ゼレンシキーの欧州初訪問:専門家たちの評価

ゼレンシキーの欧州初訪問:専門家たちの評価

ウクルインフォルム
ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)を初めて訪問した。特に批判は聞かれない。ウクライナの西へ向かう歩みは続いている。

ゼレンシキー大統領は、大統領として初めての外遊を行い、欧州の代表者たちと会談を行った。大統領が会談したのは、ユンケル欧州委員会委員長、ストルテンベルグNATO事務総長、トゥスク欧州理事会議長、ドゥダ・ポーランド大統領、その他のEU幹部である。もちろん、この訪問から何かしらの具体的結果は、誰も期待していない。今回の外遊は象徴的なものであり、自らを示し、皆に見てもらうことが目的であったのだ。ユンケル欧州委員長がウクライナからのゲストを笑顔で友好的に迎えたことから判断すれば、ゼレンシキー大統領はブリュッセルにて暖かく受け入れられたということであろう。同時に、最も重要なことは、欧州の友人たちが、ウクライナの外政・内政の路線に変更がないとのシグナルを受け取ったことである。外政路線とは、EU・NATO加盟方針であり、内政路線とは重要改革の継続である。そして、彼らは、改革の道とロシア連邦の侵略への抵抗を今後も支持すると発言した。つまり、ウクライナの新大統領は、大きな信頼保証を得たのである。これからは、その信頼に応えていかなければならない。

ゼレンシキー大統領の初外遊を、ウクライナの政治専門家はどのように評価しているであろうか。ウクルインフォルムは、複数の専門家に対して、新大統領の今回のブリュッセル訪問について質問した。

オレクシー・ミナコウ、政治専門家

「ゼレンシキーに対する特別は批判はない。唯一、足りなかったものがあるとすれば、ウクライナのNATO加盟路線における今後の行動に関する具体性である」

第一に、ゼレンシキー氏の最初の外遊がブリュッセルであったことは肯定的である。それは、ウクライナのEUへの歩みが続くことを象徴しており、同時にウクライナが地政学的に方向転換するのではないかという疑念を全て払拭している。概して、今回の外遊は、成功だと評価している。なお、ソーシャルメディアのユーザーたちは、ゼレンシキー氏のNATO事務総長との共同記者会見時の演説を小ばかにしている。確かにゼレンシキー氏は英語で書かれたメモを下手に読み上げ、その後質疑応答ではウクライナ語に切り替え、また自身の考えも明確に示せなかった。ゼレンシキーは、言語の面では多くのことをせねばならないだろう。なぜなら、今回の演説により、ポロシェンコ前大統領の方が、言うまでもなく、説得力ある外交官・演説家であったことが思い返されてしまったからである。しかし、ゼレンシキー大統領の発言した内容こそが最も重要なのであり、そこには特別な批判はない。私たちは、ロシアに対する圧力強化が不可欠であるという、ゼレンシキー大統領の重要な呼びかけを聞いた。この点で、ゼレンシキー氏は、実質的にポロシェンコ前大統領のレトリックと政策を継続したのである。さらに、ゼレンシキー氏は、コロモイシキー氏(大富豪)や、同氏のデフォルトだとかプリヴァト銀行の裁判だとかの発言とも一線を画した。唯一、足りなかったものがあるとすれば、ウクライナのNATO加盟路線における今後の行動に関する具体性である。とりわけ、NATOの加盟のための行動計画を得るための申請をいつ提出するつもりなのかにつき、発言がなかった。おそらく、ゼレンシキー氏は、ウクライナの東部や南部での支持を失わないために、この方面では急いで行動するつもりはないのであろう。そのため、彼は、NATO加盟の国民投票と事前の情報キャンペーンが不可欠だという発言を行うことで、「補償」したのであろう。実際には、EU加盟の手続きと異なり、NATO加盟にそのような国民投票は必要ではない。

ゼレンシキー氏の有権者支持を維持しようとする試みについていえば、今のところは大統領と有権者の間の「ハネムーン」期間が続いており、彼には高い信頼がある。ゼレンシキー大統領への有権者の態度が変わりうるのは、半年から1年後、ウクライナ国民が、公共料金が下がらない、戦争が終わらない、著しい経済成長がない、公正な裁判がない、などと気づく頃であろう。その頃、たとえ失望が訪れても、ゼレンシキー氏の人民奉仕者党は、すでに議会に入っており、新内閣の組閣もできているであろう。つまり、遅すぎる、というわけである。

ヴォロディーミル・フェセンコ、政治専門家、政治分析センター「ペンタ」代表

「訪問は全体的に肯定的。西側パートナーたちは、ゼレンシキー氏から、聞きたかったことを聞けた」

何よりまず、コンタクト確立の訪問の重要性を指摘すべきである。ゼレンシキー氏は大統領として初外遊で、しかもブリュッセルを訪問し、そこでウクライナの外政が不変であることを改めて明言したのである。重要なことは、NATO統合路線が維持されているということである。それ以外のことは、様々に評価できようが、細部に過ぎない。ゼレンシキー氏が全ての課題をこなせたか?その問いに答えるには、今回の訪問がゼレンシキー氏が大統領として行った初外遊であるという事実を考慮せねばならない。経験は、積まれ始めてこそいるが、まだない。同時に、コミュニケーション、コンタクトの確立、スキャンダルや問題の不在の観点からは、私は、ゼレンシキー大統領は、今回概してよくやったと思っている。訪問は肯定的である。例えば、私にとっては、ゼレンシキー氏とユンケル氏の対話が非常に象徴的であった。ゼレンシキー氏は率直で、気に入られるタイプの人間である。もちろん、彼の英語は…。私が理解する限り、彼はまだ自信がないのであろう。しかし、彼が、少なくとも努力し続けていることは、良いことである。

