最高会議選挙:ウクライナの有権者にとって最善の結果は何か

最高会議選挙:ウクライナの有権者にとって最善の結果は何か

ウクルインフォルム
7月21日に投票日を迎える最高会議(国会)選挙。出馬するのは、旧来の政党、新政党、有名無実の政党、そして大富豪(オリガルヒ)たちが政界に送り込みたがっている人物である。

ウクライナの新たな選挙戦は、実質的に、ヴォロディーミル・ゼレンシキー新大統領の最高会議での就任式の際、最高会議解散の意向を発表、内閣総辞職を呼びかけた日(5月20日)に始まった。

ゼレンシキー大統領は、国際通貨基金(IMF)ミッションとの会合にて、「ウクライナは火急の変化を必要としているが、最高会議選挙が10月に行われれば、多くの時間が失われてしまう」と、最高会議解散の理由を説明した。

「ウクライナ最高会議議員選挙法」第15条によれば、最高会議繰り上げ選挙は、大統領による最高会議期限前解散の大統領令が公布されてから、60日間の期間の最後の日曜日に行われることになっている。そして、最高会議選挙は、解散大統領令交付の翌日である、5月24日に公式に始まったことになり、投票日は7月21日となった。

選挙は、これまでと同じ現行の選挙制度で行われる。450名の最高会議議員のうち、225名が政党名簿を用いた比例制にて、225名が小選挙区制で選出される。政党が比例制で議席を得るには、5%以上の得票をしなければならない。小選挙区制では、各選挙区で最も票を得た候補者1名が当選する。

最高会議解散の大統領令が発効し、選挙運動期間が進行している間は、選挙法の改正は禁止されている。しかし、この大統領令が何らかの理由で投票日前に失効したり、あるいは、投票日が別の日、より遅い日程に変更されるようなことがあれば、最高会議が選挙制度を変更できる可能性が生じる。その場合、例えば、政党が議席を得るための5%の閾値が下げられたり、複数政党が団結して一つの「政党ブロック」として選挙にのぞむことを可能にしたり、現在、順位がつけられている「拘束式」政党比例名簿の順位をなくして、「非拘束式」比例名簿を導入したり、といった変化が考えられる。

最高会議

現在の最高会議には、定員450名のところ、423名の議員がいる(注:2014年の最高会議選挙で、クリミア自治共和国、セヴァストーポリ市、ドネツィク・ルハンシク両州一部地域の小選挙区にて投票が行えなかったため)。この中で、ブロック・ペトロ・ポロシェンコ(BPP)党会派(135名)、人民戦線党会派(80名)が最近まで「与党連合」を形成していた。2014年の最高会議選挙後は、上記2会派に加え、自助党、急進党、祖国党も与党連合に加わっていたが、この3党は、2016年に与党からの離脱を発表した。しかし、与党離脱の正式な手続がとられなかったため、以降3年間、与党連合をめぐる法的状況が議論の対象となり続けていた。与党連合は、憲法上最高会議過半数(226名以上)で形成されることが規定されている。アンドリー・パルビー最高会議議長は、繰り返し、与党連合は226名以上で存在していると述べていたが、与党連合に加わる議員のリストは誰も目にすることがなかった。また、ウクライナ憲法は、与党連合に政党会派以外に無所属議員が加わることができるか否か、直接的な規定をしていない。

同時に、実質的には、BPP党と人民戦線党の2会派に加え、議会の採択に必要な残り20~30の票が野党の中から見つけ出されていた。これにより、政府も大統領も、臨時の過半数を得られていたのである。そして、この3年間の与党連合の「法的な不確定さ」が、今回ゼレンシキー大統領による最高会議解散の根拠となったのである。

最高会議解散に対して、議員たちが大きな反対を起こすと思われていたが、実際には、そうはならなかった。大半の議会政党が、各々、繰り上げ選挙にメリットを見出したのである。各党は、直前の大統領選挙にて展開され鍛え上げられた選挙機構を持っている。一方で、ゼレンシキー新大統領の「人民奉仕者党」は、支持率こそ最大ではあるが、現時点では中身のない「亡霊政党」である。人民奉仕者党に対抗する政治勢力は、同党が政党として確立するための時間を与えない方が有利だとみなしたのであろう。

