ルーク・ハーディング英ガーディアン紙特派員
プーチンを何でも知っている「悪の天才」とみなすべきではない。彼は、古典的なKGB的機会主義者である
16.09.2020 15:11

ルーク・ハーディング氏は、ガーディアン紙の特派員で、2011年の失脚したオリガルヒ(大富豪)ボリス・ベレゾフスキーへのスキャンダルなインタビューの発表により、ロシアから追放されている。

彼は、『マフィア国家』という本の著者で、著書の中でロシアにおいては政権と犯罪組織に差異がなく、組織犯罪と治安機関が一体化していると主張している。また、ハーディング氏は、エドワード・スノーデン氏が米国家安全保障局の機密情報を渡したジャーナリストの一人でもあった。そして、ハーディング氏は2011年には、デビッド・リー氏とともにジュリアン・アサンジ氏を題材にした『ウィキリークス アサンジの戦争』という本も出版しており、映画『フィフス・エステート/世界から狙われた男』はその本の資料を部分的に土台に用いて作られている。2014年には、ハーディング氏の『スノーデン・ファイル 地球上で最も追われている男の真実』も出版され、大ヒット映画『スノーデン』の元になった。新著『シャドーステート』では、2017年から2018年にかけて、(プーチンのシェフとして知られる大富豪)エブゲニー・プリゴジン氏の『インターネット・リサーチ・エージェンシー』の代表者たちが、人種間対立において黒人系アメリカ人を扇動する可能性について議論していることが書かれている。今回、国営テレビ「家」局の番組『本当のところ:世界』の司会者テチャーナ・ポポヴァ記者がハーディング氏と対話した。

(編集注:このインタビューは、家局の番組内でのやりとりを書き起こしたものです。)


プーチンの個人的な敵になるというのは、どのようなものでしょうか。あなたの本『マフィア国家』にはプーチンの資産について書かれていますが、それはどのような手段で評価したのですか。

私の書いたものは、ある意味で個人的経験と人から得た情報を混ぜたものです。私は、ロシア政権内に情報源を持っていたのですが、彼らはモスクワにいる時は黙っていますが、ロンドンへ逃げるとそこからは、ロシアで何が起きているか率直に話してくれました。

短く話すと、私は当時も今もガーディアン紙の外国人特派員です。ベルリンとデリーでの勤務を終え、モスクワに移動した時、私は、ロシアというのは半民主的な国だろうと思っていました。

そしてすぐ、私は自分が間違っていたことに気がつきました。それ(ロシア)は、民主主義などでは全くない、腐敗し、攻撃的で、修正主義的で、そのトップに完全に冷酷な人間が居座る政権です。

私は、モスクワの自分たちのアパートに何度か侵入があった時に、そのように確信しました。英大使館が私たちに伝えたところによれば、それはロシア連邦保安庁(FSB)により組織されたものであり、つまりプーチンのスパイ機関によって行われたものだとのことでした。

私の把握している限りでは、あなたはアサンジ氏やスノーデン氏と個人的に交流していましたね。彼らは、会話や、生活の中では、どのような人物なのでしょうか。

私は、スノーデン氏とは個人的には一度も会ったことがありません。なぜなら、スノーデン氏がモスクワに行くより前に、私がモスクワから追放されていたからです。私はまたブラックリストに入れられているので、向こう何年間かモスクワへ行くことはできません。

ジュリアン・アサンジ氏に会ったのは2010年で、彼が、米国の機密公電を公開した後、私たちの新聞社を含む、多くの記者と会っていた時のことです。それら機密文書に書かれていた情報は、ロシアを相当魅力のない存在として描いており、ウラジーミル・プーチンをマフィア国家のボスとして表現していました。私とジュリアンは、その情報に取り組み、一緒に本さえ出しました。彼はその後ガーディアン紙との協力を止めますが、しかし私は、今も続く、彼の米国への強制送還の試みに対する闘いを支持しています。ジュリアンが2010年に行ったことは、全くもってジャーナリズムであり、それ以外の何物でもありません。

それはエドワード・スノーデン氏の大勝利でもありました。もし覚えていれば、2013年、彼は米国国家安全保障局のいくつかの機密情報を公開することにし、その後香港へ飛び、ガーディアンの記者と会ったのです。

米国の裁判所は、スノーデン氏の暴露した特殊機関の監査を違法と判決しました。それは、裁判所の許可のない米国民の通話記録を収集することは、外国情報監視法に違反するからでした。あなたは、エドワード・スノーデン氏の今後の運命をどのように考えていますか。

