ゼレンシキー大統領、バイデン次期米政権への期待に言及=NYTインタビュー

ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は、米国はウクライナ東部ドンバス情勢解決協議やクリミア・プラットフォームに参加することで協議プロセスを強化できるとの考えを示した。

米ニューヨークタイムズ紙がゼレンシキー大統領のインタビュー(12月16日実施)を掲載した。ウクライナ大統領府がインタビュー内容を掲載した

大統領は、「状況はおぞましいものであり、だからこそ私は公正にこう言う。『ウクライナがなければ、ドンバスは死ぬ』と。私は、米国は非常に大きな影響力を行使できると考えている。私は、ノルマンディ・フォーマット(編集注:独仏宇露4国からなるウクライナ・ロシア情勢協議フォーマット)における私たちの協議フォーマットの協議をバイデン大統領が強化できると思っているのだが、それは、彼がウクライナ・ロシア問題をよく理解しているからである。第二には、彼が欧州の安全保障について話してきたからだ。そして第三に、私たちは戦争の終わりを話すだけでは不十分だと考えているからだ。その後(戦争終結後)どうすべきか? その時は、ドンバスの再統合が必要となる」と発言した。

大統領は、ドンバスの再統合には、強力な企業、技術、安全、資金が必要だと指摘した。

大統領はまた、「私たちは、ドンバス地方への自由経済圏を(設置することを)考えている。そこにビジネスが入るよう、ある種の優遇措置を設けるためだ。そこでも重要な役割を担い得るのが米国である」と発言した。

大統領は、米国は現在世界の安全の保証者であり、強力な戦略プレイヤーであることから、前述のような行動がドンバス戦争の終わりを早め、ドンバス再統合を開始させることになるとの考えを示した。

同時に大統領は、クリミアに関しても「米国抜きでは何もできない」と述べつつ、またクリミアとその脱占領問題がノルマンディ・フォーマットやミンスク諸合意の議題には含まれていないことを喚起した。その上で大統領は、「私たちは、現在『クリミア・フォーマット』を作っている。そして、言うまでもなく、クリミア返還と脱占領をする上での鍵となるプレイヤー国家、鍵となる保証国にそのフォーマットに加わって欲しいと思っている。クリミア返還、私たちの領土返還の保証国だ。米国は、その方向でのリーダーになり得る」と強調した。

大統領は、6年間にわたりクリミア脱占領問題は「宙に浮いていた」と表現し、欧州と米国は可能なことを「選択的に」行っていただけであったと指摘した。その上で大統領は、脱占領のためには、それに向けた全ての行動のロードマップを定め、諸国からなるクリミア脱占領連合がその行動を実行していかなければならないと指摘した。

加えて大統領は、トランプ米政権下で任命されていたカート・ヴォルカー米国務省ウクライナ問題特別代表のことを喚起しつつ、「ある時、私たちは残念なことに、ヴォルカー米ウクライナ特別代表を失った(編集注:ヴォルカー氏は、2019年9月トランプ米大統領弾劾プロセスに加わるため、同職を辞任している)。彼は、非常に重要な『接続』の仕事を行っていたのであり、ウクライナとも対話し、ロシア連邦とも素晴らしい対話を行い、全ての情報を得ていた。私は、そのポストは失われてしまったが、しかし、そのような特別代表ポスト、あるいはそのような機関が(バイデン政権下でも)設置されるべきだと思っている」と発言した。

同時に大統領は、同職への人選は誤ってはならず、必要な行動の取れる、ウクライナのメンタリティを理解した人物を選ぶべきだと強調した。

また大統領は、「バイデン(次期)大統領は、ウクライナと多くの仕事をしてきたのであり、あらゆる最高のチャンスを有している。彼は、実践家であり、(ウクライナの)メンタリティを理解しており、(ウクライナ国内)改革に関する重要な局面を理解している」と発言した。

大統領は、バイデン次期大統領は、ウクライナの国内改革を把握しており、偽情報と実際の情報を区別することができると思うと指摘し、またウクライナと米国の関係を引き裂かないことが重要だと強調した。

大統領は、「実際に何が起きているかを理解することが重要だ。そのため、私は、米国次期大統領が、ロシアの現実、ウクライナの現実、欧州の現実を理解することで、全ての紛争課題解決の大きな機会を生み出すと思っている」と発言した。