【MH17撃墜裁判】検察、2014年夏のロシア領からウクライナ領への越境砲撃につき説明

【MH17撃墜裁判】検察、2014年夏のロシア領からウクライナ領への越境砲撃につき説明

ウクルインフォルム
17日、オランダのスキポール裁判コンプレクスで続けられている2014年のウクライナ東部にて撃墜されたマレーシア航空MH17便撃墜事件の審理にて、原告の検察側から、2014年夏のロシア領からウクライナ領国境隣接地域への火砲による砲撃について説明があった。

ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

同日の審理の際には、原告側から通信傍受された被告人のセルゲイ・ドゥビンスキー氏とオレグ・プラートフ氏両名による2014年7月17日9時31分の会話が提示された。会話記録では、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)大佐であり、当時武装集団「DPR」の「軍参謀本部情報総局」(GRU)局長を名乗っていたドゥビンスキー被告が、露GRU中佐であるプラートフ被告に対して、ハルチェンコ被告(コードネーム「モグラ(Крот)」)のもとに地対空ミサイル・システム「ブークM」が到着するから、それをペルヴォマイシク地区へ運ばなければならないと発言しているやりとりが確認された。

さらに同会話では、プラートフ被告がドゥビンスキー被告に対して、ロシア領からウクライナ領ドネツィク州フリホリウカ村近くで、ウクライナ・ロシア間国境から近い地点に集結しているウクライナ軍への砲撃を行うよう要請している。

ヴァルド・フェルディナンドッセ・オランダ検察官は、「プラートフ氏は当時『東の隣人はフリホリウカ近くのウクライナ軍に地獄を見せられるか』と質問していた。なお、フリホリウカとは、ウクライナ・ロシア間国境近くのステパニウカの奥の村だ。その他の複数の傍受通話記録にも、『DPR』がロシア領からの砲撃による支援を要請するやりとりが含まれている」と発言した。

フェルディナンドッセ検察官は、7月16日時点の紛争状態を示す視覚プレゼンテーションを提示しつつ、当時ウクライナ側がドネツィク州フリホリウカからマリニウカ方面へと進み、ロシアとの国境のすぐ近くまで来ていたことを説明した。

同検察官は、「多くの捜査情報が、『DPR』がロシア連邦領側からの火砲砲撃という戦闘上の支援を受け取っていたことを示している」と述べつつ、ただしロシアはそのこと(越境砲撃)を否定していると補足した。

審理中、マリニウカ近くのウクライナ軍配置地点に対してロシア領からの火砲砲撃が行われたとする、当時のウクライナ保安庁(SBU)の発表と英BBCの報道が紹介された。

さらに、原告側は、国際調査報道グループ「ベリングキャット」による、ロシア領からウクライナ領への国境をまたぐ越境砲撃に関する調査報告も提示した。ベリングキャットの専門家たちは、同調査にて、少なくとも砲弾の着弾した136地点と、133のロシア領内の砲撃発射地点を特定している。検察側は、ベリングキャットの報告書に掲載されているロシアからウクライナへの越境砲撃を示す地図を提示した。

ベリングキャット報告書にあるロシア領からウクライナ領への砲撃地点を示す図
図:ベリングキャット報告書にあるロシア領からウクライナ領への越境砲撃(発射・方角・着弾)を示す地図

フェルディナンドゥッセ検察官は、オランダ軍情報保安局(MIVD)と英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)もまた、ロシア領からウクライナ領内の同越境砲撃を確認しているとし、「MIVDとRUSIもまた、7月中旬、ロシア領からウクライナ領内の対象に対して砲撃が行われたとの結論を出している」と報告した。

その上で検察側は、ロシア領からウクライナ領内の対象に対する砲撃に関する情報は本件(MH17撃墜事件)捜査情報の中に含まれているとしつつ、原告側は本件を、当時「DPR」とロシア政権の間に協議・対話があったことを示す通信傍受記録を評価する上で重要だとみなしていると指摘した。

なお、マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。

2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させていた。

同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。

2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。

なお、2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名を公表しており、オレグ・プラートフ氏(露国籍)はその内の1人。JITは、プラートフ氏につき、地対空ミサイル・システム「ブーク」の移送に関与し、航空機の撃墜した地域の警備を担当した容疑を発表していた。

MH17の公判は、2020年3月に始まっている。


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