新駐ウクライナ米大使に退役中将指名

新駐ウクライナ米大使に退役中将指名

ウクルインフォルム
5月1日、米ホワイトハウスは、ドナルド・トランプ大統領がキース・デイトン退役中将を次期駐ウクライナ米大使に指名したと発表した。

ウクライナに、ようやく新しい米大使が就任する。トランプ大統領は、71歳のキース・デイトン氏を指名。同氏は、軍事インテリジェンスに関わってきた退役中将であり、キーウ(キエフ)にて米国の国益を代表してきた外交官であり、専門家である。この決定は、言うまでもなく、ウクライナ・米国関係にとっての肯定的要素であることは間違いない。なぜなら、その決定は、2019年5月のマリー・ヨヴァノヴィチ前駐ウクライナ米大使の辞任から1年以経った、長らく待ち望まれていたからだ。

その期間のトランプ大統領の弾劾とそこにおけるウクライナの役割を考えると、その時期はウクライナと米国の間が最も懸念された時だったのかもしれない。これから、新しい米大使は、アメリカ、ウクライナ、国際(グローバル)という、少なくとも3つの要因のバランスを追求せねばならない。新しい駐ウクライナ米大使の任命は、なぜ重要なのだろうか? キース・デイトン氏が候補というのはどの程度望ましいものだろうか?

2人の候補者

昨年12月の段階で、駐ウクライナ米大使の候補者として検討されているのは、米国務省のフィリップ・リーカー氏と、ジョージ・マーシャル・センター(ドイツ・ガルミッシュ市)の所長キース・デイトン氏の2名いることが判明していた

フィリップ・リーカー氏、キーウにて 写真:U.S. Embassy Kyiv
フィリップ・リーカー氏、キーウにて 写真:U.S. Embassy Kyiv

当時の報道では、リーカー氏は、ポンペオ米国務長官の欧州・ユーラシア問題担当補佐官代行を担っており、実質的に国務省のウクライナ問題を率いていたとのことだった。そのため、彼は駐ウクライナ米大使のあらゆる特殊性と課題を把握していたはずだし、素晴らしい候補であった。

しかしながら、リーカー氏は、米議会でのトランプ大統領弾劾公聴会で証言をした公式幹部の一人でもあった。彼はとりわけ、マリー・ヨヴァノヴィチ前大使の目的を持った解任とウクライナへの軍事支援停止について証言している。確かにその際彼は議会にて、米国外交の名誉を擁護したが、実際には、その証言は弾劾プロセスにおけるトランプ大統領弁護側の立場とは完全には一致していなかった。

そして、トランプ大統領は、最終的に退役していたキース・デイトン氏を選んだのだ。デイトン氏は、ソ連に力点を置いた外国での従事する将校の教育を行う、軍事外国語研究所で勉強したことがあり、ロシア語とドイツ語の知識を有す。彼の経歴の多くが非公開であるが、現時点では、彼がイスラエル・パレスチナ紛争安全保障調整官や、戦略・計画・政策担当ディレクター、国防省国防情報局作戦局長、在露米大使館軍事アタシェのポストを経験していたことがわかっている。

キース・デイトン氏 写真:DOD
キース・デイトン氏 写真:DOD

デイトン氏は、ドイツのセンター所長ポストにて、ウクライナの防衛問題担当の米上級顧問に任命されていた。それは、将来の大使ポストへの指名の観点からは、利点もあれば、欠点もあった。なぜなら、一方では、デイトン氏は、ウクライナ情勢を非常によく理解しているが、他方では、彼はジェイムス・マティス元国防相により任命されていた人物という点があった。マティス氏は、トランプ氏との見解相違から派手に国防相ポストを去っている。それでも、トランプ氏は、軍事・外交のポストで40年間キャリアを積み上げてきたデイトン氏にとって、有利な形に決定を下したのだ。

ウクライナにとってのデイトン新大使任命の意味

何より、代行ではなく、正式な米大使がキーウにいるということ自体が、ウクライナにとっての二国間関係における質的に高いレベルを意味する。それは、トランプ大統領の一連の弾劾関連出来事の後には特に重要であるし、政権交代をもたらし得る米国の大統領選挙時期においても同様である。

