ムスタファ・ジェミレフ・クリミア・タタール人指導者
私たちの目的は、ブダペスト覚書にもとづく「クリミア返還プラットフォーム」を創設すること
03.01.2019 10:57

私は、ムスタファ・ジェミレフ氏と、トルコの首都アンカラで出会った。彼は、ニューヨークから、アンカラ経由でキーウ(キエフ)へ帰る途中であった。彼は、アンカラでは「クリミア、黒海、アゾフ海の軍事化決議」と「ロシア占領下クリミアにおける人権侵害決議」いう2つの歴史的な決議を採択したことに関して、トルコの外交官や議会の友人と議論をする予定となっていた。クリミア・タタール民族の指導者である彼は、今回の国連総会の決議が、彼のふるさとであるクリミアの解放を早めると確信している。ジェミレフ氏は、生きているうちにクリミアへ戻るつもりでいる。

クリミア・タタール人指導者であり、ウクライナ最高会議(国会)議員であり、クリミア・タタール民族問題大統領全権であるムスタファ・ジェミレフ氏が、今回、ウクルインフォルムへのインタビューにて、ニューヨークへの渡航、国連総会の投票、ロシアの陰謀、エルドアン・トルコ大統領のウクライナ訪問の可能性、ヴァルソロメオス1世コンスタンティノープル総主教からの感謝の言葉について話してくれた。

ジェミレフさん、あなたはニューヨークから大きな勝利を持ち帰りました。国連では、二つの決議が採択されました。一つは、クリミア軍事化決議、もう一つは、クリミア人権侵害決議です。投票がどのように行われたのか教えてください。議場の雰囲気はどうでしたか。ロシアは抵抗しようとしましたか。

正直に言えば、ロシアや同国を常に支持する国々の演説は予想していました。ですから、ロシア代表の演説内容には驚きませんでした。粗雑かつ根拠に乏しいもので、主な内容は「クリミアは我々の土地であり、やりたいことをやっている」といったものです。彼らは、国際法に明確な違反している内容につき言い訳しようとしましたが、それに対しては各国代表団が適切に対応していました。

私を若干不安にさせたのは別の国、アルメニアのスピーチです。以前は、アルメニアは、明確に「クリミアはロシア領である」と述べていましたが、最近はそれほど明言しなくなっていました。しかしながら、彼らは今回のクリミア決議には反対票を投じたのです。つまり、同国がロシアの衛星国である限り、彼らの投票がどうなるかは不透明だということです。それでも全体を見ると、クリミア軍事化決議で、ロシアを支持した国が19か国だけだったという事実は、希望を与えてくれます。もちろん、多くの国が棄権したことには、驚きました。それは私たちの弱いところであると思いますし、棄権した国に対する今後の働きかけが大切でしょう。

例えばどのような国ですか。

カタールとサウジアラビアはいつもはウクライナを支持しているのですが、今回は残念ながら棄権しました。この手の国は、このような問題に際して、法的観点や倫理的課題ではなく、完全に政治的課題が優先されます。つまり、彼らは、ロシアから武器を得ていたり、同国と石油輸出国機構(OPEC)の中でエネルギー関係の協力があったりするのです。

また、私は、ウクライナへ戻ったら、インドネシア大使とも話したいと思っています。私たちは、以前インドネシアを訪問し、副大統領と会談し、記者会見も開きました。インドネシアでは、クリミア占領に関して公正な立場を維持し、その立場を公言しています。しかしながら、今回の投票では、彼らはまたも棄権したのです。同国は、私たちに、人権決議の共同提案国になり、他のイスラム関係諸国に対する影響力を行使すると約束をしてくれていたのですが、どういうことか、同国はまた棄権しました。推測するに、原因は(カタールやサウジアラビアと)同じだと思います。インドネシアもロシアから兵器を購入せねばならないのです。私たちは、同国の兵器購入先をウクライナの国営ウクルオボロンプロム社に変更させようと努力していますが、今のところ、官僚主義の問題を含め、複数の理由でうまく行っていません。同様のことは、サウジアラビアに関しても言えます。