次に、ゼレンシキー氏の主要なメッセージについてである。彼のミンスクに関する発言、NATO加盟の国民投票を、「親露的だ」とは、呼び難い。NATOの公式代表者たちは、キーウ(キエフ)を訪問した際、とりわけ、ヤルタ戦略会議の際、いつもウクライナの政権高官に対して、「ウクライナがNATOに加盟したいのであれば、あなた方は、それが個人や特定の政治グループの立場ではなく、政治エリートと国民の過半数の立場である、ということを証明せねばならない」と強調する。それゆえに、NATOやEUに加盟する国々は、そのほとんどが加盟の前に国民投票を行っているのである。そのため、ゼレンシキー氏の発言には、破壊的な要素や異常なものは何もない。

ミンスク諸合意に関してだが、合意履行に向け妥協の模索を活性化するという(ゼレンシキー大統領の)立場は、欧州・大西洋コミュニティは、そもそも以前から歓迎している。そのような発言は多くあるのであり、その立場をまったく親露的だとみなすことは正しくない。反対に、ブリュッセルのパートナーたちは、ゼレンシキー氏から聞きたかったことを聞けたのである。

最後に、ゼレンシキー氏の支持について。親露マスメディアの報道を読んでみると、彼らが今回のブリュッセル訪問に大きく失望していることがわかる。これがどの程度、とりわけ東部の、支持率に響くかは、なんとも言い難い。しかし、潜在的なリスクは存在する。また、そもそも何らかの発言が支持率に影響を与えることは非常にまれであり、具体的行動の方が影響力があるということも理解すべきである。5月の最新の世論調査結果では、(ゼレンシキー大統領系の)人民奉仕者党は、48.3%の支持を有していたが、これは、ゼレンシキー氏が最高会議(国会)との対決姿勢を見せたことによるものだと思う。そして、この対決において、有権者の圧倒的多数は、大統領側についている。他方で、ミンスクにおいて、何も解決しなければ、年末ごろには、彼の支持層の一部の間で、一定の失望が生じることは予想しておくべきであろう。

ドミトロー・シンチェンコ、政治専門家

「ゼレンシキー氏は、失敗しなかった。それが重要である」

大統領府は、新大統領の初外遊としてのブリュッセル訪問を、ウクライナの外交路線が変わらないことの証拠として見せようと努力していた。これにより、彼らは、ゼレンシキー氏に親露的傾向があるのではないかという疑いを晴らそうとしているのである。しかし、実際には、それ自体は何も示さない。ヤヌコーヴィチ(元大統領)が最初の外遊でどこを訪問したか覚えているであろうか。モスクワではなく、ブリュッセルなのだ。そのため、現在、ゼレンシキー氏は、ヤヌコーヴィチ氏と同じ行動をとっているだけである。それは良いことであろうか?ゼレンシキー氏がプロトコルにのっとった服装(スーツ姿)で現れたことは、良いことである。ゼレンシキー氏が外務省の準備した演説文を、捻じ曲げることなく読み上げたことも良いことである。つまり、彼は失敗しなかった。そしてそれが重要なのである。悪いことはあったか?ゼレンシキー氏の発言が、自身の立場なのか、他の人の立場か、私たちはわからなかった。そもそもゼレンシキー氏に立場や理解を有しているのであろうか。また、彼の演説の内容は、空っぽである。彼は橋を作ると言ったが、何の橋の建設のことだか不明であった。しかし、彼が、降服を思わせるような発言をしなかったことは、良かった。つまり、何ら悪いことは起きなかったのだが、良いこともなかったのである。現状維持は、後退よりましである。しかし、ゼレンシキー氏が、ロシアの制裁解除の試みを撃退しようと思っているのか、そうであれば、どのように撃退するつもりなのか。今のところ、不明である。

ゼレンシキー氏が「皆に気に入られようとしている」点に関しては、ゼレンシキー氏は、自らの支持者に失望されないように、一義的な発言や行動は避けていくだろう。さらに、有権者は、心理的に自らの投票を誤りだとは思いたくないのであり、正当化できるものは、正当化しようとするであろう。そのため、有権者の最高会議繰り上げ選挙でのゼレンシキーに対する支持は、大きく変わらない。そして、選挙後の支持率変化は、彼にとって意味を持たないのである。

ウラディスラウ・セルデューク、政治専門家、「国民外交」基金専門家

「今回の訪問は有益だった。しかし、ゼレンシキー氏は、今年の秋にもう一度EU幹部と会う必要がある」

私は、今回のゼレンシキー大統領のブリュッセルへの初外遊は、二つの理由から有益だったと考えている。1つは、NATO事務総長と会ったこと、もう1つは、ドゥダ・ポーランド大統領と対話したことである。EU現首脳陣との会談は、よりウクライナ国内向けものである。それは、EU関係で建設的な結果を求めるというより、ウクライナの方向性に変化があるかもしれないと考える人たちを安心させるためのものであった。5月の欧州議会の選挙後、EUでは勢力再構成が行われ、幹部が交代し、もしかしたらそれを受けてEUの政策に修正があるかもしれない。そして、そのことは、ゼレンシキー氏は今年の秋にもう一度新たなEU幹部に会いに行く必要があるということでもある。しかし、NATO事務総長との会談は肯定的なものであったし、NATOのウクライナへの態度に関して、「時計の針を調整する」役割を果たした。ゼレンシキー大統領がドゥダ・ポーランド大統領と会談したのは、非常に良いニュースである。ポーランド・ウクライナ二国間関係は、とりわけ歴史政策の文脈で、正常化を要しており、また戦略的関係においては、対話もまた必要なのである。

ミロスラウ・リスコヴィチ、キーウ


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