スノーデン氏は、米国政府は、米国民だけでなく、私の国やウクライナや、その他どこの国の国民も含め、全ての人にスパイ活動を行っていると考えていました。彼は、幅広い議論なく、コントロールのないままにそのようなことは行われるべきではないと考えていました。まさに彼が、21世紀のプライバシーと現代技術の境界線、国家による私たちのコミュニケーション、電子メール、通話データなど、個人データを掌握する能力についての議論を主導したのです。

私は、彼を素晴らしい人物だと思っています。彼は、大きな代償を払いました。私は、彼はロシアを永遠に出られないと思います。世界中の人々が、彼をロシアのスパイだと非難しますが、私は本当に、彼をロシアのスパイだとは思っていません。私は、彼が本当の内部告発者であり、私たちはそれに感謝すべきだと考えています。

あなのた専門的活動や、注目度の高い出版物は、複数の国の首脳に楽観的な気分をもたらしていません。例えば、ロシアへの入国禁止の他にも、(外国の)特殊機関の注目の気配を感じたことがありますか。あるとすれば、それはどのような経験でしたか。

クレムリンが私にシンパシーを抱いていないことは明白です。私は同国から追放されただけでなく、サンクトペテルブルクに拠点のある、ロシアの有名なトロール軍団(編集注:ソーシャルネット上で活動するロシア発のグループの通称)を通じて、ソーシャルメディアなどでかなり頻繁に攻撃を受けています。また、私は、米国でも、少なくともトランプ政権には、あまり人気がないと言わざるを得ません。

私の本の情報源の中には、英国の元M16スパイであるクリストファー・スティール氏がいます。彼は、ロシアはドナルド・トランプ氏と成功裏の妥協に達成したという有名な調査書を書いています。

そのため、私は、トランプ支持者から「フェイクだ」「デマだ」などという罵声を定期的に浴びています。

ただし、私はそれをそれほど邪魔に感じていません。なぜなら、私の描くロシアのイメージは世界の再構築を求める暗黒国家のようなイメージですが、私は、それを正しいと確信しているからです。もちろん、正しい情報が頻繁に捻じ曲げられ、妨害されることは不愉快ですが、しかし、いずれにせよ、定期的にウソをつく政治家が存在する限り、それは続けねばならないと思います。

私たちが初めて話をした際、あなたはロシアが、西側の国々にて、ウクライナで試したハイブリッド戦争の手段を使っていると話していましたね。それはどのような手段ですか。

テチャーナさん、私の言いたかったのは、軍事的解決手段と洗練されたソーシャルメディアを対象とする手段の混合物のことです。つまり、一方でそれは、戦車、重火器、そして、形式的にはロシア軍とは関連がないが、しかしロシアの軍事機構と明確にリンクしている人々が存在します。そして、もう一方では、(編集注:ロシア発の偽情報拡散や世論誘導工作を行っている)「トロール工場」のシニカルな若者たちがおり、彼らが反ウクライナ的メッセージを流している人々です。それは、ウクライナに対するある形態の工作行為であり、真の領土をめぐる物理的戦争の一部でもあります。

私たちは、2014年、クリミア併合にて力によるウクライナの国境の変更を目撃しましたが、しかしそれは同時に「心を巡る戦争」も行われています。人々の頭の中に何らかのパラレルな現実を作り出し、真実とは一切共通点のないナラティブ(言説)を押し付ける試みが行われているのです。

そのような戦争の手段をクレムリンはほぼ完璧に行い、特にウクライナ領内の自国に近い地域で広範囲に実施したのです。そして、その後、西側諸国にも展開しています。私は、クレムリンのトロールが大量に米国の有権者の心をもてあそび、ヒラリー・クリントン氏をおとしめ、ドナルド・トランプ氏を手助けした2016年以降になってはじめて、多くの人がようやくそのことに気がついたのだと思っています。

西側の世界は、ロシア連邦による攻撃的行動に対して適切な対応が必要なことと、基本的人権の要件を遵守することの間に、バランスを見つけることができるのでしょうか。

とても良い質問です。トランプ氏についての調査書を書いたクリストファー・スティール氏のような人々たちから私たちは多くのことを学んでいます。例えば、現在のロシアのスパイは、古い映画に出てくるような、エポレットをつけた軍服を着た堅苦しい人物のような格好はしていません。現在のスパイたちは、オリガルヒ(大富豪)や普通の人々、ビジネスマンや学生という風に、どんな人物でもあり得るのです。スパイは、頭が良くて、本を読み、自分の子どもを愛しています。しかし、彼らが実際にしていることは、スパイ活動の一形態です。彼らは、非公式か公式のクレムリンのある種の資産です。

