バイデン氏の幹部候補者指名から見る対ウクライナ政策

バイデン氏の幹部候補者指名から見る対ウクライナ政策

ウクルインフォルム
米国次期政権は、汚職対策をはじめ、ウクライナのあらゆる改革分野へ注意を高めるであろう。

民主党から出馬し、大統領選勝利を確実にしたジョー・バイデン氏は、既に重要閣僚人事を発表している。彼は、政権入り初日から緊急課題に取り組む準備のある経験豊富な専門家がチームに加わると述べている。バイデン氏が、外政と安全保障の人事の候補指名から始めているが、この2分野こそがウクライナにとって最も重要である。既に指名された候補者の名前からして、現在既に対ウクライナ政策がどのようなものになるかを予想できることが可能だ。

バイデン氏本人について

バイデン氏は、オバマ政権下で副大統領を務めていた際にワシントンの対ウクライナ外政を実質的に率いていた。彼は、ウクライナ政権幹部のコンタクトを取りまとめ、キーウ(キエフ)を何度も訪れ、ウクライナが旧ソ連モデルから脱け出ようとするのを妨害するオリガルヒ(大富豪)や汚職者の名前を詳細に把握していた。彼は、ワシントンにてポロシェンコ大統領やヤツェニューク首相と会談し、ロシアの侵略の中のウクライナへの支持を約束し、他方で、ウクライナによる国内改革の実行を要求していた。バイデン氏は、オバマ大統領に対して、ウクライナへの殺傷性兵器の供与を提言していた人物の一人でもある。

ワシントンをウクライナの首相が訪問していた際、バイデン氏は、あるフォーラムの演台にて、同首相のことを「友」と呼んだ。しかし、同時にそのオープンな演説の際に「汚職」という言葉を何度も用いた。彼はその時には既にウクライナにとっての主要な挑戦が、ロシアの侵略に加えて、汚職スキームの解体であることを明確に理解していたのだ。そして、彼は、今もその理解を維持している。

選挙後、各国の首脳がバイデン氏に祝辞を送り始めたが、バイデン氏はその際、少なくともフランスと英国の首脳との間で、ウクライナについての議題を提起している。これはつまり、バイデン氏がウクライナへの注意を維持していることを意味する。それは極めて重要だ。なぜなら、ホワイトハウスのトップの見解というのは、米国の政策方針の形成を大きく左右するのだから。

それはウクライナにとっては、ロシア連邦からの侵略を受ける中、米国からのサポートが引き続き強固であり続けることを意味する。また、米議会にはウクライナ支持で両院のコンセンサスがある。ただし、同時に、ホワイトハウスの新チームがウクライナにおける汚職問題の指摘を止めることはないであろうし、改革実施に対する注意はこれまでより大きくなるであろう。

なお、副大統領となるカマラ・ハリス氏は、ロシアの侵略への非難を除き、ウクライナに関する真剣な発言はまだしていない。彼女は、トランプ氏がプーチン露大統領と意図不明に接近しようとしていたことを批判していたし、米国にとってロシアの体制が脅威であると明言したことはある。

外政方針

米国政権には、大統領が外政を形成する際に頼る人物が二人いる。それは、国務長官と国家安全保障担当補佐官である。国務長官は、アメリカ外交機関全体を率いる人物であり、任命の前に上院による指名候補者の承認を必要とする。国家安全保障担当補佐官は、議会の承認を必要としないが、大統領の最終的決定に対しては、大統領の信頼次第で、国務長官に劣らぬ影響力を持ち得るポストだ。

バイデン氏は、国務長官候補にはアンソニー・ブリンケン氏を指名している。ブリンケン氏は、オバマ政権下では国務副長官を努めていたため、国務省の仕事はよくわかっている。彼は、ウクライナ問題のこともよく把握しているし、キーウを訪れたこともある。

