日本にもウクライナの「安全の保証」のために多くのことを行える余地ある=松田邦紀前大使
松田邦紀前駐ウクライナ日本国大使(2021〜2024年)は、ウクライナのための将来の「安全の保証」に関して、日本にもできることは多くあるとしつつ、その実現のためにウクライナや欧州同志国は日本の次期政権としっかり議論すべきだとの見方を示した。
キーウ滞在中の松田前大使がウクルインフォルムにコメントした。
松田氏は、ウクライナの「安全の保証」については「政治的・軍事的・経済的の3つの側面がある」と説明。そして同氏は、その中で、ウクライナ経済を強くし、結果としてウクライナの軍や軍事産業の強化をもたらす、経済的側面に関しては、日本として多くのことを行える余地があるとの見方を示した。
また同氏は、安全の保証の軍事的側面に関しても、「組織としての自衛隊を出せなくても、日本はかつて2014年から2021年まで(ウクライナ東部)ドンバス地方における停戦監視のために、停戦監視団に人員を送っていたので、これもできるはずだ」と指摘した(編集注:日本は過去、欧州安全保障協力機構(OSCE)ウクライナ特別監視団(SMM)の報告官職に人員を派遣していた)。
その上で同氏は、「セキュリティ・ギャランティー(安全の保証)に関して、日本はできることは沢山ある。そのためには、(日本は)今から議論にしっかり参加して、準備すべき。それこそが、新政権がしっかり取り組むべき問題だと思う」と主張した。
日本の次期自民党総裁/首相の選出に関する質問に対しては、松田氏は、誰が新首相になってもウクライナ支援は継続されるとの見方を示した。その際同氏は、「新しい首相が誰になっても支援は継続する。この点はウクライナの人は安心してもらって良いと思う」と強調した。
同時に松田氏は、「新政権は新しい状況に対応する必要がある」と述べた。同氏は、具体的に、最近の北京での中露北朝鮮の首脳が集まった行事開催、ロシアによるNATO加盟国であるポーランドへの無人機による挑発、北朝鮮の対露協力継続や中国によるロシアの無人機生産支援を挙げた上で、「ウクライナの戦争は、仮定の話として東アジアに影響を及ぼすのではなくて、もう東アジアの安全保障と完璧に一体化しており、それを踏まえて対応せざるを得ない」と指摘した。
その上で松田氏は、ウクライナや欧州の同志国は日本としっかりこれらの問題を議論すべきだと思うと述べた。
同氏は、ウクライナは対日外交を強化すべきだとした上で、「新しい駐日ウクライナ大使(編集注:ユーリ・ルトヴィノフ大使)を9月下旬までに日本に送るのであれば、その大使はしっかり準備して、日本政府に働きかけるべきだ」と述べた。さらに、10月22日に東京で予定されるウクライナ地雷対策国際会議に関しても、日本の新首相とウクライナ代表団(スヴィリデンコ首相が率いる可能性がある)が会談できれば、日宇二国間関係を深める好機となるとの見方を示した。
これに先立ち、日本の林官房長官は9月5日、前日マクロン仏大統領が言及したウクライナの将来の安全の保証に関与していく26か国に日本は入っておらず、自衛隊の部隊派遣については、日本政府は検討していないと発言していた。
また、ウクライナのゼレンシキー大統領は7月21日、ユーリ・ルトヴィノフ駐日ウクライナ大使をはじめ、複数の大使の任命を行っていた。