフォルムに伝えた。

ドロボヴィチ氏は、「ウクライナはロシア帝国を形成するための主要な民族の一つとなっていた。古典的ロシア帝国、あるいはソ連邦という名の『ロシア帝国2.0』のことであり、私たちはその一要素とされていたわけだ。専門家たちは、『ウクライナという要素がなければ、完全なロシア帝国は存在しない』と述べている」と強調した。

同氏はさらに、ロシアがクリミア・タタール人を弾圧し、クリミア・タタール語を消滅させようとしていることも、それによって説明できると指摘した。

同氏は、「彼らはそれら(編集注:クリミア・タタール要素)を破壊している。それは古典的な同化戦術であり、政党や民族団体を禁止している。彼ら(ロシア)は、全くの帝国的計画を有している。ウクライナに関しては、ウクライナが一定程度モスクワとの歴史的・文化的近接性を有していることから、彼らはウクライナを『一つの民』プロジェクトに加えようとしているのだ」と説明した。

これに先立ち、7月12日、プーチン露大統領は、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」と題する論文を公開していた。その論文は、「ロシア人とウクライナ人は一つの民である」とする従来の同氏の主張から始まっている。またプーチン氏は、「ロシアとウクライナの間にここ数年で生じた壁」を「悲劇のような大きな苦しみ」だと形容し、その責任は、ウクライナ人自身が自ら犯した過ちと外部勢力による「目的を持った活動」にあると主張している。

ゼレンシキー大統領は、ウクライナ人とロシア人は、「確実に一つの民ではない。それぞれに自らの道がある」と発言している。

ウクライナの世論調査では、ウラジーミル・プーチン露大統領による「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」に関する主張に「同意しない」と回答した回答者は約70%に上っている。

米歴史家のティモシー・スナイダー・イェール大学教授は、ウラジーミル・プーチン露大統領による論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」は、実際にはウクライナを併合するシナリオだと指摘している