アンソニー・ブリンケン
アンソニー・ブリンケン

ブリンケン氏は、ロシア・プーチン政権を否定的にとらえている人物であり、バイデン氏の選挙運動期間中から、同氏の個人顧問として対露戦略の作成を行っている。彼の見解は、ロシアの侵略への対抗、北大西洋条約機構(NATO)の強化、追加的抑止ファクターの創出、新しいサイバー能力への投資、宇宙での立場の強化というものであり、これに加えて、ウクライナ、ジョージア、西バルカンの国々に対して、これらの国で民主的改革が行われるのと同時に強力な支援を与えていく、という考えも持っている。

ブリンケン氏はまた、米国の外政の主要な課題は、「リーダーシップ、協力、民主主義の回復」だと述べている。つまり、反中国で西側連合をまとめつつ、同時にロシア、イラン、北朝鮮や、国際過激主義・テロといったその他の脅威からの挑戦への対抗することに主要な力点が置かれることとなる。つまり、ブリンケン氏は、グローバルな分類で物事を考えるタイプであり、ウクライナは、その彼の世界観においてはっきりとした場所を占めているのである。

ジョー・バイデン氏は、国家安全保障担当補佐官には、ジェイク・サリバン氏を見ている。サリバン氏は、ロシアやウクライナ問題では大きな経験はない。代わりにサリバン氏は、中近東の問題に精通しており、トランプ政権が葬ったイランの核合意の作成に関わった人物の一人である。

また、対ウクライナ政策の形成には、その他の米政権内の多くの専門家が関わって行くことになる。特に、国務省内には、この方向性に携わる欧州・ユーラシア局があるし、同局はフィリップ・ピーカー氏が率い、次席はジョージ・ケント氏が務めている。更に、ホワイトハウスの国家安全保障会議にもウクライナを担当する専門家がいる。そこの補佐官の一人が、アレクサンダー・ヴィンドマン中佐。彼は、トランプ大統領の弾劾手続きの際に広く知られるようになった。彼は、その後自らの原則的立場から、職を追われているが、しかしながら、彼の存在は米国の対ウクライナ支持が複層的かつ堅固なものであることを証明することになった。

つまり、対ウクライナ政策の形成は、新政権にて真の専門家たちが留任するかどうかにも大きく左右されるということである。

国防分野

ロシアの侵略という現実がある中では、ウクライナにとっては、米国防省の立場もまた重要である。例年の米防衛予算には、対ウクライナ安全保障支援が大きな割合を占める。また、ペンタゴンのウクライナ改革への評価も決定的な役割を担っている。加えて、米国防省は、ウクライナに対する軍事技術品の供給、合同演習や訓練の実施、戦略爆撃機や無人機のウクライナ上空の飛行を組織している。

バイデン氏は、国防長官候補者をまだ指名していない。米国マスメディアの報道によれば、彼は、二人の人物を同ポストに指名することを検討しているという。一人は、ミシェル・フロノイ氏、もう一人は、ジェフ・ジョンソン氏である。二人とも、国防省や米国の他の国家機関のの幹部ポストを務めたことのある人物だ。トランプ大統領が、ウクライナに対する軍事支援を止めたことがわかると、二人ともそれを徹底的に批判していた。なお、その支援停止問題は、後に大統領弾劾手続きの開始をもたらしている。

ミシェル・フルノイ
ミシェル・フロノイ

もちろん、最後の最後に、その他の候補者が国防長官候補者に指名されるかもしれない。しかし、この二人の立場を見れば、ペンタゴンの対ウクライナ支持政策、防衛改革実現といった立場が今後も維持されることは明白であろう。

すなわち、バイデン次期大統領が政権入りすると、米国の対ウクライナ政策は強化されることになろう。少なくとも、バイデン氏個人とその周辺人物は、トランプ氏とは違い、プーチン露大統領に対する好意などは示していないし、言うまでもなく、ウクライナに対する支援を政治的メリットとの交換条件にすることもなかろう。

しかし、それは、物事が容易になるということではない。ウクライナは、ワシントンから、特にバイデン氏本人からのあらゆる分野の改革、特に汚職対策改革への注意が高まることに向けて、準備をしておかなければならない。そして、その際、米国は、宣言的なものに注意を向けるのではなく、実際の結果、成果に注意を向けることであろう。

ヤロスラウ・ドウホポル/ワシントン


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