私の国(英国)を含め、西側社会は、そのことを十分には理解していないと私は思っています。最近、英議会の情報・安全委員会が「ロシア・レポート」と呼ばれる大型報告書を発表しました。

その報告書には、ロンドンが「ロンドングラード」となっており、モスクワからの人々の資金洗浄のための天国にとなっていること、その人々の全てが悪ではないが、しかしその多くはクレムリンと繋がっていることが書かれています。さらには、英国に、クレムリンが雇った弁護士、不動産屋、PR分野の従事者のネットワークがあるとも記されています。

実際のところ、クレムリンと繋がる人々は、ロシアの地政学的な目的を推し進めており、私は、それを危険な状況だと思っています。西欧諸国は、金と投資を必要としていますし、コロナウイルスもあります。同時に、私たちはモスクワから資金を受け取っていますが、その資金の多くは、何らかの政治的目的を持って入ってくる「ブラックマネー」なのです。

11月のG20首脳会談に向けて積極的に準備が進められています。ロシア連邦は、その会談で国際安全保障問題が注目されるようなことを片っ端から行ってきています(ナワリヌイの毒殺未遂、ベラルーシへの干渉、クリミア・ドンバス占領の継続、シリア、レバノン、リビアなど諸外国の内政干渉)。あなたは、国際社会がロシアを止める手段を見つけられると予想していますか。そうであれば、それはどのような手段でしょうか。

2つのことを考えています。1つ目は、何が起きているか、プーチンとその周辺の人物が何を考えているかを理解しなければなりません。実際のところ、ウラジーミル・プーチンは、ウィンウィンの相互的解決法に興味がありません。彼は、勝つか負けるかの、典型的なゼロサム思考者です。彼は、ウクライナや西側にとって悪いことは、ロシアにとって良いことであり、その逆も然り、だと考えています。

彼は、一種の偏執症的メンタリティ、KGB的メンタリティを持っています。冷戦時代を振り返りつつ、ロシアは敵に囲まれていて、西側諸国と非公式の戦争が絶え間なく続いている状態にあると、彼は本当にそう考えています。だから、何よりまず、政治家はそれを理解する必要があります。

2つ目には、誰もロシアとの紛争を望んでいないということです。ウクライナで起きたことの後では、特にそうです。

そのため、答えは制裁しかないのです。私たちは、クレムリンの人物に対するいくつかの制裁をすでに発動していますが、それらはより強大で、広範囲のものでなければならず、家族構成員に対する渡航禁止、銀行口座の凍結などを含まねばなりません。

あなたは、ロシアが超愛国的で、非常にナショナリスティックな国だということを理解しなければなりません。「クリミアは私たちのもの」などという言説は知っているでしょう。しかしながら、実際のところは、国の上層部が本当に心配しているのは、自分たちのお金のことです。彼らは億万長者であり、自分の資産を失うこと、西側の市場へのアクセスを失うことをとてもとても嫌がっているのです。

あなたは、自著『シャドー・ステート』にて、2017年から2018年にかけて、プリゴジン(編集注:ロシア大統領に近い実業家エブゲニー・プリゴジン)の「インターネット・リサーチ・エージェンシー」の代表者たちが、アフリカ系アメリカ人の人種間対立を扇動する可能性について議論していたと書いています。あなたは、それが後の「ブラック・ライヴズ・マター」運動で発露したと考えていますか。

プーチンが何でも知っている悪の天才ではないということを私たちはしっかり理解しておくべきです。彼が、机の後ろに座って、赤く光るボタンを押すと、キーウ(キエフ)やらロンドンやらワシントンやらで何かが起こる、というようなことはないのです。

そうではありません。彼は、古典的KGB的機会主義者で、「それをやってみて、うまくいくかどうか見てみようじゃないか」という形で行動する人物です。彼の伝統的なKGB的手段による行動というのは、他の社会、他の人の国の弱点を嗅ぎつけ、それを利用することです。

そのため、プーチンは、自分で放火するのではなく、横から忍び足でやってきて、炎に油を注ぐような人物なのです。

それこそが、私たちが米国のブラック・ライヴズ・マターで見ていることです。これらの人種間の緊張は、プーチンの有無とは関係なく存在しているものです。しかし、プーチンがしようとしていることは、米国におけるほとんど国内冷戦状態を作り出すようなことです。民族対立、政治対立、のようなものです。目的は、その既存の問題を強化することです。

