ウクライナ各地で汚職対策機関権限縮小法に反対する抗議集会開催

ウクライナ各地で汚職対策機関権限縮小法に反対する抗議集会開催

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ウクルインフォルム
ウクライナでは23日、首都キーウや全国各地の町で、22日に最高会議(国会)が採択し、ゼレンシキー大統領が署名した汚職対策機関(NABUとSAP)の権限縮小法に反対する抗議集会が再び開催された。

ウクルインフォルムの記者が伝えた。

首都キーウでは、2夜連続で中心部のイヴァン・フランコ記念劇場の前の広場にて、市民が、汚職対策機関権限縮小法の撤回を要求している。同法は、第二読会の前に迅速に修正が加えられ、国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察(SAP)の権限を縮小することで、事実上その独立を剥奪する内容となっていた。

キーウの抗議集会 写真:パウロ・バフムート/ウクラインフォルム

多数の抗議者たちは、「恥を知れ」「NABUとSAPから手を引け」「完全撤回」「それはただの裏切りだ」と叫んでいる。

ウクルインフォルムの記者が活動家たちに尋ねると、彼らは強固で独立した国家機関が存在し、正義があり、処罰が不可避となることが保証される国に住みたいと答えた。また、彼らは、今回の集会を通じて、ウクライナの欧州・大西洋統合路線を守っているとも述べた。

また、キーウの他、ウクライナのハルキウ、リヴィウ、オデーサ、ドニプロ、ザポリッジャ、テルノーピリ、ジトーミル、クロピウニツィキーなど、各地の都市でも集会が開催された。

東部ハルキウでは、約400人が抗議集会に参加し、そのほとんどが若者であった。参加者の中には、ハルキウの詩人で軍人のイヴァン・セニン氏や、市内で著名な建築家で高齢者や身体の不自由な人のための慈善シェルターの創設者であるオリハ・クレイトマン氏、芸術家で文化研究者のコスチャンティン・ゾルキン氏、そしてロシア・ウクライナ戦争の退役軍人などの姿が見られた。人々はハルキウ中心部、地下鉄駅「ウニヴェルシテート」の出口付近に集まり、空襲警報が鳴った場合にはすぐに避難できるよう準備していた。

ハルキウにおける抗議行動 写真:ユリヤ・バイラチュナ/ウクルインフォルム

ハルキウの参加者たちは「NABUから離れろ」「法案に拒否権を」「ウクライナはロシアではない」と叫び、またウクライナ軍を応援するスローガンも口にしていた。

兄が行方不明になっているハルキウ市民のハリナ・コリスニチェンコ氏も今回の抗議集会に加わった。コリスニチェンコ氏は、ウクルインフォルムの記者に「私たちはEUに向かっているのに、実際にはたくさん後退している。この法律の採択が、国の将来の生活に影響を及ぼすと私は確信している」と語った。

抗議参加者のアナスタシヤ氏は、現在の状況を2013〜2014年と比較した上で、「もし今この法律が残せば、それは私たちが戦ってきた相手であるロシアの方に向かって進んでいることを意味してしまう」と述べた。

ハルキウ市民のドミトロ氏は、若者は法律を理解していないだとか、政治勢力に利用されるおそれがあるだとかいう、若者に対する非難は不正義だと述べた。その際ドミトロ氏は、「それは全くもって不正義だ。全面侵攻が始まって以来、若者たちは国の歴史や政治に関心を持ち始め、ウクライナ軍を支えている。知識のレベルもはるかに上がった。今の若者たちは、変化のメカニズムなのだ。私はここに、自分の意思でいるのであって、どんな外の勢力にも操られていない」と強調した。

市民団体「ハルキウ汚職対策センター」の共同創設者であるイェウヘン・リシチキン氏は、期待していたよりもはるかに多くの抗議者が集まったと述べた。同氏は、「警察が(編集注:抗議集会の情報を提出した際に)尋ねたので、私たちは50~200人だと答えた。若者たちが加わったのは、このような形で正義が歪められていることを彼らが理解しているからだ」と述べた。

