報道:ウクライナ最高会議議員所有のモトール・シーチ社、ロシアに軍事関連部品を供給か

報道:ウクライナ最高会議議員所有のモトール・シーチ社、ロシアに軍事関連部品を供給か

ウクルインフォルム
航空機のエンジン等を製造する「モトール・シーチ」社は、ロシア連邦への軍事技術品の輸出が禁止されているにも関わらず、ロシア軍にエンジン用部品を供給し続けていた疑いが報じられた。

9日、「Bihus.info」が調査報道の結果を報じた

報道では、「モトール・シーチ社は、旧ソ連諸国の中でも主要な航空関連企業の一つ。2014年までは、同社の主要な市場はロシア連邦、特にロシア防衛産業であった。モトール・シーチ社の名誉総裁は、ヴャチェスラウ・ボフスライェウ氏。同氏は、ウクライナの英雄の称号を有し、長年最高会議議員として活動し、国家安全保障・国防委員会の委員でもある。これまでロシア率いる関税同盟へのウクライナの加盟を積極的に支持したり、ロシア連邦との接近に賛成してきた人物である」と伝えられた。

モトール・シーチ社のモスクワ代表部のペトロ・コノネンコ代表とボフスライェウ名誉総裁は、ロシアにボリスフェン社、ロシヌイ・オストロフ社、TsIAM社、アヴィアレモント・モトール・シーチ社、VKMS社、VK-VS社を所有している。

報道には、「ボフスライェウ氏のロシアの企業は、ロシアの軍事侵略とクリミア占領が始まって以降も、操業を続けている。とりわけ、ボリスフェン社はロシア連邦保安庁(FSB)のためにサービスを提供。2015年から2017年にかけて、ロシア国家調達ポータルの情報によれば、同社はAI-9Bタイプの航空エンジンの作業期間を延長することで、350万ドルを受け取っている。また、ボリスフェン社は、クリミアの企業『ウニヴェルサル・アヴィア』社のためにエンジンを供給している」と書かれている。

さらに、「ウニヴェルサル・アヴィア社は、クリミアの航空輸送と航空サービスを行う国営企業。クリミア半島占領後、同社はロシアにより『国営化』されている。他方で、EU、米国、ウクライナは、同社に制裁を科している。しかし、ボフスライェウ氏がロシアに所有するボリスフェン社は、ウニヴェル・アヴィア社とのビジネスを続けており、ロシア国家調達ポータルの情報では、2015年以降、ボリスフェン社は同社から500万ルーブル受け取っている」と報じられた。

さらに、Bihus.infoは、同社は「レトヌイ・オトリャド・ロシア」社からも複数の発注を受けたと指摘。同社は、ロシアの国営企業であり、ロシア連邦軍や同国特殊機関の幹部にサービスを提供している他、ウラジーミル・プーチン露大統領の移動も担っているという。

報道では、2014年には、ペトロ・ポロシェンコ大統領(当時)が、ロシア連邦への軍事関連品及び軍民両用技術の「デュアルユース」品の輸出を禁止する決定に署名したにも関わらず、もう一つのボフスライェウ氏の企業VKVS社が、2015年から2016年にかけて、モトール・シーチ社製造のエンジンTV3-117の部品をロシアの第218航空修理工場に供給していたと伝えられた。

同時に、モトール・シーチ社関係者やボフスライェウ氏本人は、ウクライナ製部品は確かにロシアに輸出されているが、民間機エンジンのためのみに供給されているのだと繰り返し述べていた。

これに対して、Bihus.infoは、「しかし、2016年にロシア国家調達サイトに公開された部品供給契約の一つには、ウクライナ製部品が第218航空修理工場への供給はロシア連邦国防省の軍事代表部が受け取ったことが記されている。GOSTの契約書には、軍事技術品のみの受け取り手続きが記されている。つまり、ロシア側は、ウクライナの部品を民間機用の製品としてではなく、軍事ヘリ用部品として受け取ったということである」と強調した。

モトール・シーチからロシア連邦へのエンジン部品の直接供給は、2018年に突如止まり、同社はロシアへは芝刈り機、牛乳用の分離機、発電所用機材しか売却しなくなったという。

しかし、Bihus.infoは、モトール・シーチ社はロシア軍のために引き続きエンジン部品を供給し続けていた可能性が大きいとし、2018年以降は、直接供給ではなく、ボスニア・ヘルツェゴビナの仲介業者を通じて供給を始めたようだと指摘した。

報道では、「2018年以降、モトール・シーチ社は、ボスニア・ヘルツェゴビナの新設の企業D.O.O Inzeniring BN社へ大規模にエンジン部品を供給し始めている。2018年、モトール・シーチ社は、TV3-117タイプのエンジン部品を積んだ600以上の積載物を同国に発送している。国際関税データベースImportgeniusによれば、ボスニアのこの企業は、その後同様の部品をヘリのためにロシアへと発送している。その際のロシア国内の送り先は、ボフスライェウ氏が所有するVKMS社とVK-MS社となっている」と指摘されている。

