オレフ・ロマノウ・ウクライナ陸軍第3軍団無人システム連隊副指揮官
どんな国であれ、軍需産業に38%の予算を注ぎ込んでから、その後に交渉の席に着くことはしない
06.06.2025 16:09

2025年3月アンドリー・ビレツィキー大佐は伝説的な第3独立強襲旅団が第3軍団に改編されると発表した。その軍団の中では、無人機戦力が独立連隊となる。この編成がロシア占領軍に対する抑止や反転攻勢においてどのような利点をもたらすのだろうか。また、ロシアの情報心理作戦をどのように打ち破るのか、無人機連隊にふさわしい求人とはどのようなものか。ウクルインフォルムは、これらの質問について、第3軍団無人システム連隊の副指揮官であるオレフ・ロマノウ氏(コードネーム「ロマハ」)に尋ねた。

聞き手:アンナ・コスチュチェンコ

写真:ウクルインフォルム


私たちには敵後方を120キロメートルまで攻撃する能力が生じる

第3軍団体制内に無人システム連隊を創設するというのは2025年3月に発表されました。この防衛戦力は、軍団システムの中にどのように組み込まれるのですか? それは新しい部隊なのでしょうか、それとも既存部隊の再編なのでしょうか?

無人システム連隊は、防空ミサイル連隊や、工兵支援連隊や他の軍団編成部隊と同様、第3軍団に組み込まれています。これは、前線の様々な地点で私たちの能力を高める、あるいは、現在の私たちの前線で生じているように、敵の圧力が非常に強い場合に、戦闘衝突ラインを安定化させるためです。

どうして、その「連隊」アプローチの導入なのですか? それでどうなるのでしょうか。計画が良くなるのか、それとも対応が良くなるのですか?

新体制によって、100〜150キロメートルの戦線区間全体を1人の指揮官が担当することになります。これは、以前は作戦戦術群の司令部が担っていましたが、今後は軍団の司令部が担っていくことになります。作戦戦術群司令部は、兵士たちの士気・心理状態や、現実の戦術的状況を十分に把握していないことが多々ありました。これで、私たちが、第3独立強襲旅団だけでなく、隣に配置されている他旅団の責任も負うことになるわけです。私たちが、ビレツィキー軍団指揮官のパルティザン部隊時代から現在の第3独立強襲旅団時代までの何年間の間培ってきた現実の実践的経験を拡大適用していきます。そして次は軍団となる、つまり、自分たちの軍となります。当然、ウクライナに奉仕する軍です。

つまり、意思決定がより迅速かつ効果的に現場で行われるという理解で良いですか?

そうです。それから、より明確な責任の認定で、いわゆる「責任のなすりつけ」がなくなります。

同連隊に入る無人機の種類はどのようなものですか? FPV無人機だけなのか、それとも偵察用、(砲撃)修正用、自爆型、通信中継用もですか?

それら全て、私たちは保有しています。マルチローター型のマヴィックやAutel、作戦レベルの偵察機、例えばSharkやFlyEyeです。攻撃型無人機は、すでに達成済み課題であり、60〜120キロメートルの作戦深度に到達です。つまり、軍団には、独自の深部(後衛)攻撃能力を持つ必要があります。なぜなら、これまでは、私たちは、敵軍(どの軍かは言いませんが、しかし、彼らがどこにいるかは把握していました)の指揮所の位置を知っていても、自分で彼らの指揮所を攻撃する決定を下すことができなかったのです。今後は、私たちにはその能力が生じます。

そのためには、どんな資金拠出が必要ですか? あなた方の無人システム連隊には、ウクライナの開発者が関与する予定ですか?

私たちは、ウクライナの開発品だけを導入したいと思っています。もし普通のFPV無人機のウクライナの開発者が全て自分の部品だけで作れるようになるなら、それはリスクの分散のようなものです。そして、すでに多くの国産製造社が自社製のフライトコントローラーも、VTX(映像送信モジュール)も、もしかしたらカメラさえも、製造できるようになっていることを知っています。

私たちは、中国製の部品から脱却して、自分たちの、つまり西側世界、ウクライナや同盟国による部品を作らなければなりません。そうなると、もしかしたら15%割高になり、場合によっては45%高くなるかもしれませんが、しかし、状況の虜にならないためには、それはやるべきです。なぜなら、もし明日中国がウクライナ人だけでなく、私たちに部品を提供している子会社にさえ供給を停止する断固とした決定を下した場合、私たちは非常に厳しい状況に置かれてしまうからです。現在、衝突ラインが維持されているのは、私たちにFPV無人機やマヴィックのような偵察無人機があるからに他ありません。

無人システム連隊を編成するのには、いくらかかるでしょうか? 私は確実な数字は知りませんが、私の理解では、それは15億〜35億フリヴニャです。そして、国家はこの資金を見つけ出さねばなりません。なぜなら、これは非常に極めて重要な課題だからです。無人システム連隊と、今話されている無人機ラインを作るか、あるいは、残念ながら、実質的に遺族への補償金としてその金を使わざるを得なくなるかです。しかしながら、無人機ラインについては、私は第3独立強襲旅団の事例でしっかり話すことができます。それは複数の行動の複合体です。それは、航空機だけでなく、外国製のロボット化システムもあります。それは今も複数の任務をこなしていますが、それについては今は黙っておいた方が良いでしょう。つまり、私たちが観察しており、備えている東からの猛攻を止めることができるのは、高度技術です。というのも、軍需産業に38%の予算を注ぎ込んでから、その後に交渉の席に着くような国は世界に存在しないのですから。

私たちの強みは、技術力

2014年には、あなたは「アゾフ」連隊の志願兵だったとのことですが、(編集注:2014年に始まった)ロシア・ウクライナ戦争の初期の無人システムの利用状況について覚えていますか?

