エミネ・ジャパロヴァ外務第一次官
「クリミア・プラットフォーム」は、クリミア脱占領を支持する全ての国に対してオープンである。
24.12.2020 12:51

ロシアによるクリミア占領は、7年目に入っており、ウクライナ国家にとっての痛みを伴う傷口であり続けている。ウクライナは、クリミア占領問題と2014年以降の現地の変化を国際議題とするために、「クリミア・プラットフォーム」の設置を目指している。同プラットフォームにて、2021年中に参加国首脳と国際機関代表者による首脳会談が予定されている。

「クリミア・プラットフォーム」にはどの国が参加するのか、どのていど準備できているのか、どのような結果を期待しているのか。同プラットフォームの主な推進者であり、積極的に宣伝をしている、外務第一次官のエミネ・ジャパロヴァ氏がウクルインフォルムに説明した。


クリミア・プラットフォームは、クリミア脱占領を支持する全ての国に対してオープン

端的に「クリミア・プラットフォーム」とは何なのでしょうか。どのようにして設置のアイデアが生まれ、何のために外務省は多くの国をプラットフォームに参加させようとしているのでしょうか。

「クリミア・プラットフォーム」は、ウクライナ外務省が大統領のイニシアティブを発展させる形で作ったものであり、クリミア問題に特化した国際協議と対話のフォーマットです。最終的な目的は、クリミアの脱占領であり、クリミアのウクライナ・コントロール下への返還です。その目的へ向かって、私たちはクリミア半島併合不承認政策の強化、クレムリンに対する政治外交圧力、とりわけ制裁の強化の作業をしていく予定です。クリミア・プラットフォームは、占領によって生じた一時的被占領下ウクライナ領の人権侵害への対抗、安全保障、経済、環境、その他の挑戦の克服も目的としています。クリミア・プラットフォームの一環で、私たちは、首脳会談の開催を予定しており、その会談は、首脳レベルでのプラットフォーム発足の形を取り、それにより作業開始が公式にスタートすることになります。

それら課題の観点からして、できるだけ多くの国を関与させたいという私たちの願望は、当然と言えるでしょう。

首脳会談の開催日は確定しましたか。

現在私たちは、いつその首脳会談を開催するのが最適か、調べているところです。残念ながら、パンデミック(新型コロナウイルス感染症世界的拡散)という客観的理由により、私たちは、2021年、キーウ(キエフ)にて物理的に開催できる日程を模索しているところです。物理的開催は、ウクライナ大統領の強い主張です。私たちが、開催可能な日程を決められ次第、すぐに各国首脳に招待状を送ります。

何か国、いくつの国際機関が、その首脳会談への参加を認めましたか。何か国が訪れる予定ですか。

パートナー国の間で、すでにクリミア・プラットフォーム設置イニシアティブを肯定的に評価したのは、米国、カナダ、オーストラリア、英国、トルコ、ジョージア、デンマーク、エストニア、リトアニア、スロバキア、ドイツ、チェコ、それから欧州連合(EU)とEUの複数加盟国です。

プラットフォームは、その目的、何よりクリミア脱占領を支持する全ての国にとってオープンです。

国際機関に関して言えることは、クリミア・プラットフォームは、国連、欧州安全保障協力機構(OSCE)、欧州評議会、北大西洋条約機構(NATO)の枠内の国際パートナーとの行動調整を可能にするものだということです。その点、私たちはすでに、これらの機関の決定にて実現された成果がありますし、私たちはその協力を強化する予定です。

現在も国際パートナーとの協議は続いています。その結果、プラットフォームの活動を支持する国の数は着実に増えていると実感しています。

何がクリミア・プラットフォームの活動に参加する国々をまとめていると思いますか。

何よりまず、国際法規範・原則の尊重です。クリミア・プラットフォームの作業には、ロシアの侵略開始から私たちの独立、主権、領土一体性を支持してきたウクライナのパートナー国が参加します。これらの国は、クリミア併合不承認政策の基本を作った文書の採択を支持してきた国々です。

クリミア占領に完全な責任を追うロシアもまた、クリミア・プラットフォームに招待されるべき

同首脳会談の開催は、ウクライナがミンスク・フォーマットのような、新しい恒常的な協議の場を作ろうとしているということでしょうか。それとも首脳会談は、国際議題におけるクリミア占領の議題を活性化させるだけなのでしょうか。

