コロナワクチン巡り…「ウクライナ人の健康が地政学にさらされている」=米紙

米国からのコロナワクチンの供給失敗、欧州の政策の複雑さ、露製ワクチン「スプートニクV」の拒否…。これらが、ワクチンを巡る地政学的競争へウクライナを追いやっている。

米ニューヨークタイムズ紙が報じた

記事には、トランプ米大統領の導入した輸出禁止により、ファイザーやその他の西側諸国で作られるワクチンを初期に供給することができなくなったとあり、ウクライナはこれら企業と協議を続けているが、受け取り時期は先延ばしされ続け、2021年末までに受け取れるかどうかについても保証がない状態になっていると説明されている。

この状況を受けてロシアのプロパガンダ発信者たちが活発化しており、西側の同盟国がウクライナを支援しようとしていないと強調して報道しているという。他方で、ロシアは自国産コロナワクチン「スプートニクV」の提供を提案したが、ウクライナ政権は、その効果と安全性に疑念を持っており、提案を拒否し、代わりに中国との協議を開始している。

親露系テレビは、ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領が「敵からの支援を受け取ろうとせず」、国民を死へと向かわせていると非難。さらに親露メディアは、ウクライナ政府関係者がロシアのワクチンの利用を採択の予定はないと発表しているにもかかわらず、東部ハルキウ市の薬剤企業ビオリク社がウクライナ政府に対して「スプートニクV」の登録を要請したことを大きく報道している。

ウクライナのマクシム・ステパノウ保健相は、電話インタビューの際、「ワクチン問題は政治化している」と強調しつつ、「ロシアは、いつも通り、本件を情報武器として、ハイブリッド戦争の中で利用しているのだ」と指摘した。

保健省元次官であるオレクサンドル・リンチェウシキー氏は、「ウクライナが他のところからワクチンを受け取る時期ができるだけ遅くなることに、ロシアの政治的利益がある」とし、ロシアはその間隙にウクライナへと自国産ワクチンを送り込みたがっているとの見方を示した。

また12月、ウクライナは、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)との協議を加速し、2021年2月に190万の同社コロナワクチンを受け取ることで合意した。ニューヨークタイムズ紙の記者は、それにつき「中国の地政学的勝利」とみなせると指摘している。

写真:Getty Images