米国は、トルコとの関係改善を目指している

ニューヨークでは、誰と会い、何について協議しましたか。

アメリカの国連代表代行であるケリー・キュリー氏と長時間の会合の機会を得ました。情勢一般、様々な問題に関連する今後の行動について話した他、アメリカとトルコの関係についても話しました。私たちは、現在、私たちクリミア・タタール人を最もサポートしているのは、実質的にトルコであること、そして、アメリカとトルコの関係が冷却すると、クリミア・タタール人にとっては問題となることを説明しました。私たちは、欧州・大西洋統合を志向していますが、同時に、トルコと距離を取ることも望んでいません。すると、キュリー氏は、現在、アメリカとトルコの関係は改善の傾向があり、両国は今以上にウクライナをサポートしていくであろうと述べました。展望は非常に良いのです。

アメリカ国務省では、私たちは、ジョージ・ケント国務次官補代理(欧州・ユーラシア担当)と会談しました。また、ニコライ・ポロゾフ弁護士も同席しました。彼は、ウクライナ外務省と国防省とともに捕虜と政治囚の解放に取り組んでいる司法専門家グループの調整係を担っています。生産的な対話ができました。しかし、若干不安になる話もありました。アメリカ側は、常にウクライナを支援しようとしていると述べたのですが、しかし、侵略国ロシアの核燃料がウクライナの核関連施設へ持ち込まれるという情報があり、アメリカ側がそれを懸念しているという話でした。本件に関するウクライナ側の立場は、ヴァレリー・チャーリー駐米ウクライナ大使が詳細に説明していました。

ロシア連邦の崩壊で、クリミア占領が終了する可能性は排除されない

アメリカは、クリミア返還のための基盤を司法的手段で準備するには、今後何をしていくべきだと考えていますか。

これまでにも述べたことがありますが、もう一度言いましょう。12月17日に国連が採択したクリミア軍事化決議の真価は、同決議にて初めて「ブダペスト覚書」が言及された点にあります。国連が、本件はブダペスト覚書への違反だ、ということを支持したのです。これは非常に重要です。そして、私たちの今後の目的は、このブダペスト覚書にもとづいた「クリミア返還プラットフォーム」を創設することです。この方向で作業をしていきます。なお、私たちは、このことについて、アメリカ議会議員とすでに話しました。彼らは、この「クリミア返還プラットフォーム」創設のアプローチを賢明だとみなし、彼らにも要請文書を送るように提案しました。その他のブダペスト覚書署名国の他、後に加盟した中国とフランスにも要請するといいとの提案もありました。同覚書には、ウクライナが核兵器を放棄する代わりに、領土一体性と安全保障の保証が得られると明確に書かれているのです。その保証は現在一体どこにあるのでしょうか。ロシアは、予想通り、このようなプラットフォームの創設には真っ向から反対しています。しかし、それは大して重要ではありません。最初は拒否させておけばいいのです。しかし、プラットフォームは創設します。そして、強力な制裁が科されていけば、ロシアは妥協することになるでしょう。

私は、西側諸国の首脳には、もし(2008年に)ジョージア(グルジア)領がロシアに占領された際に、最低限でもクリミア占領時と同じ程度の対応がとられていたら、クリミアの占領は起こらなかったであろうと繰り返し述べています。また、私は、クリミアの脱占領が、ロシアの崩壊により実現する可能性を排除していません。プーチンの愚行の数々は、それをもたらすと考えています。

アゾフ海情勢、ウクライナ海軍軍人のロシアによる拘束問題についても提起していますか。

アゾフ危機をもたらした不穏な情勢に関しては、あらゆる場面で話しています。これに関して、うまく行かなかったことが一つあります。2本目のクリミア決議、人権関連の決議が採択される前に、私たちは、デモンストレーションを準備していました。スローガンは、「ロシアは、海賊国家である。海賊は、国連安保理のメンバーではあり得ない」、「私たちの海軍軍人と船舶を返せ」という内容です。しかし、22日の夜、国連総会期間が終わりそうになり、私たちはこの決議は審議されないと思い、ニューヨークからウクライナへの帰路に着いたのです。このウクライナへの帰り道で、私たちは、この決議が結局審議され、採択されたという情報を受け取りました。総じて言えば、この2本目のクリミア決議の採択は、一年の終わりのうれしい「プレゼント」となったわけですが。

