ドイツでのロシアプロパガンダの目的は独国民に将来への不安を抱かせること=調査報道
ドイツや複数の国の報道機関が入手した文書からロシアのプロパガンダの目的と手法を分析した。ARD局のニュース番組「Tagesschau」が報じた。
記事は、ロシアのクレムリンと繋がりのある「社会デザイン・エージェンシー(SDA)」の2024年中頃の内部文書を分析したもので、記者たちは「目的は1つ。ドイツ人に未来につきできるだけ怖がらさせることだ」との結論を出している。
SDAを運営しているのはイリヤ・ガンバシゼ氏。この人物は、特に活発な「モスクワ情報戦士」の1人としてみなされているという。西側情報機関は、ガンバシゼ氏のエージェンシーはロシア大統領府の名の下で、直接プーチン氏と彼の戦争のために活動しているとみなしているという。
記事には、「ガンバシゼ氏はその戦争をウクライナの戦場では遂行しているのではなく、彼はどちらかといえば頭脳をめぐる戦いを遂行しているのだ。彼は、かつてプーチンに近かった2023年に殺害されたエフゲニー・プリゴジンと彼の『トロール工場』の後継のような人物だとみなされている」と書かれている。
SDAは、西側諸国の間にロシアのナラティブを消費させ、すでに存在する社会の対立を深めるための土壌を作るべく、世界中の社会の見方や政治プロセスに影響を与えようとしているという。彼らの手段は、捏造と嘘。100人近い「専門家」が複数の国で同時に複数の偽情報キャンペーンの活動をしているという。とりわけ、フェイクニュースとロシア・ナラティブを広めるために風刺画やネットミームを使い、それらはその後ソーシャルメディア上のボットや偽アカウントがさらに拡散するのだと説明されている。
記者たちは、ガンバシゼ氏は、「ドッペルゲンガー」と名付けられたキャンペーンを担当していると考えている。同キャンペーンでは、Süddeutscher Zeitungやシュピーゲルのような著名ニュースサイトを完全に再現したサイトで、ロシアにとって好ましいナラティブや偽情報が拡散されるのだという。
SDAの情報戦の主な標的は、ドイツ、フランス、イスラエル、ウクライナだと指摘されている。
ドイツにおける目的は、不安や恐怖を拡散し、過激政党の立場を強め、ウクライナへの支持を下げ、ドイツと米国を争わせることなどだという。
SDAは、ドイツ国内の抗議運動を注意深くフォローしており、ドイツにとっての弱点を定めて、それを自らのプロパガンダキャンペーンにどのように用いることができるかを分析しているという。
ガンバシゼ氏は、記者たちが入手した宣伝動画において、「戦場は、地球上の人々の頭の中である。その戦場は我々のものであり続ける」と述べている。記者たちはその動画は、本物だとみなしている。
なお、今年9月上旬、米国は、SDAが米国大統領選挙に影響力を行使しようとしているとし公式に非難していた。米司法省は、ロシアの偽情報キャンペーン「ドッペルゲンガー」だと思われる数十のウェブサイトを削除していた。
なお、バルト諸国のニュースサイト「デルフィ」もこの入手した文書により、SDAのラトビアでの情報工作について解説する特集記事を発表している。