政府

5月20日の新大統領は、就任式にて、議会解散とともに内閣総辞職も要求した。その日の夜、ヴォロディーミル・フロイスマン首相は、辞意を表明した。憲法では、閣僚会議(内閣)の辞職は最高会議に権限がある。首相と大臣は、議会に対して辞意を表明する権利のみ有すのである。

なお、最高会議により首相が解任されれば、その他の内閣は総辞職することが定められている。そして、最高会議は、新内閣を組閣しなければならないが、組閣が終わるまでは、総辞職した旧内閣が代行地位にて職務を執行しなければならない。

同時に、フロイスマン首相は、自らの政党の結党と、最高会議選挙への出馬を表明した。党大会は、6月初旬に行われるとのこと。首相に近いオレクサンドル・サイェンコ閣僚会議相は、テレビ番組にて、同党には「若くて肯定的経験を積んだ人物」が入ると発言した。また、同大臣は、「現在の閣僚が同プロジェクト(フロイスマン首相の政党)に入る可能性は排除されない」とも述べた。

政党支持率

世論調査によれば、ゼレンシキー新大統領の政党「人民奉仕者党」の支持率は、約40%である。これに対して、現在の最高会議に議席を持つ旧来の政党は、選挙戦への準備・経験があるのと同時に、有権者の目には「変化が必要」だと思われており、その点では最も脆弱でもある。旧来政党の支持率は、事実、低い。レイティング社が5月前半に実施した世論調査の結果は以下のとおりであった。

BPP党(ポロシェンコ前大統領系) 10.6%

祖国党(ティモシェンコ党首)     9.1%

野党・生活党(ボイコ議員所属)   10.9%

野党ブロック党(ノヴィンシキー議員等)3.5%

急進党(リャシュコ党首)       3.3%

自助党(サドヴィー党首)       2.0%

人民奉仕者党が約40%の支持率を有す中、旧来政党は、短い期間で状況を変化させなければならない。私たちは、向こう数週間、各党の党大会、多くの声明やメッセージを目撃することになろう。

これらの政党は、政党ブランドの再構築をはかっている。例えば、BPP/連帯党は、党名を「欧州連帯党」に変更した。また、ペトロ・ポロシェンコ前大統領は、5月31日に刷新された党による党大会が開かれ、市民団体代表、ボランティア、志願兵、若い専門家が紹介されると述べた。

アンドリー・サドヴィー・リヴィウ市長(党首)率いる自助党は、5月29日に、フォーラムを開催。同党リストは、党首が決めるのではなく、党員による秘密投票にて形成される。

ユリヤ・ティモシェンコ祖国党党首(元首相)は、繰り上げ最高会議選挙への出馬の準備を表明し、勝利の際には首相候補を推薦する容易があると発言している。

議会外政党

大統領選挙で6%の支持率を得たイーホル・スメシュコ元保安庁長官は、「力・名誉党」を率いて議会選挙に出馬する。世論調査でも、同党は約5%の支持を得ている。

元国防相(2005~2007年)のアナトリー・フリツェンコ党首率いる「国民立場党」も約5%の支持がある。この二人の軍人、スメシュコ氏とフリツェンコ氏の政党は、それぞれ、市民団体代表者から構成されており、党首を中心として高い統制を有す政党である。

ミヘイル・サーカシヴィリ元オデーサ州行政府長官の「新勢運動党」は、2017年政党登録当初、通りでのエネルギッシュな活動で一時的に注目を集めた。しかし、サーカシヴィリ氏が国外追放をされると、衰退した。現在、サーカシヴィリ氏がウクライナへ帰国したことで、同党は積極的な活動を再開するかもしれない。

5月20日、ヘンナジー・ケルネス・ハルキウ市長は、ヘンナジー・トルハノウ・オデーサ市長とともに新しい政党結成と、同党での議会選挙出馬を目指すことを発表した。翌日には、ボフダン・アンドリーウ・ウジホロド市長が同政党への参加を表明した。トルハノウ・オデーサ市長は、誰が同党に加わるのかについて、6月上旬に予定されている党大会で発表することを約束している。

「人民奉仕者党」:存在しない大人気政党

存在しないからこそ、人気があるということかもしれない。物質的に不在であるからこそ、各自が理想を愛でることを可能としているのかもしれない。各有権者が想像の中で作り出しているこの政党は、若くて、進歩的で、理知的で、勢いがあり、公正な(他にも自由に形容できる)政党である。有権者は、同党のリーダー(ゼレンシキー大統領)のみを見て、その他の人物は、そのリーダーの選択に任せるのだろうか。

