政治専門家、ゼレンシキー・バイデン会談を評価

政治専門家、ゼレンシキー・バイデン会談を評価

ウクルインフォルム
9月1日にワシントンで行われたウクライナ米国首脳会談につき、政治専門家たちは、ゼレンシキー大統領とバイデン米大統領が戦略的パートナーシップの更なる発展への関心を示したとして、肯定的に評価している。

執筆:ミロスラウ・リスコヴィチ(キーウ)

ゼレンシキー大統領率いるウクライナ代表団の訪米が終わった。政府関係者、国会議員、ビジネス界代表者などといった、様々な人々の会談が行われた。しかしながら、訪米において最も重要であったのは首脳会談である。同会談は、予定されていた1時間ではなく、2時間強行われ、両国戦略パートナーシップに関する共同声明が発出された。

その共同声明は、内容面から5つの方向性にまとめることができる。

・ウクライナの安全保障・防衛能力のサポート、対ロシア侵略対策、欧州大西洋願望(北大西洋条約機構(NATO)加盟方針)支持、防衛分野改革

・民主主義・法の支配支持:裁判制度改革、汚職との闘い(ウクライナにとっての「宿題」とされる、特別汚職対策検察(SAP)の新長官選出、国家汚職対策局(NABU)関連の法的問題の解決、中央銀行独立性の保護などの強調)、人権の推進

・「ノルド・ストリーム2」の影響への対策、温室効果ガス排出削減、エネルギー分野への投資誘致

・経済分野の協力拡大

・新型コロナウイルス感染症世界的拡大への対策、対ウクライナ人道支援

また別途、同声明に記載された支援の額も指摘すべきであろう。ウクライナは米国から、改革実施目的に4億6300万ドル、安全保障支援に6000万ドル、東部地域人道支援のために4000万ドル、COVID-19対策のために1280万ドル、ウクライナへの製品・サービス輸出オペレーションを目的に300万ドルの支援を受け取る(さらに、訪米初日にはエネルホアトム社とウェステイングハウス・エレクトリック社の覚書にて、フメリニツィキー原子力発電所最大5つの発電ユニット建設(最大300億ドル)に関する署名も行われている)。

共同記者会見は行われなかったが(そもそも予定されていなかった)、ゼレンシキー大統領は記者団の前に現れ、米大統領との会談は「生産的で建設的な雰囲気の中」行われたと強調した。

大統領は、会談後「(編集注:大統領同氏の間で)化学反応が生じたかどうかはわからない。しかし、会談が1時間の代わりに2時間行われたことは、双方が対話とその結果に関心があることを示している。概して会談は適切で、生産的であったし、常に『太陽の照らすような雰囲気』だったというわけではないが、しかし当たり前の男同士の対話だったと思っている」と話している。

ゼレンシキー大統領はまた、バイデン大統領との1対1の会談時の主要議題についても言及した。具体的には、ウクライナのNATO加盟支持についての話(時期への言及はなし)、ノルド・ストリーム2を通じてウクライナに対してエネルギー面での危険が生じた場合の対露制裁発動の保証、さらに、クリミア脱占領、黒海地域安全保障、被拘束者、米国のドンバス情勢解決協議への参加である。

まとめると、一部の専門家から不安な予想が聞かれてはいたが、蓋を開けてみると、米国の対ウクライナ議題に変化はなく、むしろ以前より充実していることが明らかとなった。それは間違いなくプラスである。

ウクライナの政治専門家は、今回の両国大統領の会談のどの点に注目し、どの点が重要だとと考えているのだろうか。ウクルインフォルムが尋ねた。

ヴォロディーミル・フェセンコ政治専門家(政治分析センター「ペンタ」所長)

フェセンコ氏は、ウクルインフォルムに対して、「無論、今回の訪米2日目は、バイデン大統領との会談が最も重要なイベントだったわけだが、他の重要な行事も見逃すべきではない。例えば、国会議員との会談も非常に重要だった。確かに、ゼレンシキー大統領のワシントン訪問時期が、あたかもあえて米国議会が夏季休暇に入っている時期に合わせられたかのような、陰謀論的な話が多く聞かれた。しかしながら、米議会のウクライナの友人たちは、それを苦とせず、ゼレンシキー大統領と会談したのだ」とコメントした。