エルドアン・トルコ大統領は、ケルチ海峡の自由な通行について提起するよう指示

ニューヨークからキーウへは、ジェミレフ氏は、アンカラを通じて移動しました。その際、トルコ議会の議員や同国外務省の代表者と会談していますね。どのような議題を話したのでしょうか。

トルコ外務省では、私たちは、国連総会でのクリミア決議の採択時に棄権した国々に対して、トルコは何ができるか、ということについて話しました。この問題は難しいものですが、全体で見れば、ウクライナへの支持は増加傾向にあると言えます。トルコの立場は、この点で効果的です。

トルコ外務省では、レジェプ・タイープ・エルドアン大統領のウクライナ南部ヘルソン州への訪問の可能性について話しました。同地のクリミア・タタール人たちと会い、同地方への支持を示すためです。外務省の返答は、同訪問を近い将来に実現することは難しい、なぜなら、トルコでも地方選挙が予定されており、3月31日までにそのような訪問を実現することはまずあり得ないというものでした。しかしながら、概して、実現可能性はあります。大統領ではなく、外務大臣レベルになり、チャヴショール外相がウクライナを訪問する可能性も排除されません。

トルコは、アゾフ海情勢をどのように評価していますか。エルドアン大統領は、代理人になる準備があるとも発言していましたが、その話もありましたか。

チャヴショール・トルコ外相は、エルドアン大統領からあらゆる場面でケルチ海峡の自由な通行問題と捕虜となっているウクライナ軍人の解放問題について提起するよう指示を受けたとの説明がありました。同外相はまた、プーチンは本件の解決を求めておらず、(ウクライナ大統領)選挙まで軍人の解放は起こらないような印象を受けるとも述べていました。プーチンは、軍人の解放が選挙前のポロシェンコ大統領にとっての「プレゼント」になると見ているのです。つまり、プーチンは、現状を、ウクライナの選挙への影響力行使の道具として利用したがっているということです。シニカルなことであり、法に反する行為であるだけでなく、倫理にも反します。人間を政治の目的に使うというのは、体系だった人質行為です。

また、トルコでは、アメリカで話したのと同様に、選挙前にはロシアに対して警戒しなければいけないとも話しました。なぜなら、ロシアが、ポロシェンコの再選を防ぐために、最大限の努力を行うことは目に見えているからです。ポロシェンコの再選を防ぐためなら、ロシアは、どんな手段でも使ってきます。

トルコ発の船舶がクリミアへ違法に寄港している問題については提起しましたか。

ええ、提起しました。船舶リストを渡しました。昨年、私たちが検事総長とともにトルコを訪問した際にも、この問題は提起されました。私も個人的にエルドアン大統領と話し、クリミアに違法寄港する船舶リストを渡したこともあります。その後、トルコでは、クリミアに寄港する船舶はトルコの港を利用できないようにする決定が採択されました。しかしながら、実際には、この決定は回避されており、船舶はトルコの旗を掲げず、文書を偽造し、ロシアのノヴォロシーシクへ向かっているかのように見せかけ、レーダーを切ってクリミアへ向かっています。しかし、これを摘発するのは非常に簡単なことです。私たちは、衛星を使って、船舶の位置をモニターできますから。例えば、「チタン」工場へ物品を供給する船舶も追跡できます。今後は、これらの船舶がトルコ国内法に違反しているかどうかを調べるべきです。

ロシアにとって、ウクライナ正教会の独立はクリミア脱占領化に匹敵

新年早々、トルコでは、トモス(正教会の公布文書)の授受という非常に重要な出来事があります(編集注:新設の統一されたウクライナ正教会に対し、独立に関するトモスをコンスタンティノープル総主教庁が授与する予定となっている)。一方、ロシアは、これを妨害すべく、ありとあらゆる手段を用いており、トルコにも圧力をかけました。ジェミレフ氏は、イスタンブルのトモス授受の際に出席しますか。