その点に関して、ジョン・ハーブスト元駐ウクライナ米大使は、「それにより、米国はウクライナへのサポートとクレムリン侵略への対抗に関心を抱き続けている、という明確なシグナルが送られる」と指摘している。

この点で、デイトン将軍は、その国防省との長く深い繋がりと、国務省との連携の点から、ウクライナにとって「勝ちの選択」である。なぜなら、米国政府におけるこの二つの重要な省がウクライナへの支持において決定的な役割を担っているからである。ところで、キース・デイトン氏は、自らのキャリアにおいて、米国務省から勲章を受けており、それにより国務省における専門家としての評価が確認されている。更に彼はカナダ、ドイツ、オーストリアの各政府からの受勲もあり、それによっても権威が高められている。

キース・デイトン氏 写真:DOD
キース・デイトン氏 写真:DOD

また、デイトン氏は、パレスチナ・イスラエルの和平問題の調整も担っていたことがあり、紛争テーマについても深い理解がある。彼のアプローチは、第一に、パートナーたちの利益だけでなく米国の安全保障にも合致する形で地域の平和を達成する、という点にある。第二に、彼は国際的な専門家チーム全体の努力を率いてきた人物ということだ。その専門家たちは、常に紛争現場を訪れ、状況を把握してきた。第三に、彼は、地域の治安レベルを一定程度確保することができ、同時に紛争の双方が反対しないような、新しいメカニズムを模索してきた。例えば、デイトン氏が関わり作られた、パレスチナの政府治安維持部隊の創設である。

もちろん、それは、例えばロシアのドンバス侵略を停止するための参考にはなならない。しかし、デイトン氏が非定型的な決定を模索してきたということは重要である。同時に、彼はクレムリンの意向もよく理解している。なぜなら、ロシア関係の勤務経験もあるからだ。更に、彼はウクライナの公式の立場も明確に理解している。彼は、過去数年間、ウクライナ防衛問題の米国の主任顧問として、キーウを複数回訪問している。

デイトン氏とクレーバ外相 写真:クレーバ外相(ツイッター)
デイトン氏とクレーバ外相 写真:クレーバ外相(ツイッター)

追加的複雑さ

しかしながら、キース・デイトン氏の任命が非常に困難な時期に行われることになる。この時期は、アメリカ、ウクライナ、国際(グローバル)という、三つの要因によって説明できる。

アメリカ・ファクター

第一にアメリカ・ファクターがある。この要因は、議会による大使任命確定手続きの困難さから、11月の大統領選挙に至るまで複数の要因に分割できる。トランプ氏は、これまでにも自身が指名した人物が上院に承認されるのに長い時間がかかると文句を言っている(共和党が過半数を有しているのにである)。大統領は、上院議員が重要な任命の審議を遅らせるなら、パンデミック(世界的流行)の間に議会を解散すると脅したこともある。しかしながら、ワシントンの人々は、駐ウクライナ米大使の候補者審議に関しては、上院での遅延はないだろうと考えている。

元駐ウクライナ大使のウィリアム・テイラー氏は、本件について、「デイトン候補は、上院ですぐに承認されるだろう」と述べている。その理由は、デイトン氏が軍事専門家であり、ウクライナ問題の専門家であり、更に政党所属がないからだと指摘した。

キース・デイトン氏 写真:DOD
キース・デイトン氏 写真:DOD

大統領選挙と政権交代の可能性について言えば、在外の高いポストにありながら、そのような状況を経験するのは、彼に限った話ではない。そのため、その際の彼にとっての主要な「挑戦」となるのは、米国の外交方針の一貫性維持であり、幸運なことに、民主党政権も共和党政権も(対ウクライナ外交方針には)変化はない。米議会では、両党とも、ソ連がまだあった頃から現在に至るまで、常にウクライナ支持を表明してきている。現在のホワイトハウスのトップが自らの政治的目的のために対ウクライナ軍事支援を止めようと試みた際でさえ、議会側からの激しい抵抗が起こり、政府内でも個別ケースで否定的な反応が起きたのだ。しかしながら、現状はまだ、トランプ氏が、「ウクライナ問題」と呼ばれる、民主党のバイデン氏の息子やブリズマ社の件を選挙戦のレトリックとして再び使い始める可能性は残っているし、それは、ウクライナにとっても米国にとっても肯定的な影響をもたらすことはおそらくないであろう。