同氏は、米議員との会談は、「ノルド・ストリーム2」プロジェクトへの反対のような問題で、ウクライナが米議会において主要2党から支持を受け続けていることを改めて示すことになったと指摘しつつ、「米国の対ノルド・ストリーム2制裁のみが、ロシアを合意とその遵守に導き得る」と強調した。

バイデン大統領との会談について、フェセンコ氏は、何よりまず会談実施時間に注意を向け、「予定の倍であった。そのこと自体が多くを物語っている。比較すれば、ポロシェンコ前大統領とトランプ米前大統領が2017年6月に行った会談は、合計20分だった。これに対して、今回は2時間も会談したのだ。それは、双方が二国間関係のあらゆる内容をしっかりと協議することに関心を抱いていたことを意味する」と指摘した。さらに同氏は、ゼレンシキー大統領の会談への評価から判断するに、協議は率直で、いくつかの問題では、おそらく双方は異なる評価を有していたのだろうと指摘し、「しかし、共通の立場の方がはるかに多い。重要なことは、双方が戦略的パートナーシップをさらに発展させることに関心を抱いていることだ」と発言した。

共同声明について、フェセンコ氏は、「声明本文も、トランプ時代からの3年間機能していなかった戦略的パートナーシップ委員会の活動再開の決定も、両国が戦略的パートナーシップ発展に関心を抱いていることを示している。ところで、同委員会の活動再開は、ゼレンシキー大統領の訪米当初から、ウクライナの専門家と米国の専門家が(とりわけ米国側に対して)呼びかけていたものである」と説明した。

第1の優先課題は対ロシア侵略であった。
第1の優先課題は対ロシア侵略であった。

フェセンコ氏は、声明における最優先課題がロシアの侵略への対抗となっていることを指摘し、同声明にて「具体的な方向性と同分野の協力の形態が定められた」とコメントした。

第2の優先課題は、同氏は、民主主義、法の支配、人権だとし、特に裁判改革と汚職との闘いだと指摘した。「この点では、汚職対策機関の独立と影響力を維持することで具体的な主張が形成されている」と強調した。

声明における第3の優先課題は、エネルギー安全保障と気候変動だったと指摘された。

フェセンコ氏はまた、対戦車ミサイルシステム「ジャベリン」やその他の殺傷性・非殺傷性防衛装備を含む総額6000万ドルの新しい安全保障支援パッケージについても喚起した。また、同氏は、ウクライナの経済成長のための具体的な財政プロジェクトも指摘し、「合衆国輸出入銀行(Ex-im Bank)の初期サポート総額は30億ドルだが、これは今後増える可能性がある」とコメントした。

ペトロ・オレシチューク国際政治専門家

オレシチューク氏は、まず「ノルド・ストリーム2」について指摘し、ロシアが同ガスパイプラインをウクライナに対する武器として利用した場合に米国が関連制裁を発動するということで、バイデン大統領が個人的に義務を負ったことを喚起した。オレシチューク氏は、「おそらくそれは、ウクライナで期待されていたほど、確実なものではない。その問題は提起されたのだが、双方の完全な共通の立場というものは達成されなかった。その声明は、そのことを示している」との見方を示した。

同氏は、「ノルド・ストリーム2を止めるというウクライナの優先課題が結果を得られなかったのは明白だ。同様に、バイデン大統領には、ウクライナが米政権の決定を賞賛するということが大切であったが、その優先課題もまたウクライナからの一義的な賞賛は得られなかった。その結果、どうなったか。私は、誰も完全には満足しない、条件付きの妥協的決定、しかも最終的なものでなく暫定的な決定を達成したのだと思っている。私たちは、その問題に積極的に注意を向けることはせず、米国は、ロシア連邦が攻撃的行動をとった場合、制裁政策を強めることが義務付けられる、というものだ」と指摘した。

また共同声明につき、同氏は、「同声明はいくつかのブロックに分かれている。そのブロックの一部がウクライナの提案によって加えられたことは明白である。具体的には、支援、協力、とりわけ軍事分野の戦略的協力、ウクライナのNATO加盟関連の優先課題の承認など(がウクライナが提案したもの)だ」と指摘した。また、「その他は、米国側の要求だ。具体的には、裁判改革、汚職対策機関の影響力・独立維持といった、改革継続の必要に関するものである。そして、残りは一定の共通の問題、米国が力を入れている分野の中でウクライナ側が接点を見つけようとしている分野、すなわち、環境や地球温暖化の否定的影響への対抗といった内容である」と説明した。

