トランプ氏がメドヴェージェフ氏に回答したこと

トランプ氏がメドヴェージェフ氏に回答したこと

ウクルインフォルム
プーチンとそのメドヴェージェフ的分身たちには、平和への準備がない。

執筆:マクス・メリツェル

米国のトランプ大統領は7月30日、ロシア、同国の「死んだ経済」、そして「失敗した」メドヴェージェフを激しく非難した。

トランプは、トゥルース・ソーシャルのアカウントにて、「私は、インドがロシアと何をしているかは気にしない。両国は一緒に自らの死んだ経済を崩壊させればいい。(中略)全てをそのままに、ロシアの失敗した元大統領で、今も自分を大統領だと思っているメドヴェージェフには、自分の言葉に注意するよう伝えよう。彼は非常に危険な領域に踏み込んでいる!」と警告した。

メドヴェージェフ氏の2つの誤り

以前、メドヴェージェフは、リンジー・グラム米上院議員とXで口論になり、彼とトランプを「じいさんたち」と呼んだ。そして、それが誤りだった。なぜなら、トランプが選挙演説でバイデンについて「老年学」的な話題を積極的に利用していたことは、周知のことだからだ。そして、トランプは、「じいさん」という言葉が自分自身に向けられたものとして、憤慨した。その意味で、メドヴェージェフは、本当に危険な領域に踏み込んだわけだ。

メドヴェージェフは、少なくとも黙っておくべきだったが、しかし彼はさらにその領域を「会得」し続けた。このロシアの元大統領は、米国の現大統領に対して、「西側諸国が危険な領域に入り込んでいる。自らのお気に入りの映画『ウォーキング・デッド』、そして幻想的な『死の手』がいかに危険なものとなり得るかを思い出すと良い」と回答したのだ。

メドヴェージェフは、「死の手」について語ることで、ロシアのあらゆる重要な中枢が攻撃された場合には、米国に対して核攻撃が行われることを直接ほのめかしたのだ。「死の手」(Dead Hand)とは、西側諸国においては、大規模な核攻撃の自動制御システムであるソ連及びロシアのシステム「ペリメトル」を指すことで知られる。これは、ロシア連邦の最高指導部や通信システムが完全に破壊されたとしても、報復としての核攻撃を保証するためのものだ。そして、それがメドヴェージェフの第2の誤りだった。なぜなら、トランプは侮辱の他に、自分に向けられる脅迫を許さないからだ。

元ロシア大統領による「書簡」形式の古典

米大統領の言葉は、メドヴェージェフの口撃に対する米国首脳陣からのおそらく初めての公の回答であろう。メドヴェージェフからホワイトハウスのあるじや欧州諸国の首脳に対する多くの侮辱的発言は、回答されないことがほとんどだった。メドヴェージェフのこれまでの「名言」をいくつかを思い出してみよう。

「ジョー・バイデンは老いぼれの精神病患者で、ロシアについてまた何かブツブツ言っている。彼は現実を的確に受け止めることすらできない。典型的な認知症の老人だ」。

「エマニュエル・マクロンはワシントンの膝の上に座りながら、世界の正義について思索するのが好きなおしゃべりだ」。

ボリス・ジョンソンについて、「彼にはピエロの髪型とサーカスの熊の習慣がある。彼の全ての外交政策は、TikTok向けのショーだ」。

「オラフ・ショルツは指針を失ったドイツの小人だ」。

「ヴォロディーミル・ゼレンシキーは薬物中毒のナチスのクズだ」。

G7の首脳について、「彼らは手榴弾を持った猿だ」。

また、メドヴェージェフは、西側諸国に対する自らの姿勢にも言及している。

米国は、「ピンドスタン(編集注:米国を侮蔑的に指す言葉)のアルファオス」。

英国は、「帝国主義に囚われる、老いて無価値な国」。

バルト諸国は、「NATOのロシア恐怖症の子犬たち、自主性のない領土」。

「ポーランドは欧州の凶暴なハイエナだ。いつも吠えているが、噛みつくことはできない」。

実際、メドヴェージェフが書いたり言ったりしていることは全て、2022年11月に、彼の「今日、私たちに敵対しているのは、死にかけの世界の一部である。それは狂ったナチスの麻薬中毒者の集まりだ…彼らには、崩壊した西側の帝国の、退化によってよだれを垂らしてブーブー鳴く多様な子豚や、愚かな俗物たちが付き従っているのだ」という発言の時点ですでに形成されていたものである。

なお、彼は、中国についてさえ、「幻想を抱く必要はない。北京は私たちの同盟国ではなく、自らの利益しか持たないパートナーだ。しかし、今はまだ私たちを必要としている」と書いていた。

ロシアに同盟国がいない理由

これらの発言や他の発言が、ソロヴィヨフ(編集注:ロシアの主要なプロパガンディスト)や他のZプロパガンダ担当者ではなく、現役のロシア連邦安全保障会議副議長という完全に公式な地位にある人物によって発せられているものであることを考えると、ラヴロフ外相の絶望も理解できる。ラヴロフは最近、「史上初めて、ロシアは西側全体を相手に単独で戦っている。第1次世界大戦や第2次世界大戦の際は、私たちには同盟国がいた。今は、戦場に同盟者はいない…」と認めた。