抗議集会開始から1時間後、参加者はハルキウのスムシカ通りをオペラ劇場まで向かって行進した。

中部チェルカーシでは、同法に反対する抗議集会のため、市の中央広場に数百人が集まった。

プラカードの中には、ドネツィク州とルハンシク州の旗が注目を集めていた。ルハンシク州出身の女性は、「他者(編集注:ロシア)からは逃げたけど、身内(編集注:国内の汚職者)からは逃げられないのか?」と書かれた手作りのプラカードを掲げていた。

西部イヴァノ=フランキウシクでは、抗議行動が2日連続で行われた。23日は、数百人の若者が抗議行動に参加した。彼らは「NABUとSAPを元に戻せ」「自由な国、自由なNABU」といったスローガンを叫んでいた。

南部ミコライウでは、今次採択の法律に抗議するため、数十人の若者が中央大通りからソボルナ広場まで行進した。若者たちは「政権の汚職反対」「法案第12414に拒否権を」「ウクライナを殺すのはロシア人と汚職だ」というプラカードを掲げていた。

抗議集会は平和的に行われ、市議会前でしばらく「私たちは民主主義のためにいる!」「汚職反対!」と叫んだ後で解散した。

南部ザポリッジャでは、今時法律に反対する抗議集会のため、市の中心部のシェウチェンコ大通りに約200人が集まった。

ザポリッジャの抗議集会 写真:オリハ・ズヴォナリョヴァ/ウクルインフォルム

参加者の一人、ヴァレリヤ・モロゾヴァ氏は、「私は民主的価値観を防衛したい。この法律が最高会議によって正常な手続きを遵守せずに非常に迅速に採択されたことが、個人的に警戒心を抱かせる。人々はNABUとSAPの独立を守るために集まったのだ。汚職対策機関は、汚職を捜査されている者から独立していなければならない」と述べた。

退役軍人で元捕虜のヘンナジー・ハルチェンコ氏も抗議行動に参加した。ハルチェンコ氏は、「もしこれがシステムの、社会の動揺だと言う者がいるなら、それは違う。これは浄化なのだ。これは社会を団結させている。残念ながら、権力は声を聞いていない」と指摘した。

なお、ザポリッジャでは、抗議行動開始から数分後、市内に空襲警報が発令された。主催者は拡声器で、安全のため避難所に行くべきだと告げた。しかし、大半の参加者はその場に残った。ある参加者は「私たちはミサイルは怖くない。私たちが怖いのは汚職だ」と叫びm他の参加者もそれに続いた。集会では警察が秩序維持の活動に当たっていた。

参加者たちは、翌日も同じ場所に集まることで合意していた。抗議行動は1時間以上続いた。

中部ヴィンニツャでは、約200人が抗議行動に参加した。参加者たちは、市内の中央通りであるソボルナ通りの両側に、手作りのプラカードを掲げて並んだ。プラカードには「戦え、さすれば勝利せん」「第12414号、簒奪反対」「ネイションの花は、こんなことのために命を捧げているのではない」と書かれていた。

ヴィンニツャの抗議集会 写真:アントニナ・ムニフ/ウクルインフォルム

集会の共同主催者であるヴァレリヤ・クジンシカ氏は、ウクルインフォルムの記者に対して、この抗議集会には、ソーシャルメディアで集まった若者たちが参加していると述べたクジンシカ氏は、「私たちは、どんな団体や政党にも関係なく集まった。主にヴィンニツャの活発な若者たちだ。大学生もいる。彼らは、この法律の採択に対する不満を表明し、起きたことへの社会の注目を集めるために集うという私たちの呼びかけに応じた人々だ。私たちは、この法律の無効化を求めている。どのような方法で無効化するかは、私たちが決定することではない。もしかしたら憲法裁判所を通じてか、あるいは前回の変更を無効化する新しい法案を通じてだろう」と語った。

