クチマが去り、デムチェンコが代わりに来る。「ミンスク」の変化は見えない。

ミンスクにおけるレオニード・クチマ元大統領の活動は、間違いなく効果的ではなかった。しかしながら、それは彼個人の罪では、全くない。

10月2日、ミンスク(ベラルーシ)でのドンバス問題をあつかう三者コンタクト・グループ(TCG。編集注:ウクライナ・欧州安全保障協力機構(OSCE)・ロシアの3者からなるグループ)会合で、ウクライナ代表のレオニード・クチマ元大統領が、これまでの共同作業につき、同僚達に感謝を伝えた。その数日前から、彼は、TCGでの活動を終えることを述べていた。

言うまでもなく、すぐにこのような疑問が生じる。その活動は、うまくいっていたのか。そして、誰が彼の代わりになるのか。

同時に、社会には、この質問の答えへの大きな関心は、生まれなかった。それは、全く理解できることである。なぜなら、クチマは、すでに長い間、退役兵だと思われている人物であり、ウクライナ政治のその影響力は、まったくもって退役兵相応のものだと考えられているからである。そして、TCGへの業務への社会の関心もまた、複数の自明の理由から、極めて低い。

ミンスク諸合意(編集注:2014年9月のミンスク議定書とミンスク覚書、2015年2月のミンスク両合意履行のための方策パッケージを指す)の締結後の最初の1年は、まだ、「ミンスク・プロセス」は、(諸合意により)宣言されている目的である「ドンバスの平和」を達成するものであり、ミンスクでのTCGの作業は本当に重要なもので、だからこそ緊迫しているのだという、希望と幻想が存在していた。ロシアもウクライナも、それぞれの解釈するミンスク諸合意を実現することに期待をしていたし、積極的にそれを求めていた。それに呼応し、社会(市民、専門家、マスメディア、政治専門家)も、関心を持ってTCGの作業をフォローしていた。

しかし、情熱と関心は、徐々に弱まっていき、現在、それらは実質的に消滅している。現在、「ミンスク・プロセス」は(国の)最も高いレベルで強固に押しとどめられており、「ミンスク諸合意」は外観のみ妥協の姿をしているだけであり、実際には、ウクライナにもロシアにも妥協するつもりはなく、そのため、TCGで著しい結果を得ることは原則的に不可能なのだということは、すでに誰の目にも明らかとなっている。被拘束者の交換や、武力衝突ラインでの一時的停戦の厳格な維持といった、そこまで困難でないと思われている問題においてすら、成果は得られていない。このような状況下では、TCGの1者であるウクライナの代表が交代したところで、何の意味もないし、何に対しての基本的に影響を与えようがない。ところで、TCGでは、ロシアとOSCEも自ら代表者をこれまでに既に交代している。

レオニード・クチマのミンスクでの活動が効果的であったか否かを考えること、ましてやそれを議論することは、全くもって意味がないように思える。効果的でなかった理由は、ウクライナはTCGの活動に満足することができないからとしか言いようがない(ウクライナ領ドンバスは侵略国により部分的に占領されており、武力衝突は継続しており、捕虜・人実は解放されていない)。しかし、レオニード・クチマに個人的な罪は一切ない。何らかの協議で、ロシアと対話したり反論を受けたりする中で、外交官や政治家の専門的能力によって、ロシアの立場を変えられると期待することは、ナイーブである。ロシアへの言葉(たとえそれが非常に専門的なものであれ)は効果を持たない。ロシアは全く異なる根拠の前で妥協するのである(例えば、制裁である)。

ところで、ロシアのリーダー達との対話において多くの経験を持つクチマ自身は、最初から、TCGの作業について、特別な幻想を抱いてはいなかった。加えて、同氏は、ウクライナ代表の座を去るという自らの願望については、公の場でも、何度となく口にしていた。おそらく、彼が今回去ったのは、年齢や疲労からだけではないのであろう。

クチマの後任の名前は、次期TCG会合が開催される10月16日が近くなれば、ポロシェンコ・ウクライナ大統領が名前が告げることになる。ただし、そこに陰謀的なものはない。皆が、専門的外交官である、ルスラン・デムチェンコの名を挙げる。元ウクライナ外務省の第一次官(2010~2014年)であり、現在の大統領補佐官である。彼は、外交界の新人でないだけでなく、TCGにおいても既に新しい人物ではない。マーティン・サイディックTCG・OSCE特別代表は、記者が誰がクチマの代わりとなるのかと尋ねた際、クチマはいつもルスラン・デムチェンコ氏を連れていたことに注意を向けていた。

ポロシェンコ大統領が、ロシアの政治家と広く深い個人的つながりを持つ政治家(クチマ)をウクライナ代表に任命したことは、三者コンタクト・グループの始まった当時には意味があった。現在、私たちはすでに、ミンスクにおいて突破口が開けることがないこと、それゆえ、元大統領の個人的政治経験が必要ないことをわかっている。TCGの活動は、繰り返されるだけのプロセスに変貌したのであり、そのような仕事のためには、現在、専門的外交官だけが必要なのである。

ユーリー・サンドゥル、キーウ(キエフ)