世界の3つの出来事:ドイツの立場、ハンガリーに反対する欧州議会、ヴォルカーの10回目のウクライナ訪問
欧州議会は、ハンガリーの欧州理事会での投票権を剥奪するプロセスを開始した。カート・ヴォルカー・アメリカ国務省ウクライナ問題担当特別代表は、1年3か月で10回目のウクライナ訪問を行った。
ドイツは、国際連合安全保障理事会の常任理事国ではないが、同国の軍事支出の多さは最近ドナルド・トランプ・アメリカ大統領の批判の的となっており、ドイツの役割は欧州安全保障を支える上で鍵となっている。2014年以降、ドイツは、対ロシア関係において、無条件の同盟国から真剣な批判者へと自らを変ぼうさせた。そして、ドイツは、ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設作業があるにもかかわらず、ロシアへの批判を止めていない。アンゲラ・メルケル・ドイツ首相は、リトアニアでの自国兵の前での演説で、まさにロシアが旧ソ連諸国の状況を不安定化させていると強調した。ハイコ・マース同国外相は、セルゲイ・ラヴロフ・ロシア外相との会談の前に、ウクライナとシリアの戦争が終了するか否かは何よりロシアにかかっていると強調した。
ナフトガス社総裁のアンドリー・コボレフは、ノルド・ストリーム2が開始すると、ウクライナの財政は30億ドル損失をこうむり、ロシアの直接軍事侵略の脅威が大きく増すと説明したことを思い出してほしい。しかも、ウクライナだけがこのガスパイプラインの被害にあうわけではない。これまでのガス輸送のルートを変えることは、欧州連合(EU)加盟国間、特に中央ヨーロッパでの対立を拡大するのである。
そのため、欧州議会が、ハンガリーに対して、欧州理事会での同国の投票権を剥奪する可能性のある制裁プロセスを開始する決定を下したのは、危険な傾向につながる可能性がある。ハンガリーの首相、ヴィクトル・オルバーンは、積極的にロシアと協力しているし、プーチンが彼との友情の手を離すことは考えにくい。(欧州議会の決定採択時)ハンガリーへの擁護に回ったのは、隣国からなるV4(ヴィシェグラード4)のポーランドとチェコだけであった。結果的に、EUの中の対立が深まることになり、中央ヨーロッパはロシアのハイブリッド侵略を前にさらに脆弱になってしまっている。
一方、モスクワでは、引き続きテレビでの呼びかけを続けている。シモニャンRT編集長が、ペトロフとボシロフをゲストに招く番組を放送した。クレムリンは、(英南部で毒殺未遂に遭ったロシアの元スパイ)スクリパリ親子に関して、西側が根拠を持って非難していることを無視して、国内のみに向けた番組を流した。ペトロフとボシロフのしていることは、残酷な敵に包囲されていると述べる住民達が暮らす宮殿で踊っているようなものである。
カート・ヴォルカー・アメリカ国務省ウクライナ問題担当特別代表の今回のウクライナ訪問は、彼の立場の変化の観点から興味深いものだった。同特別代表は、決定を採択する立場ではないが、彼のドンバス地方情勢に関する見方は昨年と比べて大きく変化している。ヴォルカー特別代表は、ドンバスの紛争の責任はロシア首脳陣にあると指摘しつつ、ロシアはウクライナの大統領選まで戦略を変えないだろうと強調した。そして、ウクライナの政治家に対しては、無責任に行動するべきではないと呼びかけている。
イェウヘン・マフダ国際政治研究所所長