私は2016年まで「アゾフ」連隊で志願兵として勤務しましたが、当時無人機を使用していたのは主にロシア側でした。彼らが使っていたのは「オルラン」タイプの内燃機関付き無人機でした。その後、私が退役した後、統一部隊の戦闘行動を観察している中で、マルチローターの「マヴィック」型の無人機が使用され始め、さらにFPV無人機の最初の導入も始まりました。当初のFPV無人機は通信中継なしで、三脚やマストを使い、試験飛行でおよそ800メートル程度飛ぶのが限界でした。

2023年を通じて、保安庁(SBU)や情報総局(HUR)の一部部隊がFPV無人機を使っていたのを見た時は、最長で5キロメートル飛行できるようになっていました。その後は、開発者と前線の軍人たちの協力によって、飛行距離は15~20キロまで徐々に伸びていきました。そして現在では、42キロ、追い風があれば最大50キロすら飛行できるます。ただし、残念ながら、敵も同様に開発を進めています。

あなた個人が、「無人システムこそが戦争の技術的突破口で、この先に未来がある」と確信したのはいつですか?

それはちょうど第3独立強襲旅団を編成していた時のことです。私たちの旅団は訓練上にいて、夏季訓練を行っていました。私たちは対戦車部隊として対戦車ミサイル「ジャベリン」を3回しか使用しませんでした。しかし、敵の車両の音はずっと聞こえていましたが、それでも目標を視認して、発射することはできませんでした。そのため、私たちは解決策を模索していたのですが、キーウのある会合で、SBUがマルチローター型無人機に対戦車手榴弾を取り付けて、ライブ映像付きで5キロメートル飛行させるという映像を見ました。それを見て「これだ!」と感じました。

私はそのアイデアを会議に持ち込み(当時私たちはウクライナ西部にいました)、私たちはそれを導入すると述べました。最初は懐疑的に受け止められました。当時は「マヴィック」のようなクアッドコプターでの投下しか有効とされていなかったからで、それだけを発展させるべきだと思われていたからです。人々はFPVには関心がありませんでした。しかし、その後、バフムートで戦闘任務を遂行した時、私たちの側にはボタ山があり、そこから衝突ラインに近距離でFPVによる戦闘飛行をテストすることができました。そして、私たちはミーアキャットのように、マストを持って少しずつ塹壕線から出て、直視できる場所に立って、距離のあるところから様々な塹壕を攻撃し始めました。これが成果を上げたのです。

私たちはこの方向で前進できることを理解しました。その後、電波地平線のギャップを避けるために、通信中継のアイデアも生まれました。そしてアンドリーウカ解放の際には、すでに敵の補給路で私たちに有利な条件を受け入れさせることもできました。(執筆者注:2023年9月14日、ウクライナ防衛戦力は数か月にわたる戦闘の末、バフムート南のアンドリーウカ村を解放していた)。

無人システムについて話す場合、現在、戦場でウクライナの優位な点は何ですか? また、例えば、光ファイバーについては、敵は私たちにどのような課題をもたらしていますか?

私たちの優位性は、正に高い技術力と私たちの科学者たちです。というのも、私たちは課題への対応が非常に速いからです。手段について言えば、ええ、彼ら(ロシア軍)は確かに光ファイバーで優位な能力を持っていますが、しかし、私たちはヘキサコプター、またはいわゆるボンベル(爆弾投下型)と呼ばれている無人機において、顕著に有意な能力を持っています。この点では、私たちはまだ先行していますし、120ミリまたは155ミリ口径の砲弾を搭載し、高精度な攻撃に使用することができます。こうして、私たちは着弾観測なしで、砲弾を正確に狙った場所に送り込んでいます。それだと無駄がないのです。私は砲兵ではありませんが、自走砲が射撃目標に当てるために10発の砲弾を消費したり、過度な使用によって砲身が摩耗したりしているのを時折見かけます。そのため、高価なヘキサコプターのような物を危険にさらす価値は時としてあるわけです。

3000万人の国が1億5000万人の国と戦う時は、技術力に賭けるべき

あなたのイニシアチブで、2023年に第3強襲旅団を基盤とするFPV無人機操縦者訓練センター「キルハウス」が開設されました。その新しい連隊との関連で、「キルハウス」の負担は変わりますか?