実際、首脳会談の目的は、クリミア占領のテーマに追加的に注意を向けさせること、そのテーマを国際議題の中で活性化させることです。同時に、クリミア・プラットフォームの首脳会談には別の重要な課題があります。すでに述べたように、首脳会談は、プラットフォームの活動を公式にスタートさせるのです。

プラットフォームの活動は、その最終目的からわかるように、クリミア脱占領に向け、恒常的で継続的なものとなります。その活動は、政府間、議会間、専門家のレベルにて行われ、制裁、軍事化、安全保障、自由な航行、人権侵害、国際人道法違反、経済、環境といったことについての丁寧な日々の仕事を含みますし、クリミア問題を政界・学界の喫緊の課題としつつ、報道機関の注意を維持します。

とりわけ、プラットフォームの専門家ネットワークは、ウクライナと外国の独立した専門家、学者、市民活動家を結びつけるもので、それがプラットフォームの活動を分析面、情報面でサポートしていき、ウクライナ国内外でのプラットフォームの目的を伝えていく役割を担っていきます。

ロシアに対しても同プラットフォームへの招待状は送られますか。ロシアは、クリミアのテーマはもう終了したと繰り返し述べていますが。

私たちはまだ今のところ、首脳会談への招待状は送っていません。私たちは、パートナーたちとクリミア・プラットフォームの活動フォーマット、内容、首脳会談開催について協議をしているところです。

占領とそれによる被害に全責任を負う占領国ロシア連邦は、クリミア・プラットフォームに招待されねばならない、というのが私たちの原則的な立場です。

首脳会談の議題作成はどの段階にありますか。ウクライナ東部の被占領地問題も、領土一体性の回復の文脈で含まれるのですか。それとも、「クリミア・プラットフォーム」のコンセプトは、クリミア脱占領手段の模索にアクセントが置かれるのですか。

一時的被占領下ドネツィク・ルハンシク両州の協議は、ノルマンディ・フォーマットで行われています。そのため、「クリミア・プラットフォーム」は、クリミア脱占領問題を扱う国際フォーマットであることを指摘したいです。このフォーマットは、クリミア占領とそれにより生じた脅威へ国際社会が対応するためのものです。

現在、首脳会議の宣言案の準備作業が続いています。同宣言では、首脳会議への参加国が国際的に認められた国境内でのウクライナの主権と領土一体性への支持を再確認し、クリミアに関する国際政策の基本を定めることなることが期待されています。

クリミアの占領下で暮らす人々の安全が優先課題でなければならない

クリミア首脳会談へは、現在クリミアで暮らす人々、ロシアの占領の影響を感じている人々の参加も議論されていますか。

首脳会談は、何よりも各国首脳の会談です。被占領下にて人質となっている人々の声は、とりわけ国際的な場にて聞かれるべきです。私たちは、そのための適切な形態を模索していきます。なぜなら、現在占領下で暮らす人々の安全が優先課題でなければならないからです。

クリミアをテーマにした国際フォーラムは、毎年キーウにて開催されています。これまでも、例えば、2月26日の「ロシア占領へのクリミア抵抗の日」の行事で開催されていました。それらフォーラムは、どのような効果を持っていたのでしょうか。そして、今後の首脳会談では、どのような結果が予定されているのでしょうか。

もちろん、そのようなフォーラムは、クリミア問題を議題に維持するという効果や、状況や占領被害に関する情報を交換するという効果を出しています。

そのような行事の重要な要素となるのは、ウクライナの領土一体性への政治的支持の表明です。ロシアは、クリミアにて様々ないわゆる「国際行事」を開くことで、「クリミアが自国領になった」という印象を生み出す努力を惜しんでいません。その占領国ロシアは、そう言った形で、少なくともメディア空間におけるもう一つの現実を生み出す努力を続けているのであり、そこで膨らませた偽のイメージを政治空間に持ち込むことを期待しています。キーウで開催されたイベントの際にパートナー国が表明してきた支持の言葉は、そのようなロシアのナラティブを否定するのに役立っています。

そして、2021年に私たちが予定している首脳会談は、その効果を著しく強めるものとなります。

あと数か月で、ロシアがクリミアを占領してから7年となります。2014年2月の状況と、2020年12月の状況を比べた場合、ウクライナの半島の占領という事実に対する、世界の評価には、どのような肯定的変化が見られますか。