また、ボスニアの同企業のサヴォ・ツヴィイェンチノヴィッチ総裁は、独立社会主義者連合党のメンバー。同党は、分析者・政治学者がロシアのバルカン半島への影響力行使の道具とみなしている政党である。Bihus.infoが同総裁に電話をかけた際、同総裁は、ボスニアの同企業はボフスライェウ氏の2企業との間で普通の仲介業務をしていることを認めており、ウクライナの部品をボスニアを通じてロシアに輸送することは、ボフスライェウ氏本人が依頼したとコメントしたとのこと。しかし、ツヴィイェンチノヴィッチ総裁は、同企業の所有者が誰かは述べなかった。

他方で、ボスニアのデータベースによれば、このボスニアの仲介企業を有しているのは、二人のロシア国民であり、この二人はボフスライェウ氏のロシア国内の企業のマネージャーであるとのこと。1人目は、ヴァレリー・アフトゥシェンコ氏。同氏は、ロシア連邦の軍事輸送航空本部の元副長官であり、現在、ボフスライェウ氏の「アヴィアレモント・モトール・シーチ社(ロシア)」の総裁として勤務している人物。2人目は、ロシア連邦軍事輸送航空の元指揮官で、現在、ボフスライェウ氏のロシアの企業、ロシア軍に部品を供給しているVKMS社で勤務している人物であるとのこと。

2018年以降、ロシアの航空工場は、調達文書において、TV3-117エンジンの部品供給の公共調達における落札者を秘匿としている。しかし、供給の契約書の中には、以前ウクライナの企業が直接ロシアに供給していたが、2018年以降はボスニアに供給し始めた部品が含まれている。部品名が一致するだけでなく、予備部品の文書も一致するとのこと。

報道にはさらに、ウクライナのエンジン部品や発電機器は、別の仲介企業、アラブ首長国連邦の企業Double Power FZEを通じてもロシアに供給されている、と指摘されている。

Bihus.infoはまた、本件に加えて、ボフスライェウ氏の企業が、非政府コントロール地域(編集注:クリミアやドンバスの被占領地域)でも操業されていると指摘した。ドネツィク州のスニジュネ機械建設工場は、2014年までモトール・シーチ社に属していたが、同年、スニジュネは武装集団に占領されている。その後、マスメディアは、同工場がどうなったか色々なうわさを報じており、中には、この戦略的工場がロシア連邦に秘密に移されたというものもあった。2014年、サウル・モヒーラにおける激しい戦闘の後、ソーシャル・メディア「フコタンクチェ」では、当時の「DPR」の広報役だったストリェルコフ(イーゴル・ギルキン)が、同工場にて、武装集団の軍事機器の修理拠点が設置されたと発言している。

また、2016年、ウクライナ保安庁(SBU)は、モトール・シーチの工場の関係者複数に関して、テロへの資金供与嫌疑に関する捜査を開始している。SBUの最新情報として、2015年1月から9月にかけて、ボフスライェウ氏の企業がテロリストたちに対して、3200万ルーブル支払ったことが報じられている。

2015年以降も同工場のコントロールをモトール・シーチ社が失っていないことは、工場の発表で間接的に確認できるという。モトール・シーチ関係者は、2017年末になってはじめて、同工場のコントロールを失ったと発表している。報道では、「しかし、それはモトール・シーチ社のサイトでの発表である。一方で、ボフスライェウ氏は、2017年に記者に対して、同工場は今でも自分たちのものであり、運営権を外国企業に譲渡しただけだと述べている。同工場は看板が付け替えられており、看板に書かれていることから判断するに、同工場の新しい運営者は『アヴィアテフ』社。自称DPRのサイト内で見つかった文書には、同社を管理するのは『DF OOOアヴィアテフ』社。ただし、看板が変更されても、同工場内部には、ウクライナの『モトール・シーチ』のスタンドがかけられ続けている」と伝えられた。

報道には、「DF OOOアヴィアテフ」社は、ロシアの「アヴィアテフ」社の参加企業であると指摘されている。露アヴィアテフ社は、ロシアのロストフ市に登録されており、同社の所有者は、ボフスライェウ氏のロシア側パートナーとなる人物。とりわけ、その一人は、ロシア連邦国防省で装備部門の元幹部であり、現在ボフスライェウ氏のVKMS社の監査委員会委員を務める、アナトリー・シトノフ氏。もう一人は、ロシア軍事輸送航空の元指揮官、中将であり、VKMS社総裁のヴィクトル・デニソフ氏。

Bihus.infoはまた、現在、ボフスライェウ氏は、ザポリッジャ市の第77小選挙区で無所属で出馬していると伝えた。


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