ウクライナの民主化は市民社会抜きには実現不可能=フクヤマ

ウクライナの民主化は、強固な市民社会の存在によってのみ可能である。

3日、米政治学者のフランシス・フクヤマ氏が、ハーバード大学ウクライナ・リサーチ研究所(HURI)主催オンライン会議「なぜウクライナは民主主義か?」における講演時に発言した。

フクヤマ氏は、「ウクライナの民主化は、ウクライナの市民社会抜きには不可能である。言わなければならないことがある。私は、1990年代、市民社会に関する大きな期待があったのだが、私は、どちらかといえば、市民社会はウクライナよりロシアでこそ活発で強固になると思っていた。私は、その点で完全に間違っていたのだ」と発言した。

同氏は、2004年のオレンジ革命時、市民社会がまとまって行動したことで「ウクライナで真の民主化が可能となった」と指摘した。また同氏は、2013〜14年の尊厳革命(マイダン革命)時と革命後も、市民社会の役割が大きく、特に政府が約束した改革の実現をフォローする上で大きな役割を担ったとし、「そして、私は、何より若いウクライナ国民たちのエネルギーと理想に心を打たれている」と発言した。

同時に同氏は、民主主義確立にとってのもう一つの重要な要素として、効果的な政権運営を指摘し、「現代のリベラルな民主主義は、現代的国家の周りに築かれなければならない。現代的国家とは、個人を中心とせず、個人利益ではなく、社会利益に奉仕することを優先課題とする公務員に支えられた国家のことである」と発言した。

フクヤマ氏はまた、真の民主主義への道の主要な障害の一つが汚職であると指摘した。同氏は、ウクライナにおいて現象となっている体系的汚職は、まだ長く存在し続けるだろうと述べつつ、「汚職との闘いは、長期戦である。行ったり来たりが生じ、成功も失敗もあるだろうが、しかし、その道は進まねばならない。重要なことは、その汚職との闘いのプロセスに対して多数の国民からの幅広い支持があることである」と発言した。

同氏は、ロシアがウクライナの民主的発展に対して、社会の分断や不安定化を煽ることで、妨害を行なっていることを指摘した。同時に同氏は、ロシアの侵略によって「多くのウクライナ人が国家帰属を意識し、自らの民族的自覚を向上」させ、またウクライナ人が「ロシアの見ている世界と大半のウクライナ人が見ている世界の間の違いがいかに破壊的なものかを理解」することを促したと指摘した。