制裁 〜ロシアの理解する言語〜

制裁 〜ロシアの理解する言語〜

ウクルインフォルム
プーチン露大統領が得意とする、相手の弱みに付け入る外交戦術は、今回は機能していない。

執筆:ヤロスラウ・ドウホポル(ワシントン)

米国は4月15日、数十の個人・団体からなるロシアに対する大型の制裁リストを発表した。もちろん、そのリストを「地獄の制裁」と呼ぶことはできない。しかし、クレムリンを正気に戻す効果は生み出しているし、無罰の感覚に慣れていたプーチン一派に対して、レッドラインが新たに引かれたとは言えよう。

その制裁はまた、次回の懲罰はさらに厳しいものとなるという、ワシントンからモスクワへの警告ともなっている。また、バイデン大統領がプーチン大統領へ第3国で会おうと提案したことや、バイデン氏のその他の行動を見ると、彼がタフなゲームをしようとしていることもわかる。そして、そのゲームのルールを決めるのは、より強い立場を持つバイデン氏である。

写真:ホワイトハウス
写真:ホワイトハウス

3つの重要ポイント

ジェン・サキ米大統領報道官は4月15日、「私たちは、必要だと思った時には、結果(編集注:ロシアに対する制裁)を科していくし、私たちは、彼らの振る舞いに対応する際に自らを抑制することはしない」と発言した。彼女は、そのような発言で、誰が状況を支配しているかを強調している。

米国が科した新たな対露制裁は、少なくとも3つの重要ポイントを含んでいる。

第一に、制裁リストは過去のロシアの悪意ある活動を包括的にカバーするものだが、バイデン氏の大統領令本文には、ウクライナに対するロシア連邦の現在の激化を看過しないことが直接的に記述されていることだ。それは、ホワイトハウスが現状を相当深刻に受け止めており、様々な手段でウクライナへのサポートを示していることを意味する。

第二に、米国の制裁が、ロシアのプロパガンダメディアが「バイデンの弱さ」を喜び回っていた最中に発表されたことである。バイデン氏からプーチン氏への電話、会談の提案、米国海軍第6艦隊による艦船2隻の黒海派遣の取り止め決定といった外交行動・妥協は、ロシアでは「弱さ」と受け止められていた。

しかし、実際には、バイデン氏は、主導権を握り、ウクライナでの情勢激化を緩和するための条件を生み出した。というのも、プーチン氏は、バイデン氏が彼に貼った「殺人者」とのレッテルを、米国と合意のできる「国のリーダー」に変えることにこそ関心があるからである。バイデン大統領は、その点を利用して、プーチン氏が欧州で会談することに合意するよう最大限工夫したのである。そして、少なくとも、その会談への準備が行われている間はウクライナを巡って軍事的緊張は生じないであろう。

第三に、米国による最新の制裁パッケージには、ロシアのクリミア占領政権の代表者に対する制限が含まれていることだ。それは、クリミア問題における国際外交努力への新たな後押しとなるし、何よりまず、ロシアに対して、誰も同国によるクリミア「併合」の要求を認めることはないことを思い出せるものだ。さらに、それは、ウクライナが8月に立ち上げを予定しているイニシアティブ「クリミア・プラットフォーム」を支える効果も生み出している。

新しい米国の制裁は、強力な効果を生み出すか?

15日に発動された制限は、大半がロシアの個人・法人に対する個別制裁である。ロシア連邦の活動全体の規模からすると、米国のこのような対応は、もしかしたら不十分だと思われるかもしれない。米露関係が現在極めて低い水準であることを考えれば、ロシア「外交官」の追放もセンセーションとは呼べないだろう。そもそも、ロシア外交官の追放は、これまで何度も行われたきたし、それを行ったのは米国だけではない。