私は、ドナルド・トランプ氏については、彼が本件における共犯者であると言わざるを得ません。プーチンは、もう十分成功を達成していて、手を引いて結果を観察すれば良いだけの状態になっています。

あなたは最新の著書の中で、ロシアのブレグジット(イギリスのEU離脱)キャンペーンの際のロシアのかなり活発な影響についても指摘しています。何が実際に起きていたのか、教えてもらえますか。

あなたが理解しなければならないことは、クレムリンのスパイやソーシャルメディア・トロールの行動によって米国で起きたことと同じ操作が英国、私の国でも起きたということです。それは、プーチンがEUを憎みブレグジットを支持しているからです。

それは、彼が、ブレグジットはブリュッセルに、EUにダメージを与える、英国を経済的、政治的に弱められると考えているからです。私たちが2016年に見たものは、何よりまず、シリアなどからの移民のようなホットな話題を推し広める、莫大なソーシャルメディア・キャンペーンでした。それは、離脱支持派、ブレグジット支持派メッセージの推進でした。

ソーシャルメディアも使われましたが、駐ロンドン大使館を巻き込んだクラシックなスパイ行為もありました。当時のロシア大使のアレクサンドル・ヤコヴェンコ氏は、ブレグジット・キャンペーンの主要人物と会っていましたが、その内の一人は、約900万ポンドの莫大な政治献金をしていました。ヤコヴェンコ大使は、アーロン・バンクスと呼ばれる人物に金取引の機会を提示していました。シベリアの金鉱山への投資の話です。その他、ダイヤモンド取引や別の金取引の話もありました。

2016年夏の離脱勝利パーティーには、ロシアのスパイまでいました。私が非常に憂鬱に思っているのは、ボリス・ジョンソンの英政府が、事実の調査をしたがらないことです。なぜなら、彼らはブレグジットを支持しているからです。つまり政治的理由で、彼らはあさっての方角を見ているのです。

ルークさん、あなたはロシアの影響力行使の手法を長らく分析しています。おそらくあなたは、それへの抵抗手段についても何かアドバイスできるでしょう。ご存知の通り、ウクライナでは停戦が1か月半続きましたが、数日前、いわゆる「DPR」の首長が、ウクライナ側陣地への計画的攻撃を発表しました。そして、その後数か所で攻撃を受け、兵士1名が死亡、1名が負傷しました。これら全ては、ウクライナの地方選挙の前に起きています。これはロシアにとっては、地方選挙の際に、ヴィクトル・メドヴェチュークが加わる親露政党(編集注:野党生活党)を宣伝するのに有利な状況です。今後どのように情勢が進展すると思いますか。そして、ウクライナはこのようなロシアの作戦にどのように対応すべきでしょうか。

ウクライナは、ずっと前線にいましたし、今も前線にいます。あなたは、私がドネツィクとルハンシクに行ったことがあるのを知っていますね。私は、2014年にガーディアン紙のためにウクライナ現地から報道し、そこで起きたことの全て、ウクライナ人がロシアの侵略と国内干渉の結果受けた苦しみ全てを見ています。ウラジーミル・プーチンが非常に得意とすることは、合意でジャグリングをし、戦略的必要に応じて、対話を遮断することです。そのため、今後の選挙で彼が干渉するのは自然なことです。クレムリンは、ある候補者を前に押し出しながら、自分にとって都合の悪い他者を「妨害」しようとします。

私の考えでは、この問題に簡単な解決方法はありません。しかし、ウクライナにとって最適な回答となるのは、真の、本当の国全体の改革を行うことです。あなたのテレビの視聴者もそう思うでしょう。

私はあなた方にアドバイスをする程の勇敢さは持ちませんが、しかしながらウクライナ人はやはり、汚職に勝利し、汚職から足を洗い、財政透明性に関する部分で欧州スタンダードを導入すべきです。裁判活動が完全に公正で合法であることは決定的に重要です。正義は買収し得ないのです。

私は、ウクライナがロシア・モデルから欧州モデルに進めば進むほど、長期的展望でウクライナにとって有益だと思いますし、ウクライナがロシアの脅威や直接的侵略に対抗しやすくなると思います。

それから、もう一つ。偏向のない、つまりどんな影響からも自由な報道機関というのは、非常に重要です。過去、あなた方は頻繁に報道を利用してきました。報道機関は、主にオリガルヒ(大富豪)が経営し、管理していました。ですから、ウクライナにとって最善の回答は、自由なメディア、公正で透明な国家ガバナンスでもあり得るでしょう。

国営テレビ家局

写真:White Noise, Hameen Sanomat

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