2014年2月と比べて、国際社会のメンバー全てが、ロシアの役割を明確に理解しています。ロシアがクリミアで行い記録されている犯罪と並び、クリミア自治共和国とセヴァストーポリ市の地位は、国連総会決議やその他国際機関の決定にて「ロシア連邦に一時的に占領されているウクライナ領」として確定されています。

とりわけ、私たちは、2014年の国連総会決議「ウクライナの領土一体性」を有しています。また重要なのは、被占領下クリミアの人権状況に関する決議です。クリミア人権決議は、2016年から毎年採択されており、毎回本文に新しい重要要素が加えられています。具体的には、これらの決議では、人権侵害の確認の他に、クリミアの地位が「ロシア連邦に一時的に占領されているウクライナ領」として確認されています。今年第三委員会にてすでに採択されている決議案(編集注:すでに国連総会本会議でも採択済み。日本も賛成)には、「一時的被占領下クリミアにおけるロシア連邦の機関・高官は違法であり、『ロシア連邦占領政権』と呼称されねばならない」と記述されています。12月7日、国連総会第75回会合では、クリミア・セヴァストーポリ市、黒海・アゾフ海の一部の軍事化問題の決議も採択されました。同決議は、3年連続で採択されているもので、この問題が国際社会の注意の中心にあることを示しています。

さらに、ウクライナの主権と領土一体性の侵害に対する対応として科されている制裁は、単に維持されているだけでなく、徐々に拡大しています。「クリミア・プラットフォーム」では、クリミア脱占領に向けて国際政治に新たな後押しをすること、前述の方策の効力を高めることを目的としています。

欧州人権裁判所、国際司法裁判所、国際海洋裁判所といった、国際裁判機構における審理も重要です。国際刑事裁判所の検察事務所との協力も続いています。それらはゆっくりと進んでいますが、しかし人権侵害や、人種差別・テロへの資金供与、戦争犯罪、人道への罪はしかるべく記録されており、適切な裁判所に提出されていますし、臨時方策の適用判決がすでに下されています。

クリミアの状況は悪化している

2014年と比べて、悪化しているのは何でしょうか。

半島の状況は、言うまでもなく悪化しています。人権侵害の犠牲者となっている人の数は増える一方です。ロシア占領政権は、教育を含めた半島の生活の全ての側面を軍事化しています。教育を通じて、子供たちに戦争プロパガンダを施しているのです。政治的弾圧、基本的自由の縮小、人種・宗教的兆候による迫害もあります。また、クリミアの自然・文化遺産も脅威に陥っています。

私たちは、国際社会に対して、あらゆる可能な政治的、法的、経済的手段を用いて、これら否定的傾向に共同して対抗することを呼びかけています。多くの国がそれに応じる政治的意志を示しています。

その他、ウクライナ、つまり、ウクライナの政権、市民団体、専門家コミュニティは、クリミア脱占領のための新しい手段を模索するために何ができると思いますか。

重要なのは、それら全てが「クリミア・プラットフォーム」のコンセプトにすでに反映されていることです。

ウクライナの制裁法の刷新は、プラットフォームの「宿題」であり、すでに実行に移っています。また、クリミア自由経済圏にも問題があります。その自由経済圏の基盤は、現時点の私たちのクリミア政策の課題、目的に合致していません。

それから、国家脱占領戦略の作成です。外政部分はすでに外務省により作成済みですが、しかし国家戦略は全ての要素、外政部分、内政部分を含みます。この作業は継続しています。

最高会議(国会)には、超党派議員グループ「クリミア・プラットフォーム」も作られました。議会の役割が国内外で重要なのは確かです。

市民団体、とりわけ人権保護団体は、プラットフォームの目的を達成するために決定的な貢献をしています。なお、今年の夏、私たちは、ロシア連邦に違法に拘束されているウクライナ国民の解放促進を目的に国家機関とNGOの協力フォーマットを開始しました。

この協力活動は続いており、「クリミア・プラットフォーム」専門家ネットワークの創出へと拡大しています。私たちは、ネットワーク創出のために、制裁政策、国際法、人権保護、安全保障やその他の分野の専門家を関与させています。すでに述べたように、これら専門家は、クリミア・プラットフォームの活動を、分析報告や結論、勧告、宣伝キャンペーンの実施、専門的外交イベントの開催などを通じて、分析・情報面でのサポートをしていきます。

このように、私たちは、一定の達成と、クリミア返還という目的達成に向けて、政権機関と市民社会のさらなる協力を目にしています。

ゼラ・アシロヴァ/キーウ

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