児童向けクリミア史の教科書が完成

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18日、児童学習用教科書「クリミアとクリミア・タタール人の歴史」の出版プレゼンテーションが開催された。

市民団体「クリミア祖国」のアニフェ・クルテセイトヴァ代表がウクルインフォルムにてプレゼンテーションを行った。

クルテセイトヴァ氏は、「クリミアにおける悲劇的な出来事の後にクリミア・タタールの人々が大陸側ウクライナへと移り始めた頃、私たちは、私たちの子供たちのために何かしていこうと決めたのだ。(中略)私たちは、市民団体『クリミア祖国』に子供向け文化教育センターを作り、そこで7人の子供たちのための授業を始めた。今では、この授業を受ける子供たちは100人いる。クリミア・タタール語と文学の授業をしており、またクリミア・タタール音楽、文化の実演授業もしている。しかし、クリミア史・クリミア・タタール史の授業を行うことが夢であった。その2年後に、そのような歴史の授業を開くことができた」と発言した。

同氏は、その際、ウクライナに児童向けのクリミア史の教科書が全くないことで、授業を行うことが困難であることに気が付き、歴史家とともに今回発表する教科書を作ることに決めたのだと述べた。

同氏は、「私たちは、2年間、歴史家やウクライナ教育省と相談しながら執筆した。そして半年前、ウクライナ文化基金が私たちのプロジェクト『クリミア・タタール:歴史、文化、芸術』へのサポートを決めた。そのプロジェクトの中で、私たちは、最初の教科書『クリミアとクリミア・タタール人の歴史』を作り始め、教育プラットフォームも作った。そのプラットフォームをベースに、子供たちだけでなく、希望者なら誰でもクリミア・タタール人の歴史を学べるようにした。その際に、この教科書を使っている。この教科書は、私たちのプラットフォームにてダウンロードが可能だ」と発言した。

クルテセイトヴァ氏は、今回この教科書は1000部印刷されており、500部がウクライナ語、500部がクリミア・タタール語となっていると説明した。

更に同氏は、近く国際団体の支援を受けこの教科書を英語に翻訳する予定だと指摘した。また、印刷部数も増やす予定だと述べた。

「クリミア祖国」のメンバーであるベキル・アブライェフ氏は、クリミア史の授業は毎週土曜に行われており、クリミアからの国内避難民の子供だけでなく、クリミア/クリミア・タタール人の歴史に関心のあるウクライナの大人も参加していると指摘した。

アブライェフ氏は、今回の教科書の執筆は、クリミア・タタールやウクライナの歴史家との協力により「いまだ旧ソ連空間にて広まっている(編集注:クリミアに関する)ソ連・ロシアの伝説的言説を打ち消すことができた」と説明した。

また、同教科書の執筆者の一人である、歴史家のグリナラ・ベキロヴァ氏は、ウクルインフォルムの記者に対して、今回の教科書は「画期的なもの」と評した。

ベキロヴァ氏は、これまでクリミア/クリミア・タタール人の歴史を子供向けに書いた教科書は全くなかったため、今回の出版は独特であり画期的であると述べた。また、同氏は、クリミアとクリミア・タタール人は不可分の概念であるとし、クリミアの歴史をはじめから、クリミア・タタール民族の出現、クリミア・ハン国の歴史から現代までの出来事を読むことにより、それは理解できると指摘した。

加えて同氏は、同教科書は、「クリミア・タタール民族の政治的主体性を取り戻す」ことへの知的貢献なのだと発言した。

同氏は、「クリミア・タタール人は、ウクライナの先住民族であり、国家を生み出してきた民族である。現在様々な問題があるが、それでも私は、クリミア・タタール人は自らの政治的主体性を取り戻す道にあると期待している。私たちは皆、クリミア・タタール人が自らの歴史的故郷で自治を得られることを支持している。発表された教科書は、そのことへの私たちの知的貢献なのだ」と強調した。

共同著者の歴史家アンドリー・イヴァネツ氏は、今回の教科書は、クリミア・タタール人の新しい世代への歴史的遺産というだけでなく、ウクライナ社会が国内の先住民族の一つであるクリミア・タタール人についてよりよく理解することを助けるものだと指摘した。

同氏は、今回の教科書はすでに学会誌「ウクライナ学」にて書評が掲載されるなど、学会でも肯定的に評価されていると指摘した。

また同氏は、今回の出版にて、ウクライナにてクリミア/クリミア・タタールの歴史を見る「新しい視点」が形成されることを助けるものだと思うと発言した。