ええ、「キルハウス」の教官には最大級の負担がかかることになるでしょう。しかし、リスクを分散させるために、私たちは連隊が編成されている様々な訓練場に教官を派遣しました。何よりも、敵が私たちの「キルハウス」を攻撃する必要をなくすためです。『キルハウス』は、軍隊に加わりたい民間人のための教育イニシアティブ・プログラムであり、成果を出しています。しかし、「キルハウス」は1つではなく、すでに多くの学校があります。現在、これら全てが「キルハウス・アカデミー」へと変貌しました。この「アカデミー」には、戦術医療のコースや、若年兵訓練コースであるいわゆる「ブートキャンプ」、無人ロボット複合体のスクール、FPVのスクールがあり、将来的に攻撃型無人機のスクールも作る計画です。

ロシア軍も最近、独自の無人システム連隊や同様の組織を創設していると発表しました。これによって、前線の対立がどのように変わる可能性がありますか? あるいは、これらの敵の連隊はすでに存在していますか?

彼らが創設しているわけではなく、すでに創設済みです。各軍集団、私が今言っているのはロシアの「西」「中央」などの集団についてですが、彼らは無人システムの連隊または大規模な旅団を持っており、ウクライナ人と同じように、圧力を強化したり、戦闘衝突ラインにおける状況を安定させたりするために、無人機を使用しています。私たちはスジャで、多くの部隊が光ファイバー接続のデジタル無人機を使用するために投入されたのを目にしました。彼らはそれにより、すぐに3、4機のFPV無人機で待ち伏せを行い、ウクライナ軍の兵站を完全に寸断していました。これはポクロウシク方面や、私たちの方面(執筆者注:ハルキウ方面)でも見られました。同様に、現在では圧力が非常に強まっており、私たちが偵察用無人機を撃墜するだけでなく、敵も私たちの「マリ」やポーランドの「フライアイ」を撃墜し始めています。

ロシアの情報心理作戦は、ウクライナでの動員を妨害する上でかなり効果を生みました。特に、地域採用センターの悪い評判を広める点においてです。そう思いませんか? 現在、あなたの部隊では、兵員補充がどのように行われていますか?

TikTokもまた、敵が私たちの採用センターを評判を落とすための手段になっています。多くの「バスへの詰め込み」に関する捏造情報や、多くの演出された動画が作成され、拡散されました。これらはすべて、有名なミーム「5月15日に勝利」を思い出させます。覚えていますか? 残念ながら、ロシアの情報心理作戦に対抗するためには、ウクライナ人もTikTokの使い方を学ぶ必要があります。しかし、ロシアの情報心理作戦は、「RT」から始まり、ルーマニアや、マリー・ルペンのいるフランスの選挙にて、影響を行使しようとする試みに至るまで、種々行動の総合的な結果です。私たちは、国内で陰謀を紡ぐことのできる、私たちよりも強力な敵に直面しています。そして、もし今停戦が結ばれ、私たちの国に潜んで指示を待っているロビイストたちにロシアから資金が流れ込んだら、ひどいシナリオが生じる可能性があると私は感じています。現在、全面戦争は4年目に入り、多くの人々が敵対協力の罪で罰せられるべきでしたが、いわゆる「第五列」は残っており、そのような人々は自由に国境を越えることができています。良いニュースは、スペインでのポルトノフの排除と、敵対協力者たちに対する一部の逮捕でしょう。

「18〜24歳契約」のことはどのように評価しますか?(編集注:18〜24歳の入隊志願者を増やすための優待条件での契約プログラムのこと)

私は常に、若い人々に家を建てるためなどのお金を稼げる機会があるべきだと考えています。例えば、2014年のことを思い出すと、私たちは入隊した時、給料が支払われることを知りませんでした。そして、4000フリヴニャの給料が出ると知った時、私たちはとても喜びました。ですから、18〜24歳だけでなく、より多くの人々にそのような給料が支払われることに、私は全く反対していません。なぜなら、現在私たちは無人システム連隊に技術導入のための革新的な中隊を創設したいと考えており、そこには現在民間の生活で5000〜1万ドルを稼いでいる人々を迎え入れたいからです。なぜなら、この革新技術中隊は戦闘部隊内の後方部隊であるため、彼らに提案できる給与は最大で1300ドルになっています。

無人システム連隊の潜在的な候補者にはどのような基準が適用されますか?

第一に、モチベーションと率先力です。そして、一般的なことでは、その人がおそらく人生の今後2〜3年間をこの職務に捧げる準備ができており、敵の早期発見と排除によって、前線に立つ歩兵のための適度な安全が確保されるべきだと理解していることです。私たちは、衝突ラインに統合された火力支援を提供します。私たちは、前線を安定的に維持し、長期的で持続可能な防御行動や襲撃行動を可能にする、軍団の要素の1つなのです。

今後の無人システム連隊の発展をどのように見ていますか?

人口3000万人の国が1億5000万人の国と戦う時、私たちは骨で骨を争うことはできません。私たちは全てを技術力、策略、様々な機動に賭ける必要があります。そして、私たちの軍事産業を発展させ、正確に計算し、次の四半期、1年ないし5年の間、何に頼ることができるかを把握する必要があります。

つまり、革新性に賭けるということですね?

ええ、そうです。

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