政権交代後の宇日関係、今後の期待と課題は?専門家の見方

政権交代後の宇日関係、今後の期待と課題は?専門家の見方

ウクルインフォルム
ウクライナ新政権は、日本に何を期待し、何を提案できるのか?日本政府は、ウクライナと何が行えるのか?

ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は、大統領就任後の数か月で多くの首脳会談を行っている。既に、EU本拠地のブリュッセルをはじめ、ドイツ、フランス、ポーランド、カナダ、トルコを訪れており、その他イスラエル、モルドバ、フィンランド、エストニア、スロバキア、ジョージアの首脳と会談を実施した。近く、米国大統領との会談も開かれるという。ゼレンシキー大統領のこれまでの外交日程を眺めれば、ウクライナはこれまでの欧州統合・欧州大西洋統合路線を一貫して継続しつつ、占領国ロシア以外の隣国関係も同時に発展させていく、という現政権の明確な外交方針が見えてくる。その点で、ゼレンシキー大統領の就任後の100日間は、外政分野は全くもって論理的かつ成功裏に活動できたと言えるではないだろうか。

さて、今後のウクライナ新政権の外交日程を考えるにあたって、今回は対日本外交について考えたい。日本は、ロシア連邦がウクライナ南部クリミアを占領し、ウクライナ東部に侵略した際、アジアで唯一対露制裁を科し、同時にウクライナへ多額の支援を行い、同国の主権と領土一体性を支持し続けている国である。過去5年間、日宇関係は、人的交流から安全保障に至るまで、複数分野で飛躍的な発展を遂げている。逆説的なことだが、このロシアの対ウクライナ侵略こそが、ウクライナと日本をかつてないほどに接近させる結果をもたらしている。近年の両国の緊密な関係の象徴の一つは、2017年の「ウクライナにおける日本年」の実施であろう。

日本政府が既にゼレンシキー大統領を「即位礼正殿の儀」に招待していることが判明しており、時事通信は、その訪日時にゼレンシキー大統領と安倍首相の会談が予定されていると報じた。今月、ニューヨークにて開かれる国連総会において、安倍・ゼレンシキー会談、あるいは、両国外相会談が開催される可能性も排除はできまい。ウクルインフォルムが有す情報では、9月中に、日本から大型議員団がキーウ(キエフ)を訪問することがわかっている。

ところで、7月21日、ウクライナでは最高会議選挙が開催されたのと同日、周知の通り、日本では参院選挙が行われ、これを受けた内閣改造により、河野太郎外務大臣が防衛大臣に、茂木敏充経済再生大臣が外務大臣となった。ウクライナ関係で言えば、2014年に、茂木(当時)経産大臣がキーウを訪問しており、ユーリー・プローダン(当時)エネルギー大臣とエネルギー分野の二国間協力に関する共同声明に署名をしたことを喚起すべきであろう。

これらをふまえた上で、今後のウクライナ・日本関係にはどのような議題がありうるだろうか。ゼレンシキー大統領は、安倍首相との会談時に何を述べるべきで、何が提案できるのか。日本政府は、ウクライナに何を期待しているのか。ウクライナは、日本に何を期待すべきか。どのような分野が両国協力の優先分野となり得るか。現代の外交は、一貫性・継続性と想像力を要求する。これらの質問への手がかりを得るべく、ウクルインフォルム通信は、日宇両国の専門家にコメントを求めた。

補足:本年に入ってから、日本政府が対ロシア国民の査証免除を検討していると、日本の一部報道機関が報じていたが、6月の日露首脳会談時にはそのような決定は発表されなかった。日本外務省は、2014年にロシアがクリミアを占領した際、ロシアとの査証緩和に関する協議を停止するという対露制裁を発表していることから、仮に今回対ロシア国民の査証免除が発表されていたら、それは部分的かつ初めての対露制裁解除を意味するおそれがあった。また、トランプ米国大統領がロシアをG8に復帰させるべきだ提案した件については、日本はこれに明確な反対意見を表明していない。


対日関係は、ウクライナ新最高会議にとっての優先課題の一つ

ボフダン・ヤレメンコ 最高会議議員、外務・議会間協力委員会委員長

2019年9月、ゼレンシキー大統領の外政チームが形成されており、それが実質的なウクライナ外政チームとなっている。そのチームにて、私は、最高会議外務・議会間協力委員会の委員長を担うこととなった。

最高会議には、ウクライナ憲法により非常に具体的な権限が割かれている。ウクライナでは、議会が外政の基本を定め、国際協定の批准を行う。最高会議議員はまた、外政分野への予算配分や同分野の法律、とりわけ、「国際協定法」と「外務法」を通じて、外政をコントロールする権利を有している。そのため、ウクライナ最高会議は、他国の議会同様、議会間連携・協力を積極的に行なっている。