私が思うに、この出来事は、ロシアに対する現時点での最も強力なダメージでしょう。その強烈さは、クリミアの脱占領化に匹敵するものです。トルコ外務省での会談の際、私たちは繰り返し、独立した教会を創設すること、トモスを受け取ることが、どれほど重要かということを強調してきました。私たちが、ポロシェンコ大統領とともにヴァルソロメオス1世コンスタンティノープル全地総主教と一番直近に会談したことのことを覚えています(編集注:2018年11月3、4日)。ポロシェンコ大統領は、代表団全員を一人一人総主教に紹介しました。私の番が来たとき、ヴァルソロメオス総主教は私に、トルコ語を理解するかと、トルコ語でたずねました。そして、別れの際、私は彼に向かって、「私はキリスト教徒ではなく、イスラム教徒です。しかし、総主教の賢明かつ勇敢な行為であるウクライナ教会への独立付与は、民族や信仰に関係なく、ウクライナ国民全体にとって価値のあることなのです」と伝えました。そして、私は、「アッラーがあなたに長寿を授けますように」と言いました。すると、ヴァルソロメオス総主教は、心を打たれたような面持ちをされ、「あなたにもアッラーが長寿を授けますように。アッラーがあなた方をもうすぐふるさとに帰してくださいますように」と返事されたのです。私たち(クリミア・タタール人)にとっても重要な出来事だということを示すために、私たちは、この1月、必ずトモスの授受に出席しようと思っています。

テレビ局アルジャジーラが、昨年12月23日、「クリミア~ロシアの暗い秘密(Crimea: Russia's Dark Secret)」というドキュメンタリー特番映画を放映しました。この映画の監督は、以前BBCでプロデューサーをし、エミー賞を2回受賞したことのある、ジェイミー・ドランです。映画は、併合の際の出来事を時系列に映し出し、また、現在クリミア半島で何が起こっているかについても語られています。ジェミレフ氏、あなたは、この映画の中の重要な証言者の一人ですね。制作過程について話してくれますか。この映像は、どのような効果を持つのでしょうか。

確かに、私はこの映画製作に積極的に参加しました。撮影班がクリミアへ入域する計画を立てた際、彼らは私に、情勢説明を依頼し、誰に状況を聞くのが良いかたずね、その者たちの連絡先を求めたのです。私は、単に通りを歩く人たちに質問するだけでは、彼らは(ロシア占領政権の)反応を恐れるため、真実を語ることはないし、「生活は良く」、「感謝している」と答えるだけであると説明しました。映画には、種々の出来事を実際に目撃した人たちが出てきます。ドラン監督とそのチームは、非常に良い作品を作りました。

もちろん、ロシアの反応は、予想通り、否定的なものでした。他方で、私たちは、アルジャジーラの世界中の視聴者がこの映画を見られるということを、うれしく思っています。

私は、最近ドーハを訪れ、アルジャジーラの総裁と会いました。その際、この映画をアラビア語にも翻訳して欲しいと頼みました。なぜなら、私たちにとっては、アラブ世界がクリミア問題を知ることが、非常に重要だからです。彼らは、本件を検討すると約束してくれました。

クリミアでは、ソ連時代同様に、人々の世界観が変えられようとしてい

この映画では、クリミア・タタール人が複数名登場し、彼らは併合時のこと、クリミアに暮らすクリミア・タタール人やウクライナ人に対して行われている諸犯罪について、はっきりと述べています。彼らは、このような発言をするのを恐れなかったのですね。昨年12月23日、テロリストの罪を着せられ、拘禁刑を言い渡された4名のバフチサライ出身者を応援するためにかけつけた人たちも、恐れてはいませんでした。クリミア半島では、今何が起こっているのでしょうか。どのような傾向があり、どのような予想が立てられますか。

状況は、悪化の一途を辿っていますし、今後も悪化していくでしょう。これが私の予想です。占領政権がリベラル化するなどというのは、到底期待できません。現在、私たちが最も懸念しているのは、子どもを対象に行われている洗脳です。洗脳は、大きな影響があります。他方、ソ連時代、70年にわたり洗脳が行われていましたが、私たちは屈すことなく、機を得たとたんに洗脳から解放されたことも確かです。ソ連時代、政権は、人々の世界観を変えようとしました。そして、現在のクリミアで行われていることも同様のことです。しかし、私は思うのですが、占領はそれほど長くは続かないでしょう。私は、生きているうちにクリミアへ戻るつもりでいます。

オリハ・ブードニク、アンカラ

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