ウクライナ・ファクター

第二は、ウクライナ・ファクターである。より正しくは、それは決定的に不可欠なウクライナの改革実現のことであり、また防衛能力の強化のことである。ウクライナがどの道を進むか、文明的な西側への道か、オリガルヒ(大富豪)、汚職、ロシアの影響を受けた道か、を定める国内改革が行われている最中に、新しい米大使がキーウに到着するのだ。米国務省の元ウクライナ問題特別代表のカート・ヴォルカー氏は、4月にウクライナの現状を「決定的な瞬間だ」と指摘し、ウクライナの経済が国際金融機関のサポートに左右されることを強調している。

ヴォルカー氏は、「ロシアの長引く侵略を受ける中では、IMF(国際通貨基金)の支援パッケージや、その他の財政支援を確保することが重要な意味を持つ。ロシアは、国際サポートのない弱いウクライナを、さらなる軍事的、政治的、心理的圧力にとっての容易いターゲットとみなすのだ」と指摘した。

また、ドンバスの軍事紛争とロシアによるクリミア占領は、デイトン氏にとって、サプライズではない。同氏は、これまでにこの課題における決定模索に関わってきた人物だからだ。なお、カート・ヴォルカー氏がウクライナ問題特別代表としての仕事を辞めて以来、米国の本件についての立場が若干弱まったことは指摘せねばならない。特別代表のポストは空席のままだ。しかしながら、このような条件下、デイトン氏の紛争解決の経験は、おそらく、この分野における米国の立場を回復することに役立つだろう。

グローバル・ファクター

三つ目は、国際的要因である。これは、COVID-19のパンデミック(世界的流行)や世界的経済危機に対応するものだ。新型コロナウイルスは、政治、外交、商業の活動やあらゆるレベルのコンタクトを制限し、それにより今後の情勢発展における不確かさが増大している。

経済的被害で言えば、IMFの予想では、世界経済は、過去100年で最悪のストレスを受けているという。ウクライナは、今年GDPがマイナス7.7%の成長になるおそれがあるという。そのため、ウクライナ経済の再生は、何より、今後の政府の行動がどの程度専門的であるか、そして、ウクライナが外部支援を十分に受けられるか否かにかかっている。後者の条件が国内改革なのであり、改革実現は、IMFやその他の金融機関からの融資を受け取る道を開く。そして、本件における米国の立場も引き続き重要である。

まとめよう。キース・デイトン氏の駐ウクライナ米国大使の就任決定の際には、ウクライナは、何よりまず、経験豊富な専門家、ウクライナ問題をよく理解する人物を得ることになる。その任命につき、米国からウクライナの国内改革への一貫したサポートを確保し、ロシア連邦の侵略下におけるウクライナの防衛能力強化をも確保するものだと予想することも可能だ。デイトン中将は、モスクワでの勤務経験から、クレムリンがウクライナから何を欲しており、それにどのように対抗すべきかについて、明確に把握している。デイトン氏はまた、非定型的な手法による紛争解決の実質的活動経験も有している。

同時に、新しい駐ウクライナ米大使の任命によって、トランプ大統領の対ウクライナ政策が、少なくとも米大統領選挙までは、大きく修正されるということはおそらくないだろう。しかしながら、大使は、二国間の戦略パートナーシップ委員会の業務再開を促進することは可能だ。この委員会は、二国間関係のレベルを改善し得るものだ。

いずれにせよ、選挙後にホワイトハウスが刷新されるとしても、ウクライナには、デイトン大使という、ワシントンとの対話にとっての理想的なチャンネルを得ることになるのである。それにより戦略パートナーシップの観点から対話が行えるのだ。

ヤロスラウ・ドウホポル、ワシントン


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