露発偽情報の主な対象、新型コロナから再びウクライナへ=EU偽情報対策チーム

ロシアの親政権メディアにて、またウクライナを対象とした偽情報の発信が増えてきている。最近のウクライナ関連の偽情報は、「世界政府」「コロナ陰謀論」「西側のロシア嫌悪陰謀論」の数を超えている。

28日、欧州連合(EU)が創設した「East Stratcom Task Force」の運営する、偽情報対策チーム「EUvs偽情報」が特集記事「基本への回帰:ウクライナ、修正主義、ロシア嫌悪」を公開した

EUチームは、「今週、親クレムリン偽情報は、お気に入りのサンドバッグの一つに戻ってきた。ウクライナだ。『ユーロマイダンは親欧州極右主義者のクーデターの結果』とか『クリミアは併合されたのではない』とか『EUはウクライナを利用している』といった古い表現の反復以外に、クレムリンメディアは、クリミア違法併合後6年間紛争に苦しんでいる国に対して、新しくクリエイティブな攻撃を仕掛けている」と指摘している。

同チームは、偽情報・印象操作の事例を複数紹介している。例えば、ロシアのメディアは、5月9日付けの欧州安保協力機構(OSCE)による、ウクライナ東部における4名の児童の負傷に関する中立的な報告書を参照しつつ、自らを仲裁人かのように見せつつ、ウクライナ軍を意図的な児童攻撃だとして断罪しているという。また、一切の根拠を示さないまま、ドンバス地方での米国出身のフォトジャーナリストに対する強姦でウクライナの軍人を断罪したケースもあったという。

同チームは、類似の偽情報の大半は、ウクライナ政府やゼレンシキー大統領の信頼を破綻させることを目的としていると指摘しており、「ウクライナにはドンバスを攻撃する意図がある」とか、「紛争解決の平和協議をサボっている」などと、あらゆる断罪が行なわれていると伝えた。更には、ロシアメディアは、「腹を空かせた暴徒が国を分断しようとしている」とか、「ウクライナが意図的に移民をEUに押し返すためにドンバスに連れてきている」といった情報も流していたと伝えた。EUチームは、「ウクライナは米国の傀儡」であるというナラティブも再び現れているとし、その米国はクリミアのコントロールを得て、ウクライナの政治的任命権を得ようとしていると拡散されていると指摘した。

記事には、「もちろん、米CIAも出てくる。CIAがゼレンシキーに制裁延長とロシアのソーシャル・ネットワークへのアクセスをブロックを命令したのだ」と書かれており、同時に注釈で「実際には、その決定はウクライナ安全保障国防会議(NSDC)により、全く持って理解できる理由によって採択されたものである」と説明されている。

EUチームは、偽情報のウクライナ攻撃は、5月9日関連で最高潮に達していると説明している。クレムリン偽情報メディアは、ウクライナやその他の「ロシア嫌悪国」を「歴史修正主義国」として断罪しているという。ウクライナに関しては、5月9日の戦勝記念日の祝賀を抑圧したと断罪(編集注:今年の関連行事は、新型コロナウイルス対策の一環で実施されていない)したり、退役兵の評価を下げたり敬意を損なったりしていると断罪している。その他、ポーランドやバルト諸国に対しては、ソ連による対ナチス・ドイツ勝利の価値を矮小化しようとしているとして断罪。更には、ベラルーシの野党勢力に対しても、ミンスクでの軍事パレードを「米国務省の資金で」破綻させようとしたとして批判していたという。

その上で、EUチームは、「第二次世界大戦のテーマでは、親クレムリンメディアは、偽情報のクラシックな『注意逸らし戦術』をはっきりと維持している。つまり、『自分が非難されている内容でもって、他者を非難する』というものだ。それは、西側は歴史修正主義の罪を負っており、モロトフ=リッベントロップ協定(独ソ不可侵条約)への注意を高めることにより真実を放棄しようとしている、というのだ。もし誰かが忘れているのだとしたら、その協定こそが、欧州をナチスとソヴィエトの影響圏に分断したのであり、東欧に50年にわたる共産・全体主義体制、言葉にならない苦しみと痛みをもたらしたのだ」と説明している。