米戦争研究所、ザルジュニー宇軍総司令官の記事を分析 「戦争が膠着状態に入ったという主張ではない」

米国の戦争研究所(ISW)は4日、ザルジュニー宇軍総司令官が英エコノミスト誌に寄稿したロングエッセイ「現代の陣地戦とそれに勝つ方法」を分析した上で、ザルジュニー氏は陣地戦において機動を回復する方法について話しており、戦争が硬直状態に入ったと主張しているわけではないと説明した。

ISWの4日付報告書に書かれている

ISWの専門家は、ザルジュニー氏のエッセイ「現代の陣地戦とそれに勝つ方法」には、現在の「陣地戦」を克服するためにウクライナが実施しなければならない変化についての氏の考察が、短い論説やそれに付随するエコノミスト誌の記事よりも、より明確に概説されていると指摘した。

ISWの分析によれば、ザルジュニー氏は戦争が「徐々に陣地型に移行している」と指摘しているとし、陣地戦を克服するためにはウクライナは航空優勢を得て、地雷障壁を深く突破し、対砲兵戦の効果を高め、不可欠な予備役を作り、訓練し、電子戦の能力を高めなければならないと主張しているという。

またISWは、陣地戦は双方が自らの陣地の改善努力を恒常的に行っているにもかかわらず、迅速な変化が生じない軍事作戦を指すと指摘している。そして、ISWは、ザルジュニーはエッセイの中で、戦争が袋小路に入ったとは述べておらず、またウクライナが成功を達成できないとも予測していないと説明した。

そしてISWは、ザルジュニーのエッセイはむしろ、現在の陣地的特徴が生じたのは、戦場での技術・戦術面での拮抗とロシア軍とウクライナ軍の地雷障壁の広範な利用の結果だという説明に重点を置いていると指摘した。

さらにISWは、ザルジュニーは、ロシアからの挑戦に関連して、ロシアが多大な数の航空機を失っていることや、ウクライナが西側のミサイル・火砲を使っていること、ロシアが自らの動員兵力を政治面、運用面、士気の面から利用できていないことを含む、ウクライナの前に開かれている可能性を検討していると説明した。

その上で、ISWは、ザルジュニーが、ロシアは戦争を長引かせており、陣地戦はいくつかの分野でロシアが優位を達成するおそれがあるため、それはロシアにとって有利だと主張しているとしていると指摘した。

同時にISWは、ザルジュニーがウクライナあるいはロシアが有利な状況を利用して迅速に機動戦に回帰する可能性を主張しているとし、ウクライナにとっては、有利な状況とは、西側に提供されている軍事リソースも含むものだと指摘していると伝えた。

その上でISWは、「ザルジュニーのエッセイには、陣地戦においていかに機動を回復するかに終始した話であり、戦争が膠着状態に陥ったという主張ではない」と結論付けている。

これに先立ち、ウクライナのザルジュニー総司令官は、エコノミスト誌のインタビュー記事にて、ウクライナは自らよりはるかに強力な敵を止めることができたとしつつ、しかし、現在戦争は新たな段階に移行しているとの見方を示していた

また、ウクライナのゼレンシキー大統領は4日、前線の状況は膠着状態ではないと述べ、「私たちに諦める権利はない」と主張していた

写真:大統領府