アンソニー・フーパー国際専門家市民会議議長
ウクライナが成功するためには、国家汚職対策局、検事総局、新しい裁判官が良く機能しなければならない。
22.02.2019 11:52

2018年6月7日、ウクライナ最高会議は、「高等反汚職裁判所」法を採択。同年8月2日には、高等裁判官任命委員会が、高等裁判所と同裁判所控訴院の裁判官の公募開始を発表した。

この新しい裁判所の設置において、高等裁判官任命委員会の作業を支援するために、国際専門家市民会議が設置された。この国際専門家市民会議の構成員の候補者は、ウクライナが汚職対策の分野で協力している5つの国際機関が推薦した。この会議のメンバーとなったのは、アウレリウス・フタウスカス(リトアニア)、フレミング・デンカー(デンマーク)、テッド・ザジェチニ(カナダ)、ミリャーナ・ラザロヴァ・トラコフスカ(マケドニア)、ローナ・ハリス(英国)、そして、アンソニー・フーパー(英国)である。

このフーパー氏が国際専門家市民会議の議長となった。フーパー議長は、20年以上にわたり、イングランドとウェールズで弁護士として働き、多くの刑事案件、とりわけ汚職に関係する案件で仕事をしてきた人物である。そして、約10年間、イングランドとウェールズの最高裁判所裁判官にも就いていた。民事と刑事を扱う控訴院裁判官も務めたことがある。フーパー氏は、国際レベルの刑事司法システムの改革について、諮問業務を行ったこともある。

今回、フーパー議長は、ウクライナで進む高等反汚職裁判所の公募やウクライナ一般について自らの考えを述べた。

(編集注:「国際専門家市民会議」は、ウクライナの司法関係者からなる「高等裁判官任命委員会」とともに、反汚職裁判所の裁判官の選考・任命プロセスに携わる、外国籍の司法専門家で構成される機関。同国際専門家市民会議は、同裁判所裁判官の任命プロセスにおいて、候補者の資格、公正さに疑義が生じた等の場合に、高等裁判官任命委員会に対して、任命の再検討を提供できる等、反汚職裁判所の公正性確保を目的とした一定の強制力を持つ強い権限が与えられている。なお、今回のインタビューは、高等裁判官任命委員会広報室が行ったものである。)

あなたが、過去数か月でウクライナで経験した冒険(私は「冒険」と呼ぼうと思います)について、どのような印象を抱いていますか。

長い間生きてきましたが、しかし、今のウクライナでの仕事ほどに興奮させられる仕事は、これまで一度もなかったように思います。私の知る限り、裁判官の任命支援のために、国際専門家グループを招待した国は、(ウクライナが)初めてだと思います。私は、このプロセスに関わっていることを大変うれしく思っています。

高等裁判官任命委員会と国際専門家市民会議の共同作業とその結果をどのように評価していますか。

私は、これまで何度も述べたように、共同作業は、非常に成功していると思います。私たち、国際専門家市民会議は、高等裁判官任命委員会委員と完全に協力できており、現在以上の協力、理解、支援を彼らから受け取ることできないでしょう。私は、委員長(編集注:セルヒー・コジャコウ高等裁判官任命委員会委員長)、副委員長、委員全員に大変感謝しています。

イギリスでは、控訴裁判所と破棄院の裁判官公募はどのように行われていますか。

もう一度言いたいのですが、裁判官公募において、現在ウクライナが行っているほどに透明なやり方は、世界のどの国でも聞いたことがありません。考えて欲しいのですが、私たちは、現在活動している裁判官に対して、彼らの資産、資産申告内容、支払っている税金ついて質問しているのです。そして、このやりとりは全てYoutubeで見られるようにしているのです。私は、このようなやり方はかなり稀だと思います。イギリスでも裁判官の公募は行われますが、しかし、決定は、プライベート・ミーティングの非公開手続きで採択され、それをYoutubeで見ることはできません。ですから、私は、このやり方につきウクライナを称えているのです。