人民奉仕者党は、同党に加わることを希望する自発的な人物にイニシアティブを強調している。同党の選挙本部長であるオレクサンドル・コルニイェンコ氏は、候補者探しをどうするのかと問われると、「私たちには、大統領選挙時に様々なプロジェクトに登録した60万以上の人々がいる。とりわけ、私たちは、この人々をベースに活動しようと思っている」と返答した。

「声党」あるいは「ヴァカルチュークの声党」

音楽家のスヴャトスラウ・ヴァカルチューク氏は、今年の大統領選挙の前、ゼレンシキー氏の対抗馬だと見られていた。同氏は、皆によく知られた、パブリックではあるが、政治家ではない人物である。しかし、大統領選挙には、彼は出馬しなかった。専門家の中には、そのことがゼレンシキー氏の勝利の道を開いたのだと考える者もいる。ロックバンド「オケアン・エリジ」の44歳のリーダーは、物理理論での博士号を有している。2017年には、米国のスタンフォード大学にて、「政治リーダーシップ」のコースを履修していた。彼は、社会に幅広く受け入れられた人物である。

同時に、ヴァカルチューク氏の政治信条である、愛国主義・親欧州志向・リベラル的価値観の有権者層には、競合政治勢力が多いことも忘れてはならない。競合する政治勢力としては、ポロシェンコ前大統領の政党、サドヴィー・リヴィウ市長の自助党、フリツェンコ氏の国民立場党がある。さらには、ゼレンシキー大統領の人民奉仕者党の支持者の一部、とりわけ若い層も、同様の政治志向を有している。

その中で、ヴァカルチューク氏は、声党は議会選挙のために作ったのであり、他の政治勢力と統合することはないと強調している。

オリガルヒ(大富豪)の意向

ウクライナでは、あらゆる選挙において、重要な参加者となるのがいわゆる「オリガルヒ」(大富豪)である。彼らは、国の最大の資産家であり、最も利益を得る経済分野を掌握している人物である。彼らをめぐる状況は、政権機構や国家首脳陣の間でしばしば問題となる。

ウクライナの所有資産額トップ100の人物の資産は、ウクライナのGDP成長率より約12倍早い。そして、その速度は、昨年さらに加速している。

一般に、公の場に名前が出てくるオリガルヒは、システム・キャピタル・マネージメント・グループのリナト・アフメトフ氏、プリヴァト・グループのトップであるイーホル・コロモイシキー氏、投資グループ「インターパイプ」の代表であるヴィクトル・ピンチューク氏、グループDF取締役会会長のドミトロー・フィルタシュ氏などである。ウクライナには、約35の主要なオリガルヒ・グループが活動している。2018年時点で、52人のウクライナのビジネスマンが、1億ドルから10億ドルまでの資産を有し、7名が10億ドル以上の資産を有していることがわかっている。

公の場では、彼らは「影の政権」として、悪者扱いされがちである。各政党は、オリガルヒとの談合の可能性を「断固として」排除すると宣言し、彼らの選挙運動は「中小企業が資金提供をしてくれている」と説明する。そうでなければ、有権者の支持を得られないのが分かっているのであろう。同時に、オリガルヒ側も、同様の発想からか、自身の政党への資金援助はしないと述べており、また様々な「リスク分散」を図っている。ただし、オリガルヒの利益を代表する人物や、影響グループは、様々な政党の様々な機構の中に入り込んでおり、オリガルヒは、選挙結果の多くの場合に利益を維持できる仕組みが作られているとみられている。

理想的な選挙結果は?

ウクライナ国民にとっての最善の結果は、政党の看板が付け替えられ、与党連合形成に議員が何人足りないか…といった算数が行われることではないだろう。経済モデルの変更、オリガルヒのコントロール、そのためには、競争的環境と公正な裁判システムを確保する効率的法制度を作り出せる議員が必要である。

ウクライナには、選挙実施の文化が成長している。単なる選挙の勝者が利益を得るのではなく、国全体が利益を得られるような選挙であるようでなければならない。

オレクサンドル・ヴォリンシキー、キーウ


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