国際選挙監視団:選挙報道監視報告 どのテレビ局が公平性の要件に反した選挙報道をしたか
欧州安全保障協力機構(OSCE)民主制度・人権事務所(ODIHR)やNATO、OSCE議員総会、欧州議会からなる国際選挙監視団が発表した7月21日のウクライナ最高会議選挙に関する暫定報告書に書かれている(編集注:メディアに関する報告は、13~15ページ)。
報告書には、「ODIHRの監視の結果、バランスある公平なキャンペーンと候補者に関する要件は、民間テレビ局により頻繁に違反されていた。…複数の記者、司会者は、特定の政党党首や政党メンバーにつき、著しい偏りを示し、特定の出演者を支援したり、偏った発言を行ったりしていた」と書かれている。
報告書によれば、112ウクライナ局(タラス・コザーク氏所有)とプリャミー局(ポロシェンコ元大統領系)は、報道量、報道のトーンにおいて、それぞれ、野党プラットフォーム・生活のため党(メドヴェチューク氏参加)と欧州連帯党(ポロシェンコ党首)に有利な報道をしていたとのこと(編集注:コザーク氏はメドヴェチューク氏のパートナーとして知られる人物)。
また、1+1局(コロモイシキー氏所有)については、同局は人民奉仕者党(ゼレンシキー大統領系)について大々的かつ肯定的に報じ、同時に、欧州連帯党に関しては否定的な報道をしていたと書かれている。
ICTV局(ピンチューク氏所有)については、選挙報道の25%がウクライナ戦略党(フロイスマン党首)、23%が祖国党(ティモシェンコ党首)、22%が人民奉仕者党、15%が欧州連帯党、14%が声党(ヴァカルチューク党首)に関するもので、概ね中立的なトーンで報じられていたと指摘されている。
また、トークショーや討論番組に関しては、民間テレビ局は主要7党の代表者に焦点を当てていたが、公共テレビ局はより規模の小さい政党も番組に招待していたと指摘されている。同時に、公共放送局に関しては、同局への予算が法律の定める額だけ拠出されていないこと、同局の番組の質の高さにもかかわらず視聴率が低く、極度に分極化している民間テレビ局を代替するには至っていないことが指摘されている。
ODIHRの監視員は、選挙宣伝の内容の分析結果も発表している。同結果によれば、選挙運動期間中、9つの政党が有料広告を積極的に使っていたとし、その際に、大量の「お金を払って作られたニュース」が大半の民間テレビ局のいわゆるゴールデンタイムに流されていたのが確認されたとのこと。報告書では、本件は違法行為であり、有権者をだますもので、客観的な情報提供ではない行為だと強調されている。
報告書には、「選挙法に反する形で、発表元不明の宣伝が大半のテレビ局のゴールデンタイムのニュースの中に見られた。それらは主に、『野党プラットフォーム・生活のため党』、『欧州連帯党』、『急進党』、『野党ブロック党』に有利な内容であることが観察された」と強調されている。また、国際選挙監視員たちは、地方報道機関の代表者たちから、報道の中に「お金を払って政治的に有利な内容の報道」を行う慣習が幅広く存在し、とりわけ選挙運動期間中にそれが顕著であると伝えられたと報告した。
なお、この国際選挙監視団は、OSCE・ODIHR、OSCE議員総会、NATO議員総会、欧州議会による共同監視団であり、監視団には45か国、811名が参加。そのうち、719名がODIHR(長期監視員+短期監視員)から、60名がOSCE議員総会から、17名がNATO議員総会から、15名が欧州議員から参加している。