ウクライナの裁判システムへの信頼が向上するには、何をすべきでしょうか。

それは非常に難しい質問です。しかしながら、私は、私たちが高等反汚職裁判所への公募にて行っている仕事が、裁判システムへの信頼のレベルを向上させられることを期待しています。しかし、常に重要なことは、公正さの基準を満たさず、専門性のレベルが不十分な裁判官はこの職に就かせないことを確実にすることです。汚職のレベルを下げるためには多くのことを行わなければなりません。同時に、最も重要な課題は、裁判システムが独立し、偏らず、腐敗しないことを確保することです。そのような日が来れば、裁判システムへの信頼レベルは高まるでしょう。私の知る限り、イギリスの裁判システムへの信頼は、70~75%程度です。

あなたは、2年間、国際専門家市民会議のメンバーとして働くことになっています。高等裁判官任命委員会との協力の後には何をするつもりですか。

私は、反汚職裁判所の裁判官のトレーニングに関与できたらと思っています。私は、世界銀行とともに、裁判官と検察官のためのコースを開発しました。コースの名前は、「汚職者を裁き、彼らの資産を差し押さえる」です。非常に実際的なコースであり、講義はほとんどなく、参加者は法と汚職の関係、法と犯罪の扱いの関係を理解するための実際的な活動を行います。私は、このコースを高等汚職裁判所の新しい裁判官たちに提供することを望んでいます。また、破棄院の裁判官もこのコースを受けることが重要です。私は、このコースを多くの国で提供しました。最後にこのコースを提供したのは、カザフスタンです。

ウクライナで驚いたことは何ですか。

最も驚いたのは、ウクライナの若者についてです。彼らには、多くの夢があり、いくらかの人は2014年に自らの命を捧げました。私は、ウクライナの若者の夢が現実になることを期待しています。もう一つの驚いたことは、普通のことですが、あなたたちが皆非常に早口だということです。

キーウ(キエフ)は、気に入りましたか。

私は、キーウは美しい町だと思います。私は、この美しい建物が維持されるために、あらゆることが行われることを期待しています。ソヴィエト時代の建物のいくらかがなくなったとしても、私は残念には思わないでしょうが、しかし、あなた方の19世紀の建築は、非常に美しいです。あなたたちの教会や修道院は、すばらしいです。

ウクライナの高等反汚職裁判所が完全な形で稼動し、社会にとって理想的な結果をもたらすためには、何が必要でしょうか。

何よりもまず、新たに任命される裁判官が汚職、汚職犯罪者捜査、裁判官倫理関連の法律の理解を支援すべきだと思います。私が理解する限り、審議を待つ多くの案件があり、私たちは、これらの案件が手続き上の遅延なく可能な限り早急に審議され始めることを期待しています。また3つの行われるべき重要な事があります。ウクライナには、非常に良い国家汚職対策局(NABU)があります。検察もですが、私は検察については知りません。そして、新しい裁判官が、しなければならないことをすることです。成功のためには、NABU、良い検察、良い裁判官が必要です。そして、審議は、すばやく行わなければなりません。ある共同会議の際、私たちは、約13年間審議が続いている案件について知りました。その案件の人物は、未だに判決を受けていないのです。逮捕のときから裁判審議までの時間は、1年以上経ってはならず、それよりはるかに短くあることが望ましいです。これは非常に野心的ですが、これがウクライナの人々に、汚職犯罪者が何年も裁判審議を待つことがあってはならないということを伝えられるのです。第2に、汚職資産は没収されなければなりません。汚職者が投獄されたとしても、その人物が釈放されたときに、自分の金が全て残っていたのであれば、正義が成し遂げられたとは言えません。全ての資産は凍結されねばならず、その後没収されなければなりません。裁判所がこれら全てを達成できれば、成功するでしょう。

高等裁判官任命委員会広報室

写真:ヘンナジー・ミンチェンコ、ウクルインフォルム

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