ゼレンシキー氏の大統領選出は露プーチン政権の崩壊をもたらすかもしれない=英記者

イギリスの著名な記者エドワード・ルーカス氏は、ヴォロディーミル・ゼレンシキー氏のウクライナ大統領選出は、ロシアが拡散するウクライナに関するプロパガンダを破壊するだけでなく、ロシアのプーチン政権自体の崩壊をもたらす可能性があると指摘した。

30日、ルーカス記者が英スタンドポイント誌ウェブ版にて「二人のウラジーミル」と題する論考記事を掲載した。

ルーカス氏は、論考記事の冒頭にて「ヴォロディーミルは、ウラジーミルの崩壊をもたらすかもしれない…。ヴォロディーミル・ゼレンシキー氏のウクライナ大統領への選出は、ウラジーミル・プーチン氏と段々とがたついてきているロシア政権にとっての悪夢である」と書いている。

同氏は、何よりまず、ウクライナでは全く予想のできない結果を生み出すことになった、本当の選挙が行われたのだと指摘している。何故なら、当初、大統領選に勝利するのは、ユリヤ・ティモシェンコ氏かペトロ・ポロシェンコ氏だと思われていたのだが、選出されたのは、テレビドラマで普通の市民から予想外に大統領になる人物を演じた、41歳のゼレンシキー氏であったからだと説明されている。

ルーカス氏は、ゼレンシキー氏の勝利の前では、不動産事業で成功してからホワイトハウスに入ったドナルド・トランプ米大統領のキャリアすらも大人しいものに見えると指摘している。

同氏は、一方で、ロシア連邦では政治システムは非常に注意深くコントロールされており、政権の意外な変化を期待することは不可能であると喚起し、「プーチンはサプライズが好きだが、有権者からのサプライズが好きなわけではない」のであり、選挙で現政権が敗北することなど彼らには考えられないのだと説明した。

また、同氏は、「同時に、ポロシェンコ大統領にも然るべき評価を与えるべきだ。彼は、勝利のために結果を改ざんすることはなかった。彼は、フェアかつ正直に敗北したのだ」と指摘した。

ルーカス氏は、自由な人々が真の選挙において効果的な選択をすることができる、という兆候自体が、プーチンにとっては悪いものなのだと述べる。このような兆候は、ロシアがウクライナに関して拡散する「ウクライナは、偽の民主主義を抱える失敗国家だ」などといったプロパガンダ言説を破壊するのだという。

その上で、同氏は、「実際には、ウクライナは抵抗し、ロシアを制止したのだ。ウクライナの経済、社会、政治システムは、大きな圧力を受けたが、ウクライナは屈しなかった」と指摘した。

同氏はまた、ユダヤ系のゼレンシキー氏が大統領になったことで、ロシアによる「ウクライナはファシストの臨時政府で、ナチス的チンピラを野党への攻撃に用いられている」というような伝説的プロパガンダも破壊することになっていると説明する。

ルーカス氏は、「実際にはそうではないことは明白だ。最も愛国的なロシア国民ですら、今、自国の政権幹部がウクライナについて嘘をついてきたことに気がついている。彼らもまた、なぜ、ウクライナ人だけ自由に支配者を選択できて、ロシア人は選択できないのだろうか、と疑問を抱くかもしれないのだ」と指摘した。

同氏は、ゼレンシキー氏は、大統領選挙に勝ったことで、プーチン露大統領以上に強力なマンデートを現在有していると明言する。さらに同氏は、「そして、ゼレンシキー氏は、更に大きなメッセージも持っている。自由、合法性、尊厳、脅威ではなく可能性としての外の世界との統合への姿勢。これらの強力なカクテルである。他方で、プーチン政権が自らの国民に提案しているのは、停滞、パラノイア、孤立である」と強調した。

ルーカス氏は、元テレビの人気者であったゼレンシキー氏は、KGB出身のプーチン氏より高いコミュニケーション能力を持っていると明言し、その例として、プーチン氏がドンバス地域住民に露国籍を付与する大統領令を発出した際のゼレンシキー大統領の返答を指摘した。

同時に、ルーカス氏は、ゼレンシキー大統領の前には複数の大きな挑戦が横たわっていると指摘する。ゼレンシキー大統領は政治の経験がないこと、同大統領は議会や、しばしば汚職的利益と絡み合う官僚的利益ネットワークと対立していることが指摘されている。同氏は、「彼の前には、外的・内的問題が挑戦として横たわっている。さらに、クレムリンは、経済的・軍事的圧力を強めるかもしれないし、ウクライナ国内に抱く影響力を行使してくる可能性もある」と説明した。

ルーカス氏は、「まさにそのために、ウクライナの外にいる私たちは、ゼレンシキー新政権をあらゆる可能な手段で支援しなければならないのだ。私たちは、ウクライナを、クレムリン帝国に対する要塞として見ることに慣れてきた。現在、目標ははるかに高い。ウクライナの成功は、ロシアにおける長く待ち望まれた民主主義と自由という夜明けへの到来を告げるのかもしれないのだ」と強調した。