しかし、実は、実際に大きな影響を持つのは、ロシアの公的債務に対する制裁である。ロシア中央銀行、ロシア財務省、国家福祉基金の発行したロシア国債の発行市場が攻撃を受けたのであり、国家予算の重要な補充源となっているルーブル債が対象となった。ロシア国債の他通貨での取引は、2019年、米国が英国でのノヴィチョク使用で発動した制裁の際に制限されている。その際、取引の大半はルーブル建証券で行われていたことから、その制裁は、ロシア経済に大きな影響をもたらさなかった。しかし、今回、米国は、そのルーブル債も対象としたのだ。

非公式な数字では、市場全体でロシア国債を保有する外国人の割合は過去数年で20〜25%減少したという。それは、米国の新対露制裁の潜在的効果が縮小していることを意味する。しかし、ロシアではすでに、米国とロシアの「経済戦争の始まりだ」という声が聞かれ始めているし、それにはわけがある。

ルーブル債の証券発行市場の取引制限の決定は、長期的影響が予想されている。それは、危機的な経済を抱えるロシア政府が国際市場で融資を取り付ける際の機会に潜在的に悪影響を及ぼす。結果、ロシア政府は、予算支出を削減せざるを得なくなる。そして、社会支出、給与、年金の支払いの減少は、ロシアにおける社会の不満の爆発を近づける。さらに、ロシア政権は、治安機関と大規模プロパガンダへの割り当ても削減せざるを得なくなる。

他方で、今回の制裁リストは、米政権がロシアに対する相対的に緩いセクター別制裁を使い果たしたことも示唆している。すると、次の行動こそが、ロシアにとってさらに痛みをもたらすものとなるだろう。

次の対露制裁はどのようなものになるか?

米議会が、「ノルド・ストリーム2」プロジェクトに関して、ホワイトハウスを放っておくということはないだろう。バイデン大統領は、15日、ノルド・ストリーム2の問題は、同盟国の利益に影響をもたらす、解決の難しい問題だと発言した。彼は、何よりまずドイツのことを考えており、現米政権はドイツとの関係を、トランプ政権の「4年間の破滅的」関係から親しい関係に戻したいと考えている。しかし、バイデン氏は、同プロジェクトに対する新しい制裁の可能性も排除しないとも述べている。

一方で、議会は、ノルド・ストリーム2に対して断固とした行動を取る準備があるし、その点は共和党も民主党も同じである。議会にとっては、ウクライナを含む欧州のエネルギー安全保障について、米政権とドイツとの外交的イチャつきは受け入れられない。

クレムリンは、アフガニスタンにおけるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の活動による被害も考えておくべきだ。インテリジェンスの情報によれば、ロシアは、タリバン系武装勢力に米兵あるいは同盟国の兵殺害に報酬を提案していたという。ホワイトハウスはその件につき、ロシアに対してどのような悪影響が生じるかにつき、公表はしないが、ただし影響は確実に生じる、とデリケートにほのめかしている。

ロシアによる禁止された「ノヴィチョク」の使用問題も終わっていない。同国は、自国の野党政治家に対し、国内外でそれを使用している。本件は、米議会にて積極的に取り上げられている。

クレムリンのボス、ウラジーミル・プーチン氏は、軍事的激化により西側との対立の掛け金を上げ始めつつ、自らの今後の存在を深刻なリスクにさらしている。彼は、ロシアの侵略を受けるウクライナを満場一致で支持する、経験豊かなバイデン氏とその環大西洋コミュニティとの間で、勝利を望んでいる。ロシア政権による、弱みに付け入り、対立者に圧力をかける戦術は、今回は機能していない。というのも、その戦術は、相手がロシアより弱いときにのみ機能するものだからだ。バイデン氏は、プーチン氏に、受け入れられる手段での状況脱出の最後のチャンスを与え、会談を提案した。しかし、バイデン大統領は同時に、制裁でもって、プーチン氏との対話は、力ある立場から話していくのだということも示した。ご存知のとおり、クレムリンは、力の言語のみを理解するからだ。


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