ちなみに、ラヴロフ自身にも烙印を押す場所はない。以下のことを思い出すだけで十分だろう。2022年9月にRete4局とのインタビューで、ゼレンシキー大統領がユダヤ人である中で、ロシアはどうやってウクライナの「非ナチ化」を宣言できるのかという質問に対し、ラヴロフは「ヒトラーもユダヤ人の血を引いていた。それは何も変えはしない。そして賢明なユダヤ人たちは、最も熱烈な反ユダヤ主義者はユダヤ人だとずっと前から言っている」と答えたのだ。

当時、イスラエルのヤイル・ラピド外相は、この発言を「許しがたい、驚くべき発言であり、恐ろしい歴史的誤りだ」と呼び、「ユダヤ人を反ユダヤ主義で非難することは、最低水準の人種差別だ」と指摘していた。ドイツはラヴロフの発言を「不条理なプロパガンダ」と形容していた。米国務省も、これを「最低の形の人種差別。彼らの落ちぶれには際限がない」と指摘していた。

その際、スキャンダルは非常に大きくなり、プーチンはラヴロフの発言について、イスラエルのベネット首相に個人的に謝罪せざるを得なくなったのだ。

プーチンとの交渉する上で、何が問題か

今年4月、RTのマルガリータ・シモニャン編集長は、「ロシアに残された同盟者は、陸軍、海軍、そしてメドヴェージェフのテレグラム・チャンネルの3つだけだ。これら全てはプーチンの指揮下にある」と述べた。現在のロシア軍と海軍の状態については、彼らの最近の「展示会」やパレードが中止されていることが最もよく物語っている。そして、「ロシアの第3の同盟者」については、トランプのメドヴェージェフへの回答は、彼個人だけでなく、語彙の面ですら平和交渉に向けた準備のできていないプーチン一派全体に対するトランプの態度を示すものとなった。ただし、彼ら(プーチン一派)は、その逆(準備ができていること)をずっと主張しているが。

この奇妙な行動について、ウクライナの有名な政治心理学者スヴィトラーナ・チュニヒナは次のように説明している。「プーチンとそのメドヴェージェフ的分身たちは、公には大体このようなことを言っている。『ウクライナ政権は愚か者で、ウクライナの国家性というのは永遠の戦争への招待状だ…。』これが公に言われているのだ。しかし、非公開の場では、プーチンが平和への準備があるというシグナルを送っているという。精神が健全に機能しているなら(彼は一応健康だ)、社会的に受け入れられることと個人的に重要なことの間で葛藤が生じている場合、通常は前者が勝る。つまり、神経症を患う者は、自分が規範から逸脱していると感じ、それによって病気になるわけだ。そういう人にとって正常なのは、公の場では『あるべき姿』を語り、内輪では『本当の姿』を漏らすことだ。」

「しかし、逸脱が組織化された人格にとっては、それは全てが異なる。そういう人格にとって規範は存在せず、それを歪める様々な手段があるだけだ。逸脱人格の者は、自分が規範から逸脱しているという兆候をめったに示さない。むしろ、そのような人物にとっては、世界がおかしいのであり、自分のみが唯一正気を保っているということになる。したがって、そのような人々は、自分の見解、意図、立場を公然と表明することには問題がない。しかし、彼らが交渉に参加する場合は当然、彼らは(狂った)相手の(歪んだ)論理を真似る必要が出てくる。」

「そして、西側の人々はそれをこう読むのだ。『プーチンが公然と好戦的な姿勢を表明しながら、同時に交渉への意欲を示している、彼の【本当の】意図は【平和】だ』と。しかし、それは神経症の論理だ。プーチンのような倒錯者のレベルでは、全てが逆なのだ。彼は、公然と自分の真の意図を提示し、同時に「規範」に合わせるふりをしてみせる。ただし、彼は規範を個人的には、深く誤っており偽りであると考えている。しかしながら、彼はそれを守っていると認める。「そのため、神経症患者と倒錯者の間の交渉は不可能なのだ」と、チュニヒナ氏は結論付けている。

そうであれば、ロシアに平和を強制するための作戦を加速させる必要があるだろう。そして、制裁だけでなく(トランプ氏自身が認めるように「あまり機能していない」ものではなく)、より効果的な手段でだ。なぜなら、ウクライナのゼレンシキー大統領が7月31日に述べたように、「ロシアの首脳陣は精神的に別の世紀、粗暴な暴力と人権や平等を完全に蔑視する時代に、精神的に立ち往生してしまっている。(中略)世界がロシアの体制を変えることを目的としないなら、それは、たとえ戦争が終わった後でも、モスクワが隣国を引き続き不安定化させようとすることを意味する」のだから。


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