同氏は、総じて同共同声明は、全体として予想されていた内容のものだったと指摘した。つまり、同声明は、戦略的パートナーシップ、協力、ウクライナの欧州大西洋願望(NATO加盟願望)の承認、改革方針の維持、といったウクライナ・米国関係の現状を宣言するようなものだったというわけだ。

その上で同氏は、「いずれのものも、これまでに私たちが何度も見聞きしてきたものである。しかし、私は、ゼレンシキー大統領と前任者と異なる重要な詳細について指摘したい。ポロシェンコ前大統領であれば、このような状況で、巨大な勝利を達成した、全てのウクライナの願望が信じがたいほどに支持された、などとあちこちで叫び、バイデン氏の最高の友人になった、家族ぐるみで友情を育むことを決めたなどとまで言っていただろう。これに対して、ゼレンシキー大統領は、全て詳細かつ控えめに、高ぶることなくコメントしていた。私は、それを正しいと思っている。それが真の現状を反映させているからだ。つまり、訪問は、公式訪問ではなく、実務的なものであり、ターニングポイントでも、決定的なものでもなかったということだ」としつつ、「同時に、今回の訪問は、ウクライナと米国の間の真剣なパートナー関係構築の道を新たに一歩進めるものでもあった。結果として、今後発展させる可能性のあるいくつかの傾向が生じているのである」と強調した。

ヴィラ・コンスタンティノヴァ国際政治専門家

コンスタンティノヴァ氏は、概して今回のウクライナ大統領訪米は肯定的に総括できると指摘している。同氏は、戦略的パートナーシップ共同声明から、両首脳の会談はかなり成功したと評価できると述べ、「理解すべきは、米国大統領との協議の結果として発表される声明はいかなるものであれ、その前に双方のチームがかなりの準備作業を行っているということだ。今回、受け入れ国側の外交プロトコルの要件と慣習、二国間関係の精神、現状の問題などに注意が払われている。声明は、両国の利益の面でバランスが取れている」と発言した。

同氏は、声明本文に関して、安全保障・国防問題、民主主義・法の支配問題、エネルギー安全保障と気候変動、コロナ危機後の経済回復、人道問題といった、両国間の間にある幅広い議題が反映されていると発言した。また、「同時に、私は、今回の訪米時に署名されたその他の文書とセットで見たいと思う」とも指摘した。さらに同氏は、ウクライナ米国関係をウクライナだけでなく地域における安全保障、民主主義、人権にとっての基礎として認めたという事実事態が、米国がパートナー国であり続けていること、領土一体性回復の闘いと改革実現においてウクライナが期待をかけることのできる相手であることを示すシグナルとなっていると発言した。その上で、同氏は、「一例として、声明には、クリミア・プラットフォームへの支持、ノルマンディ・フォーマットの努力への支持が見られる」と指摘した。

同時にコンスタンティノヴァ氏はまた、声明が言及している戦略的国防枠組協定にも特別な注意を向けている。同氏は、「それは、私たちの国にとっての安全保障の国際的保証を強化する上で大きな貢献となるものだ。私たちの欧州・大西洋統合願望への支持と米国により安全保障支援に関する義務が、中期的展望で私たちの防衛能力と今日人生を強化することに繋がる」と強調した。

同氏はさらに、声明にウクライナ国内改革への堅固なサポートが記載されていることを非常に重要だと指摘し、「改革継続、特に裁判改革、治安機関システム改革は何よりもウクライナ社会の利益に適ったものである。私は、これは私たちの国の強靭性の市民部分の強化への道の前進と呼び得ると思っている。それは、ロシアの侵略を抑制し、自由、民主主義、人類一般の価値を防衛するものである」と発言した。同氏は、この点では、最高会議が関連の法律を採択することが重要となると指摘した。

加えてコンスタンティノヴァ氏も、ノルド・ストリーム2への対抗問題に着目した他、脱炭素経済への道を開く、両国間の戦略的エネルギー・気候対話の開始にも注意を向けた。同氏は、「私たちは、ウクライナ繁栄のためにこのオプションを利用すべきだ」と強調した。


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