中部クロピウニツィキーでは、抗議集会に約50人が参加した。抗議者たちはタラス・シェウチェンコ記念地域児童図書館前の広場に集まった。集会には、市民、活動家、ボランティア、市民団体の代表者たちが加わった。

クロピウニツィキーの抗議集会 写真:ミロスラヴァ・リパ/ウクルインフォルム

参加者たちはプラカードを掲げ、スローガンを叫んでいた。抗議は平和的に、警察の立ち会いのもとで行われていた。

南部オデーサでは、デリバシウシカ通りで300人以上の市民が今次法律に反対する抗議活動を開催した。

オデーサにおける抗議集会 写真:ニーナ・リャショノク/ウクルインフォルム

市民たちは、「汚職は殺す」「恥を知れ」「民は反対だ」と叫んだ。

中部ジトーミルの中心部コロリョーヴァ広場には、今次法律に反対する抗議集会に約200人が集まった。

ジトーミルにおける抗議集会 写真:イリーナ・チリツャ/ウクルインフォルム

市民団体「エンドシュピール」の代表である、参加者のオリハ・イヴァニューク氏は、「もしこのような法案が採択されれば、明日にも私たちの情報へのアクセスが閉ざされ、公開データに関する要求への回答が停止され、誰が国外に出国するかを知ることが禁止されるリスクがある。私は自分の国がロシアやジョージアの道を進むことを望まない。私たちは権力に対して、私たちに対してそのようなことをすべきではないことを示しているのだ」と語った。

ジトーミルの抗議参加者たちは、翌日も集会を開く予定だという。

西部テルノーピリでは、約200人が州庁舎と州議会の建物の前に集まり、同法に抗議した。市民は15時から集まり始め、20時まで建物のそばで集会を開いた。

テルノーピリにおける抗議集会 写真:ユリヤ・トムチシン/ウクルインフォルム

集会参加者のオリハ・カラヴァンシカ氏は、「私たちが今日この抗議集会に参加したのは、法律第12414号の採択により、汚職と闘うべき機関が独立を失うことに反対だからだ。また、これら汚職対策機関の設立が、私たちのEU加盟の条件の1つであったことも忘れてはならない。ウクライナ人が両機関の独立を守り抜き、機関が課せられた使命を果たし、人々のために働くことを期待している」と述べた。

人々は「法案第12414に拒否権を」「権力の源泉は民だ」「私は2013年に戻りたくない」「ウクライナを殺すのはロシア人と汚職だ」「汚職反対」と書かれたプラカードを手に持っている。

西部リヴィウでも、前日に続き同法へ反対する抗議集会が開催されている。

写真:アナスタシヤ・スモリイェンコ/ウクルインフォルム

南部ドニプロでは、多くの若者が手作りのプラカードを持って集会に参加した。人々は、今回採択された法律の無効化を要求した。参加者の中には、子供やペットを連れてきている者もいた。

ドニプロの抗議集会 写真:ミコラ・ムヤクシコウ/ウクルインフォルム

これに先立ち最高会議は22日、NABUとSAPの権限を縮小する法律を採択していた

同採択後、クリヴォノスNABU局長は、ゼレンシキー大統領に対して、同法が発効すれば「2つの独立機関、NABUとSAPは、事実上、完全に依存状態に置かれてしまう」ため、同法に署名しないように呼びかけていた

同日、ゼレンシキー大統領は、同法に署名した

同日、キーウ中心部では、最高会議が採択した汚職対策機関の権限縮小を定める法律に反対する市民が抗議集会を開催し、ゼレンシキー大統領に同法案への拒否権を発動するよう要求していた

一部の最高会議議員は、同法の審査について憲法裁判所に申し立てをするために、議員の署名集めを行うと発表している

23日、ゼレンシキー大統領は、ウクライナの法執行機関トップと会合を行ったとし、「私たちは、皆が建設的にのみ働くことで合意した」と発言

一方、NABUとSAPは、同会合の際に両機関トップは、前日採択された両機関権限制限法により、両機関の独立が著しく制限されると表明したと発表した


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