私は、ウクライナにとって、伝統的に重要な国の議会間協力や、欧州評議会、NATO、OSCEの銀総会等への参加の他に、日本との連携がウクライナ新(第9)最高会議にとっての優先課題となったのは、全く偶然ではないと考えている。

倉井高志駐ウクライナ日本国特命全権大使は、新最高会議の外務・議会間協力委員会会合を訪れた最初の大使であった。ウクライナの対日友好議連は、その参加議員数・優先度の点でトップ10に入っている。日本の対ウクライナ友好議連の議員団は、ウクライナ第9最高会議を訪れる最初の議員団の一つとなる。新最高会議が活動を開始して2週間しか経っていないが、これだけの出来事が起きているというのは、印象的なことなのだ!

しかし、ウクライナも日本も、法の支配、民主主義という価値を共有しているのであり、これらのことは本来驚くべきことではない。また、両国は、核関連事件、隣国による領土一体性への侵害といった、歴史上複数の共通点を有している。また、両国の置かれた極めて不安定な安全保障環境により、ウクライナも日本も、防衛・安全保障の能力向上に努力する必要がある。両国の抱える挑戦と脅威が似ているということは、言うまでもなく、それらへの対応を共同で模索する価値がある、という共通理解に至りやすい。

その他、両国国民が互いの文化・芸術に関心を抱くことも、ごく自然なことである。

また、ウクライナは、日本の投資を決定的に必要としている。両国国民は、相互貿易、経済協力を何ら制限なく発展させてきている。

日本が、ウクライナへの多様な支援プログラムと戦略的インフラ・プロジェクト実現の最大ドナー国の一つであるという事実を考えれば、議会間連携を含め、あらゆるレベルでの繋がりを積極的に継続することは、全くもって理想的であり、それは代替なき発展の「道」である。

ウクライナの新議員たちは、この「道」を進み続けられることを、心から嬉しく思っている。私たちは、日本との関係は常に前進していると思っており、日本から差し伸べられた友好の手をいつも感じとっている。


防衛分野での日本の企業との合弁企業設立は試してみる価値がある

セルヒー・コショヴィー アジア太平洋外交・安全保障問題専門家

何より指摘すべきは、日本が、米国・中国に次いで、第3の経済大国であることであり、イノベーション分野の先進国であるということである。とりわけ、再生エネルギー、ナノ・テクノロジー、バイオ・テクノロジー、遠隔医療、IT分野、ロボット工学、家事の自動化、化学産業、医療分野製品といった分野で、日本には優位がある。また、当然ながら、ウクライナと日本は、政治、安全保障、経済、インフラ、ビジネス、環境、文化といった分野の関係をさらに強化すべきである。

日本のようなビジネス志向の国にとっては、ウクライナのビジネス環境改善は、国内改革の成功を示す最良のシグナルとなり、日本企業との協力を開始・深化する上での重要なモチベーションとなる。それにより、日本からウクライナ経済への投資は増えていくであろう。

ウクライナの新内閣が汚職対策改革のような野心的な目的を迅速に実現するにあたっては、既にウクライナ国内で活動している日本企業や、経団連との協力深化、密接な連携も非常に有益であろう。また、ウクライナ・日本関係の長期的・包括的戦略の作成に向けた提案を練るのも有効だ。その際、注意が向けられるべきは、パートナーシップの更なる発展、ウクライナ・日本間のハイレベル政治対話の更なる深化である。

同時に、両国連携は、ハイレベルに限定されるべきでなく、国家機関のあらゆるレベルにて協力が構築されるべきである。ウクライナ・日本間の対話を牽引すべきは、安全保障分野であろう。そのためには、ロシア連邦がミンスク諸合意を完全に履行し終えず、戦争を終わらせず、クリミアの占領をやめない限り、ウクライナは日本の目的別対露経済制裁の継続・強化を積極的に主張すべきである。加えて、軍事技術協力分野の連携強化に関して言えば、防衛調達のために、国営防衛企業「ウクルオボロンプロム」傘下の企業を基盤に、日本の先進的企業との間で合弁企業を設立するというプロジェクトを実現してみるべきであろう。日本の経験と技術にウクライナの能力を加えるというのは、全くもって現実的かつ実質的な連携の構図である。これを提案する理由は、ウクライナの国内法の整備により、防衛産業分野において合弁企業を設立することが可能になっているため、及び、ウクライナ・日本の間で「2+2」フォーマットが開始されているためである。その試みは有益かつ必要なものであろう。

他分野の具体的協力を挙げるなら、大学・研究所間での、研究、インターン、専門性向上、意見交換を目的とする教師・研究者・学会交流の拡大やコンタクトの新規確立、また現存するコンタクトの拡大は積極的に促進すべきであろう。ウクライナは、日本との二国間関係強化に向けて、積極的な立場を取るべきである。


共通の隣国が存在することから、安全保障分野の議題が重要

オスタープ・クリウディク 政治専門家、市民活動家

私の理解では、日本では、安倍首相が引き続き決定採択プロセスにおける重要人物であり、体系的な政権交代が起きたわけではないと考えている。他方で、ウクライナでは、完全な政権交代が生じたのであり、ウクライナ新政権において、対日関係をどうすべきかという点で理解が不足しているおそれがある。

ウクライナ・日本関係は、一定程度、ロシアと中国という二つの外国との関係の人質となっていると言える。ロシア・ファクターにおいて、鍵となるのは、ウクライナの東部戦線のダイナミズムと、ウクライナの国内変革、そして、G7内部におけるロシアのG8回帰可能性に関する見解の変化であろう。中国ファクターは、「モトール・シーチ」社売却に関する動向の行方である。追加的なファクターは、米国の存在であり、同国の抱える国内矛盾の動向である。

私は、日本がウクライナから期待していることは、一貫性、約束したことへの忠実性、前政権との合意の引き継ぎだと思っている。モトール・シーチ社売却が止められない場合、日本からの信頼は破綻する。ウクライナ新政権の行動から見れば、当面劇的な変化は生じなさそうである。ただ、中国の投資家にモトール・シーチ社が売却されない場合、では同社を今後どうするのか、という問題が浮上する可能性がある。

協力分野について言えば、第一に、ウクライナと日本が共通の隣人を抱えており、両国ともその隣人により領土を占領されているという点から、安全保障分野の議題が重要であり続ける。そして、ロシアと中国が進める軍事協力は、日本にもウクライナにも課題を投げかけている。第二に、私たちは、経済協力、特に日本からウクライナへの投資、を進めるべきであろう。

第三は、科学・文化分野の協力である。両国は、互いに関する知識が不足しているという問題を抱えており、相互の国民が理解を深めることで両者は、特に宇宙分野、核技術分野、加えてもしかしたら、航空、農業、ITの分野での競争力を強化できる可能性がある。


不安や警戒感があるからこそ、「2+2」の対話枠組みを効果的に活用すべき

合六強、二松学舎大学国際政治経済学部専任講師

日本とウクライナの関係は、過去5年間で急速に発展した。日本がウクライナとの関係を強化した背景は大きく2つに分けられる。第1は、二国間関係の文脈から、日本側には、ウクライナが欧州統合のために必要な反汚職対策や法の支配の徹底などの国内の改革や経済改革を推し進めることへの期待がある。第2は、戦後日本の発展と繁栄の土台となってきたルールに基づく国際秩序(the Rules-based international order)がロシアや中国などの勢力によって挑戦を受けているという点である。こうしたなかで、日本は米国との同盟関係をさらに深化させるのみならず、民主主義や人権、法の支配といった価値や規範を共有する欧州諸国との関係を強化しており、ウクライナとの関係強化もこの文脈に位置づけられよう。

これらを背景に2014年以降、日本はウクライナに対して大規模な支援を行なってきたし、首脳レベルの相互訪問も実現した。また国民レベルでも「ウクライナにおける日本年」が象徴するように、人的交流・文化交流が着実に深まっている。

しかし、日ウクライナ関係はこれに留まっていない。あまり目立たないものの、より実践的な成果として、昨年秋に両国の間で初めて「2+2」の枠組みで安全保障対話が実施され、両防衛当局の間では「防衛協力・交流に関する覚書」が締結された。これらの対話や覚書は、価値の共有や信頼関係が前提になっている。こうした安全保障対話は、ヨーロッパのみならず、アジア太平洋における安全保障環境が悪化するなかで、両国が相互の情勢を理解し、両地域の安全保障が不可分であることを理解するよいきっかけになったのではないか。

もちろんウクライナ側には近年の日本の対ロ接近への不安があるだろう。他方、日本側にはウクライナ(社会)における中国の影響力の浸透・拡大への警戒感が少なからず存在する。特に、軍事分野を含め様々な分野において中国の投資が引き起こしうる影響についての懸念がある。しかし、こうした不安や警戒感があるからこそ、上記の対話枠組みを効果的に活用すべきである。両国の情勢認識を完全に一致させることは難しいとしても、認識のギャップを少しでも埋め、互いに有益なかたちで協力分野を拡大していくことが今後の課題となろう。

日本としては、ウクライナ側で新たな政権が誕生し、議会のメンバーが大きく入れ替わったとしても、ウクライナが歩んでいく方向性に変化がないこと、また日ウクライナ関係をより発展させようという方向に大きな変更がないことが期待されている。

平野高志、キーウ

(Україніська версія статті)


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